2011年のIPニュース

2011年8月11日号CTM商標の真正な使用(Genuine use)についての考察

CTM商標に関しての1993年12月20日付規則EC40/94はその第15条でCTM商標の真正な使用について定めている。
当該条項によれば、商標所有者はCTM商標が登録された指定商品又は役務について、EU内でCTM商標を付して使用しなければならない。

この真正な使用についての基準が満たされた場合のみ、商標所有者は第9条で定められた保護を享けることができる。
EUは経済的重要度や規模の異なる27の加盟国で構成されているため、CTM商標の所有者からはしばしば、真正な使用の地理的範囲について疑問が提起されていた。

この問題について、欧州司法裁判所(European Court of Justice)は加盟国内の裁判所にとってのガイドラインとなる判例を下しているが、例として事件番号C-301/07 PAGO事件、又はOHIM決定BK R 1295/2007-4ロータス事件が挙げられる。

PAGO事件とは、果実飲料等を指定商品とするCTM商標権所有者であり、オーストリアにおいて商品を販売し同国で広く知られたオーストリア企業のPAGO社が、同社のものと類似し同社の商標を付したペットボトルを使用していたオーストリア企業を訴えた事件である。

PAGO社はEC規則第9条(1)(C)に定める商標の名声を正当な理由なく不当に利用したと主張し、オーストリア最高裁判所は欧州司法裁判所に暫定的な意見を求めて以下の質問を行った。

  1. 1つの加盟国のみで名声を有するCTM商標は9条(1)(c)の「名声を有する商標」としてEU全体で保護されるか
  2. 1.の回答が「No」である場合、1つの加盟国のみで名声を有するCTM商標は、当該加盟国において同条に基づく限定的な保護を享けられるか

欧州司法裁判所はまず該当CTM商標は登録された指定商品と非類似の指定商品又は役務についてもEC規則第9条(1)(c)の保護を享けられると明確にした上で、判決C-301/07(2009年10月06日)において下記のように裁定した。

CTM商標に関する1993年12月20日のEC理事会規則第40/94号で定められる保護を享けるためには、CTMは「共同体の領域の実質的部分」において、その指定商品・役務に関する公衆の大半により知られている必要があるが、本件で認定された事実に照らすと、問題となる加盟国の領域は「共同体領域の実質的部分」を構成すると考えられる。

更に裁判所は、名声を有するCTM商標に与えられる保護は、同一の指定商品等に使用されている場合と非類似の指定商品等に使用されている場合と同様に与えられなければならないと判断した。

このため、名声を有するCTM商標について、第9条(1)(C)がCTM登録商標の指定商品と類似する指定商品等についても適用されると理解される。
名声は商標の使用によってのみ獲得できるものであるため、"名声"及び領域に関する宣誓は全て"真正な使用"と領域についても有効である。

このエッセーが注目するのは、当該裁判所が、加盟国のうち1ヶ国のみで名声を有するCTM商標が第9条を満たすかという問題ついて、CTM商標の地理的使用範囲のアウトラインを与えた点である。

領域に関しては、CTM商標が「共同体領域の実質的部分」で名声を有する場合、名声に関する要件を満たす、と見なさなければならない(GM事件C-375/97、1999年、ECR I-5421第28段落)。

PAGO事件において、裁判所は加盟国、即ちオーストリア全域において名声を有するCTM商標について、当該加盟国領域は「共同体領域の実質的部分」とみなされるため、第9条(1)(C)の規定する領域に関する要件は満たされると裁定したことになる。

欧州共同体規則2868/95号によれば、使用の証拠は場所、時間、範囲と、先行商標の使用に係る。

場所

OHIMは欧州司法裁判所の、1つの加盟国における使用はCTM商標の正当な使用の証拠として十分であるとの判例に従っている。
この判例に従わなかった国内裁判所の決定が2例(ハンガリー及びベネルクス)あるが、これらは独自のものでガイドラインとなるものとはいえない。

時間

異議申立において、先行商標使用権者は後願商標の公告以前5年間の正当な使用に関する証拠を提出しなければならない。
登録商標の維持にあたり、EC規則第15条は登録商標の所有者が登録より5年以内に指定商品・役務について商標の使用を開始しなかった場合、又はこのような使用が5年間継続して中断されていた場合、CTM商標はEC規則が定める制裁の対象となる。

範囲

正当な使用は通常の取引に関するものであり、登録を維持する目的で調整されてはならない。当該使用の証拠は"書類"の項で列挙されるアイテムとともに提出されなければならない。

性質

即ち商品に糊付けされたラベル、パッケージへの印刷又は商品とは別につるされていたバッチ等、商標がどのような方法で商品に使用されていたかを示さなくてはならない。

書類

  1. 請求書:商品が商標とともに特定されるものであること
  2. 写真:商標担当の企業職員が提出する宣誓書とともに提出するとき有効である。宣誓書には商標を付した商品、使用方法、流通国、売上高及び期間に関する事実を記載する。更に、宣誓者は同人が不正な宣誓が法に基づく罰則の対象 となることを知っていることを宣誓しなければならない。
  3. カタログ:使用証拠が提出される国の言語で作成されるか、少なくとも英語で作成されたもの。カタログには商標を付した商品とその期間が記載されていなければならない。

新加盟国について

EU内の新加盟国

ブルガリアやルーマニア等における国内登録はセニョリティクレームを主張しているケースがある。
セニョリティクレームは通常、文字又は図形商標の同一性及び指定商品等の同一性の基準を満たさなくてはならないため、これら既存の国内商標の当該国における使用は同一のCTM商標の使用と見なされると考えられる。

独立国家共同体(CIS)

アルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス、モルドバ、ロシア、タジキスタン、トゥルクメニスタン、ウクライナ、ウズベキスタンはEUに加盟していないため、EU規則はこれらの国については適用されない。

まとめ

CTM商標の名声に関する疑問について、指定商品にはない商品に関しても保護されるとの回答に関連して裁判所は十分な使用についての疑問についても解答したことになるが、その解釈によれば、名声を有しないが異議申立手続において正当な使用を立証しなければならないCTM登録の通常の使用についても、当該領域は有効である。
OHIMもこの解釈を維持している("LOTUS"事件、OHIM。R1295/2007-4)。

上記により、EU加盟国の1ヶ国のみにおける真正な使用がCTM商標の保護の継続に必要な真正な使用についての要求を満たすことが明らかになった。

Rudiger Sperling氏

Staeger & Sperling事務所のシニア・パートナー。
ミュンヘン技術大学で宇宙工学と経済学の学位を取得後、1981年弁護士登録。
特にCTM商標に関する紛争のエキスパートであり、この道の大ベテラン

Staeger & Sperling事務所

1908年設立。弁護士4名と10名の専門スタッフから成る小規模事務所ながら、歴史は古く、スタッフもベテラン揃いである。

Rudiger Sperling氏

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