レポート−商標

出願時の注意点

ルートが確定すると、次に出願する商標の態様(色彩の有無や、シリーズ商標の可否等)や、パリ優先権主張の要否、出願国における使用の有無、出願国の登録要件等について事前検討が必要です。
また出願する国の実務を反映した商品/役務の選定は非常に重要であり、中国、韓国、台湾、ベトナム、タイ、シリア、インド、インドネシアのように商品/役務の個数によって追加費用が発生する国があるので注意が必要です。

参考事例として、いくつかの国における出願時の注意点を挙げます。

アメリカ

パリルートの場合、出願の基礎は使用意思(intent to use)使用(use in commerce)、本国登録(出願)(Home registration/application)から選択することになります。アメリカにおいて現に使用しているのであれば使用を選択し、将来的に使用する予定があるのであれば使用意思で良いと思います。使用意思と本国登録(出願)を併用して出願することもできますが、出願後でもその基礎の変更が可能です。

商品・役務表示は包括的表現が認められず、かなりの特定を求められます。アメリカの特許庁にある次のサイトが参考になります。

例えば、アメリカでは、“Industrial chemicals”、“footwear”の表現は受け入れられますが、“clothing”の表現は受け入れられません。括弧は用いないほうが賢明ですが、“Belts[clothing]” “Photoresists [chemicals]”のように特定する場合は括弧の使用ができます。また他国では受け入れられる“Unprocessed plastics [plastics in primary form]”のような説明は不可であり、“Sash bands for kimono (obi)”のような外来語記載は可能といった細かい約束事があります。

EUTM

受け入れられる表現として、TMclassが参考になります。
クラスヘディングの指定が可能ですが、文字通りの商品役務を指定したものと見なされる為、クラスヘディングの指定をご検討の場合は、IPニュース2016年1月13日号「EU:商標制度改正」の「4)手続の変更」及び2016年3月23日号「EU:商標制度改正(続報)」をご参照ください。

中国

見落としがちなのは、出願にあたり中国語の社名も必要となることです。日本企業の場合は、「株式会社」の表記が認められますので、「株式会社○○○○」の後半に該当する部分がひらがなやカタカナのように漢字以外である場合には、該当する中国語訳(簡体字)をご用意いただく必要があります(例えば、株式会社マークアイは株式会社玛凯)。
指定商品・役務は10個を超過した場合、超過した1指定商品/役務につき追加で費用が発生します。
商品/役務はサブクラス制度を採用しています。商品/役務表示は中国独特の運用であり、他類間類似もあります。多くの国で受け入れられる表現“Bath salts”は“Bath salts, not for medical purposes”と表記する事が求められます。“Chemical additives”は用途を限定する必要があります。例えば「燃料用化学添加剤」「掘削汚水用化学添加剤」「殺菌剤用添加剤」など。工業用といった広範な表現は受け入れられません。“Containers of metal”は“Containers of metal for storing acids”等、“Thermometers”は“Thermometers for medical purposes”とさらに用途を限定しなければ、補正指令を受けるリスクが高くなります。“Persevered fruits and vegetables”なども表現も受け入れられないため、“Preserved fruits” “Preserved vegetables”などと個別に表記する必要があります。
逆に広く認められる表現としては、第25類“Clothing”があります。第10版から類似群を超える広範な商品として認められるようになったので、障害となる先行商標が存在しない場合は、“Clothing”を入れるのが良いでしょう。

尚、第35類において、薬剤以外の小売りの保護はできません。その周辺役務“他人のために行う販売促進のための企画及び実行の代理”や“マーケティング”等などを指定することになります。“マーケティング”は第10版で3503に追加されたもの。今後の法改正において小売りが導入される場合、3503類似群に追加される可能性が高いと考えられています。

台湾

台湾でも同様に、中国語社名が必要です。中国とは異なり、「株式会社」の表記は認められませんので、一般的に「日商○○○○股份有限公司」と訳されます(※日商は日本企業の意)。商品区分(第1-34類)に関しては、1区分あたりの商品個数が20個を超過した場合、超過した1指定商品につき追加で費用が発生します。サービス区分(第35-45類)に関しては第35類の特定小売を除き、追加費用は発生しません(※特定小売は5個を超過する場合に追加費用が発生します)。台湾も商品/役務はサブクラス制度を採用しています。

タイ

タイは、包括的表現(furniture、clothingなど)が認められないため、細かく指定する必要があります。2個目から追加で費用が発生しますので(更新時にも)、多くを指定するとそれだけ多くの費用が生じます。具体的商品の列挙が難しい場合、まず包括表現で出願して指令を受けた段階で細かく限定する方法がありますが、タイでは出願時の個数を超えて補正することが認められないため注意が必要です(例えば、furnitureをtableに補正は可、table, chairの2つに補正は不可)。また、子音のみで構成される文字の登録は認められず、図案化された態様での出願が必要となることもタイの特徴のひとつです。

インドネシア

インドネシアでは、商標出願に際して宣誓書の提出が求められます。1.出願時1区分10指定商品・役務毎に追加のオフィシャルフィーが発生します。商品を細かすぎるほど限定する必要はありませんが、あまりに表現が広範な場合は、受け入れられません。
一般に白黒商標は汎用性が高く基本的にどんな色彩をも保護するとされていますが、インドネシアは例外で、白黒商標はより広範な保護を与えません。よって、色彩が商標の重要な特徴である場合は、白黒ではなく色彩つきでの出願が推奨されます。

アルゼンチン

指定商品は広範な表現を避け細かく指定しなければならないというのが通例ですが、アルゼンチンでは逆に「ALL GOODS」と指定することが可能です。ただし当然ながら、広く指定すればするほど先行商標の引用や異議申立のリスクも高まることに留意しなくてはなりません。なお、第三者異議申立のための公告は、権利付与前に行われる国と、日本や台湾のように登録後に行われる国と大きく二つに分かれますが、前者はまたさらに審査前と後とで枝分かれします。多くの中南米諸国では実体審査前に公告が行われますが、中でもアルゼンチンの異議申立は特殊です。異議が申し立てられると通知を受け取ってから1年以内に(A)異議申立人との和解(B)異議申立を不服として訴訟提起のいずれかを満たさなければ、出願放棄とみなされてしまいます。和解が成立、異議取下げと進むのが望ましいのですが、和解に至らなければ調停、訴訟へと進むことになり、登録までに相当の年数を要することが予想されます。また、区分が異なっても商標が似ているのみで異議を申立てられるケースも見受けられ、明らかに商品非類似と思われるケースでも、理不尽ではありますが、異議を申立てられた以上は何かしらのアクションを起こさなければならない国です。

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