2016年のIPニュース

2016年8月9日号中国:権利者が消滅した先行登録商標の扱いに関する判決 他

  1. 中国:権利者が消滅した先行登録商標の扱いに関する判決
  2. インド:電子登録証発行開始
  3. ベトナム:新刑法典による知的財産権保護の強化
  4. モンテネグロ:商標・意匠・半導体のトポグラフィーに関する法律の改正
  5. イラク:第5類への商標出願に関する方式変更(続報)
  6. ポルトガル・イラク・シリア:オフィシャルフィー変更

中国:権利者が消滅した先行登録商標の扱いに関する判決

北京知的財産法院及び高級人民法院で権利者が消滅した先行登録は後願商標の障害とならないとする判決が下された。
これはBeijing Exotropy Technology Co., Ltd. (以後"Exotropy"と呼ぶ)と商標評審委員会(TRAB)との行政訴訟について下された判決である。Exotropy社は第9類のソフトウェア等について商標「ET & Device」を2013年10月21日に出願した(出願第13397364号)。商標局は先行登録商標「YITAI(中国語)+ET & Device」(登録第7085701号)に基づきこれを拒絶した。出願人はTRABに再審請求し、2015年06月12日、TRABは拒絶査定を維持した。出願人は北京知的財産裁判所に出訴し、引用商標権者である中国企業が2010年08月18日付で消滅したことを示す公的書類を提出した。
北京知的財産法院は先行商標権者が既に存在せず、引用商標が長期に渡り使用されていなかったため、出願商標の障害とはならないと判断しTRABの決定を覆し、再審を命じた。
TRABは、先行商標権者が既に消滅したとしても、先行商標は有効であるため出願商標に抵触すると主張し、北京高級人民法院に上訴した。更にTRABは同委員会での再審において先行商標権者が消滅していたことを示す公的書類が提出されていなかったため、この書類を証拠と看做すことはできないと主張した。
北京高級人民法院は、本件について不要な手続の反復を回避するため、当該書類を証拠として認めた。また、既に先行商標権者が存在していないため、引用商標は出所表示機能を消失しており、出願商標の登録の障害とはならないと判断した。

今までこのような状況において、出願人は先行商標権者が消滅していたとしてもまず引用商標の取消を請求しなければならず、その間審査が中断されないことから、事実上先行商標の取消は不可能であった。今後出願人はまず、本件に基づき自身の商標登録を主張することが可能となるため、本件が与える影響は大きい。

ただし以下の点に留意が必要である。
本件において先行商標権者は2010年に消滅していたが、もしこれが1年未満であった場合、また消滅前に先行商標が継続して使用されていた場合、当該商標が後願商標の登録の障害とならないと主張することができるか。
また、先行商標は譲渡又は移転されていなかったが、もし第三者に譲渡又は移転されていた場合、恐らく裁判所は異なる判断を下す可能性がある。
したがって、どのくらい使用されていなければ、後願商標の登録の障害と看做されないかはケースバイケースで判断されることになる。

[出典:LexField Law Offices]

インド:電子登録証発行開始

インド特許意匠商標総局は2016年08月01日より以下の商標出願について電子登録商標を発行すると公布した。

  1. 2015年11月23日以降に公告となり
  2. 出願人から補正が提出されておらず
  3. 委任状等の必要な要件を満たし
  4. 裁判所等の管轄機関より登録を禁じる命令が発せられていない商標出願

上記の要件を満たす商標出願について、登録証はメールで送付され、当局のWebサイトからダウンロードが可能となる。また上記の要件を満たさない出願については現在の紙ベースの登録証が発行される予定である。

[出典:Remfry & Sagar]

ベトナム:新刑法典による知的財産権保護の強化

ベトナムでは2016年07月01日付で2015年刑法典が施行され、商標権の保護について以下の変更が行われた。

1) ベトナムで初めて法人に科される以下の刑事責任が明確となった。
  • 侵害品の製造と取引(第192条)
  • 侵害品である食品、食品添加物の製造と取引(第193条)
  • 治療用又は予防用薬物の製造と取引(第194条)
  • 動物のエサ、薬物、植物保護用の薬剤等の製造と取引(第195条)
  • 著作権及び著作隣接権侵害(第225条)
  • 知的財産権(商標・地理的表示)侵害(第226条)
2) 法人に科される刑事罰は以下の通りとされる。
  • 罰金
  • 営業停止
  • 営業禁止
  • 資金調達禁止
3) 侵害品の製造と取引について、2015年刑法は刑事罰が適用される基準を引き下げている。
  • 侵害品の製造又は取引について、約89USD以上(販売額、請求書に記載されている金額等から特定される)の商品について刑事罰が適用される。ただし金額が特定されない場合、2009年刑法典の基準、即ち134USD以上の価格の商品について刑事罰が適用される。
  • 旧法において、取引において(on a commercial scale)商標又は地理的表示を故意に侵害する行為は侵害と看做されたが、何が「取引において」に該当するのかのガイドラインがなかったため適用が困難だった。
    新法では「取引において(on a commercial scale)」を削除し、以下の場合を知的財産権の侵害と定義している。
  • 侵害者が不正な利益を約445USD以上取得している場合
  • 侵害によって知的財産の権利者が約890USD以上の損害を受けている場合
  • 侵害品が約890USD以上の価格を有する場合
[出典:Spruson & Ferguson]

モンテネグロ:商標・意匠・半導体のトポグラフィーに関する法律の改正

モンテネグロでは商標・意匠・半導体のトポグラフィーに関する法律が改正された。これはEU法との調和を目指すものであり、商標法の改正は2016年07月08日付で発効され、具体的に以下の点が変更となる。
モンテネグロを指定する国際商標の暫定的拒絶通報の対応期間はWIPOからの通知が届いた日からではなく、発行日から4ヶ月となった。
商標権侵害の罰金は法人に対して2,000-10,000EURO、企業家に対しては500-3,000EURO、自然人及び法人における責任者に対しては250-1,500EUROが科されることが明確となった。
従来は知的財産権に関する施行細則で規定されていた市場のウォッチの要件が商標法と意匠法に組み込まれた。
また、EU加盟後におけるEU商標のモンテネグロにおける有効性についても定義されている。
概して商標法に関する改正は従来の慣例を明確化するものが多い。

[出典:SD PETOSEVIC]

イラク:第5類への商標出願に関する方式変更(続報)

2016年04月12日号で第5類の商標出願に関して新しい方式要件を導入されたことをお伝えしたが、その後弊社が確認したところ、現在この制度はペンディングとなっており、導入について再検討が行われている。
進展が在り次第、続報をご連絡する予定である。

[出典:Abu-Ghazaleh IP]

ポルトガル・イラク・シリア:オフィシャルフィー変更

ポルトガル知的財産庁は2016年07月01日より新しいオフィシャルフィーを公布し、これに基づき出願費用がやや上昇した。
イラク及びイラク領クルドにおいても現地での認証費用が上昇した。

シリアではWIPO通知第21/2016号により、2016年08月01日よりシリアを指定する国際商標出願と更新についてオフィシャルフィーが変更された。

[出典:marqesmarcas.com、JAH& Co. IP]

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