レポート−著作権

ASEAN・インド著作権手続

ASEAN(アセアン)・インドにおいては日本企業の進出も進んでおり、各社自社知的財産権についての保護も積極的に行っています。これらの国において法的整備は進んでいますが、まだ模倣品・海賊品は横行しており、審査の長期化等で商標が登録となるまで時間がかかる国も多くあります。
また、商標権の保護は区分により制限されます。そこで、商標が権利化されるまで比較的登録までの時間が早いとされ、区分に関係のない著作権に注目し、併せて登録しておく企業も増えています。
ASEAN・インドにおいてはシンガポールとマレーシアを除き、著作権の登録制度があり、それぞれ登録するとメリットもあります。以下に各国の著作権登録制度を簡単に紹介します。

フィリピン

メリット

著作権の保護を受けるために登録は要求されないが、次のような理由から著作権登録証を入手しておくのが賢明である。

  1. ①著作権侵害訴訟においては、フィリピンの裁判所より著作権者に対して著作権所有の 物的証拠が要求されることが多い。裁判所が証拠として認められるものは以下の通りである:
    1. 外国の著作権登録
    2. 著作権所有の宣誓供述
    3. フィリピンの著作権登録証写し
  2. ②過去に宣誓供述書が却下され、代わりに著作権登録証の提出が要求された事例がある。宣誓供述書は著作権者自らが作成したものに過ぎず、証拠としての価値はないという誤った認識を持っている裁判所もある。
登録手続

申請書、著作物の複製3部、委任状1部、登録対象の著作物に対して著作権者が著作権を所有していることの宣誓供述書1部、申請者と著作者が異なる場合は著作者から申請者に対する譲渡証書1部を国立図書館著作権部(Copyright Division)又は知的財産庁へ提出する。
登録証明書は通常約1か月で発行される。

保護期間
  • 著作者の生存の間と死後50年
  • 共同著作物の場合、最後に生存する著作者の生存の間と死後50年
  • 匿名又は変名による著作物の場合、最初の合法的公表日から50年
  • 未公表の著作物の場合、作成日から50年
  • 応用美術の著作物の場合、作成日から25年

ベトナム

メリット

著作権登録証書は著作権の有効性及び証書に記載された事実の一応の証拠(prima facie evidence)となるため、権利の対立が生じた場合、登録しておけば管轄当局や裁判所に対して著作権を証明する義務がない。

登録手続

申請書、著作物の複製2部、委任状(要認証)1部、申請者と著作者が異なる場合は著作者から申請者に対する譲渡証書(要公証)1部をベトナム著作権局に提出する。

ベトナム著作権局は方式要件(独創性、固定性)について審査を行う。固定性とは「文字もしくは記号、腺、立体、配置、色彩、音声・画像による表現、または固定された材料に収めた音声・画像の再生であって認識可能であり、複製若しくは転送可能なもの」であるとされる。
出願に不備があった場合は拒絶通知が発せられ、補正の機会が与えられる。
拒絶通知に不服がある場合は著作権局に、著作権局の判断に対する不服申立は更に文化情報省か裁判所へ提起することができる。
出願に不備がない場合、又は拒絶を克服できた場合は登録となり、著作権局で公示される。

保護期間
  • 映画、写真、応用芸術、作者不明の著作物の場合、最初の公開から75年
  • 完成日から25年以内に公開されなかった映画、写真、応用芸術の著作物の場合、著作物の固定された日から100年

タイ

メリット

著作者は知的財産庁(DIP)に著作物を登録できるが、登録しないと著作権の保護を受けられない訳ではない。しかし紛争時、通常裁判所(特に知的財産・国際貿易裁判所(IPIT 裁判所))に自らが著作者であることを示す証拠として、知的財産庁(DIP)に著作物を登録するよう、助言される。
知的財産庁(DIP)に著作物を登録する主たるメリットは、登録がなければ 経済警察(ECD)は著作権者に刑事手続を行うことを認めない点にある。換言すれば、知的財産庁(DIP)への登録をしていない著作権者は、知的財産・国際貿易裁判所(IPIT 裁判所)で民事上の救済を求められるのみとなる。

登録手続

著作権を登録するには、知的財産庁(DIP)又は州の財務局に申請書を提出する。
必要情報と著作権に関する利用許諾や譲渡等、創作に至った手段、方法を記載した申請書、著作物のサンプル(文芸の著作物であれば書籍、演劇、録音、映画の著作物等であれば CD 等)を添付する。
申請が受理されると著作物、出願書類等についての審査が行われ、書類に不備がある場合補正が行われる。
登録されると、知的財産庁(DIP) から申請者の住所に証明書が送付され、第三者にも公開される。

保護期間
  • 著作者の生存中及び死後50年
  • 共同著作物の場合、最後の共同著作者の死後50年
  • 著作物が公表される前に著作者又は全ての共同著作者が死亡した場合、当該著作物が最初に公表された日から50年
  • 著作者が法人の場合、著作権は著作物が創作された日から50年存続するが、著作物が公表された場合は、最初に公表された日から50年
  • 応用美術の著作物は、著作の時から25年、著作物がこの期間内に公表されたときは最初に公表された日から50年

マレーシア

メリット

マレーシアには著作権登録の制度がなく、著作権は、1987年著作権法(Copyright Act 1987)に基づく著作権基準が満たされれば自動的に発生する。
しかし、マレーシア知的財産公社(MyIPO)は2012年改正著作権法2012年(Copyright(Amendment)2012)に基づき、著作権任意通知システム(Copyright Voluntary Notification System)を導入している。同システムでは、審査はなく先願主義であり、登録と同じ効果をもたらすとしている。同システムの詳細は、下記ウェブサイトで見ることができる。

保護期間
  • 著作者の生存期間と死後50年
  • 出版物、録音作品、写真、映画、放送作品の著作物の場合、最初に出版または放送された年の翌年の始まりから50年

インドネシア

メリット

権利発生に登録は不要であるが、著作権登録証書は著作権の有効性及び証書に記載された事実の一応の証拠(prima facie evidence)となるため、権利行使のためには著作権登録をしておいた方が良いといわれる。

登録手続

著作権登録出願に当たっては、願書、著作物の見本及び委任状を費用とともにインドネシア知的財産権総局(Directorate General of Information and Public Relations : DGIPR)に提出する。登録されると公報に掲載され、公開される。

尚、2014年の著作権法の改正により、商標として使用されるロゴその他の識別力のある標識の形態を有す図画を著作権登録することができないと明確に規定されたが、改正法は著作権法に基づきそうした商標ロゴが保護されるか否かについては触れていない。更に商標として使用されるロゴの図面は、第41条に基づく著作権登録できない作品として列挙されていない。
また旧著作権法下では、工業意匠図面は著作権保護の対象から除外されていたが、改正著作権法ではこの除外規定は削除された。これは、工業意匠図面に関して著作権保護を主張することが可能であることを示す。

保護期間
  • 本や音楽等の著作物の場合、著者の死後70年
  • 写真や映画等について著者の死後50年
  • 法人により所有される作品の場合、最初の公開日から50年

インド

メリット

著作権登録簿に記載された明細について、一応の証拠(prima facie evidence)となる(48条)。著作権登録簿に記載された明細の写しや抄録で著作権局長が認証・押印したものは,全ての裁判所において証拠として採用され得る(48条)。そのため実務上は、著作権登録簿は発行日や権利の帰属等の証拠として有効であると考えられている。

登録手続

申請書と公的費用を著作権局に提出し、登録申請を行う。方式審査が行われた後、所定の条件を満たすか審査が行われ、満たさないと判断された場合、審査報告書が作成され、申請人に送付される。不備が修正された場合、著作権が登録され、公報に掲載される。
美術の著作物の場合、まず商標庁で相対的審査(同一・類似先行商標の有無)を行い、「No objection」証明書が発行された後、著作権庁へ申請する。商標庁の証明書がない場合、著作権登録はできない。

保護期間
  • 言語作品、戯曲作品、音楽作品、または美術作品は、当該作品がその著作者生存中に発表されている場合には、当該著作者の生存中および死後60年
  • 共同著作物の場合、全ての著作者の死後60年
  • 無名またはペンネームの著作物の場合、公表後60年
  • 但し、上記期間が満了する前に著作者の氏名が公表された場合は、著作者の生存中および死後60年
  • 著作者の死亡後に公表された言語作品、戯曲作品、音楽作品または版画については、作品の公表後60年また、かかる著作物の二次的著作物は、当該二次的著作物の公表後60年
  • 映画および録音された音声、写真の場合、公表された翌暦年から60年

なお、著作権はあくまで相対的独占権であり、絶対的独占権である商標権と比べて優位というものではありません。著作権登録とは別にこれらの地域で保護されていない商標権は速やかに出願することをお勧めします。

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