2007年のIPニュース

2007年5月24日号中国:深川、知的財産権に関する厳しい取締り 他

  1. 中国:自然人による商標出願の要件強化
  2. 中国:深川、知的財産権に関する厳しい取締り
  3. 中国:模倣品の取締強化
  4. シンガポール:シンガポール商標改正法の公布
  5. シリア:産業財産権関連法の公布

中国:自然人による商標出願の要件強化

商標権侵害が絶え間なく起こり、それに対する申立てが大概の場合個人により行われる事から、中国当局はそのような不適切な傾向を減らすために、自然人の名義で出願される出願の要件を以下のとおり限定列挙した。

  1. 個人による商標登録出願は、事業体、あるいは代表者の名義で出願すること。
  2. 共同経営に関しては、商標登録出願は経営者個々の名前か、経営者全員の名前で出願する事。
  3. 定期借地農家に関しては、定期借地契約書に署名を行った人物の名前で出願する事。
  4. 合法的に事業経営を行う自然人は、管轄官庁により発行された登録書類に登録されている経営者の名前で 出願する事。
  5. 指定商品と役務に関しては、事業許可証に特定されている事業範囲内、あるいは管理する農業副産物の範囲 内に留める事。
  6. 商標の移転申請は、申請人が自然人である場合は、上記規則にも従う事。
[出典:First Law]
【解説】

古い商標法の下では、個人経営の工商業経営者以外、中国の自然人による商標登録は一貫して認められていなかった(外国人の場合を除く)。ところが、経済発展に伴い、経営登記を行う必要のない農民、弁護士といった職業に従事する者による商標の使用の機会が高まったため、自然人への出願を認めることとした。

今回の取り扱い要件は、ちょっと後退した感が否めない。が、侵害事件を減らそうとする当局の努力は評価すべきだろう。

中国:深川、知的財産権に関する厳しい取締り

深川警察は2006年1月から11月の間に、1億30万人民元(1,280万USドル)の経済的損失に相当する知的財産権を侵害したとされる94人の容疑者を逮捕した。知的財産権侵害関連の事件を追跡するため、深川公安部は経験により選抜された14名の警官から成る特別チームを設置し、そのチームは2007年には22名編成に増員する事が見込まれている。

深川が世界最大の模倣品中心地のひとつだという事から考えると、取締官の数が飛躍的に伸びる事を期待したい。

[出典:MMLC Group]
【解説】

深川といえば、北京、上海、広州と並ぶ模倣品のメッカ。製造、販売どちらも精力的に行われている地域である。中国の模倣品は国内にとどまらず、そこから海外に流出する。深川で取締官の数が増やされたということは、それだけ中国政府の模倣品についての取り締まりの姿勢が強まったということだ。

ここ数年、「中国の模倣品取締は以前に比して熱心になってきた」と実感する声も、海外企業の知財担当者から聞こえてくる。きちんと取り組む姿勢には共感できる。適切な人数の配置が実現できたら、今度は適切な、且つ、迅速な処理が望まれるところだ。

中国:模倣品の取締強化

ジュネーブで開催された第3回世界模倣品・海賊品撲滅会議において、ある中国のトップクラスの司法官が、「模倣品や海賊行為で個人や企業が得た売り上げ高、または利益高を、刑事制裁を受ける前に明確にする」という2004年12月に公布された司法的解釈を修正し、中国の反模倣品対策法の抑止効果の強化を図ると語った。

売り上げ高や利益高が基準点に達しなければ、侵害者は通常、罰金などの行政処分を受けるだけである(罰金は多くの場合極めて低い)。

ション・シュエングオ最高人民裁判所副裁判所長は、裁判所が「2004年公布の司法的解釈の、知的財産権関連の犯罪を罰し防ぐという役割を十分生かすために、当解釈の補充・修正を行う」事を決定したと述べた。当副裁判長はさらに、知的財産犯罪裁判の判決基準は「改善・統一」され、執行猶予は標準化された方法で適用され、被害の状況と重大さに従い厳しい厳罰を課すと発言した。

[出典:MMLC Group]
【解説】
残念ながら現時点にて、上記に記載の司法的解釈の修正版・補充版の公布の情報を入手していない。よって具体的にいつごろ、どのような内容に変更・修正されるのかは不明である。中国では、商標法、規則のほか、この司法解釈が非常に大きな役割を果たすものなので、この修正は今後大きな影響を与えるものと思われる。

シンガポール商標改正法の公布

2006年3月に開かれた外交会議にて採択された「商標法に関するシンガポール条約(Singapore Treaty on the Law of Trademarks")」に、2006年5月にシンガポールも加盟した。この加盟に伴い商標法の改正が検討された結果、2007年1月22日に国会を通過した。改正条項はまだ実施されてはいないが、この条約に完全に対応いる。以下がその要点です。

  1. 多区分制の導入
  2. 出願分割制度の導入
  3. 期間非遵守の場合の救済処置の導入
  4. 審査中の商標登録出願へのライセンス登録の認可
[出典:Alban Tay Mahtani & de Silva]
【解説】
「商標法に関するシンガポール条約(Singapore Treaty on the Law of Trademarks")」、いわゆるシンガポール条約とは、1994年に採択された商標法条約の改正に関する条約のこと。
2002年あたりからWIPOのSCT(商標法等常設委員会)で商標法改正の議論が始まり、2006年3月に採択に至ったもの。シンガポール条約の内容についてはWIPOのホームページ、あるいは日本の特許庁のページを見るとよい

現在のところ、シンガポールは単区分出願制度なので、これが多区分制に変われることは、多区分制に慣れた我々日本人にはうれしい限りだ。

POS(シンガポール特許庁)のホームページによれば、改正法案は2007年1月22日に国会通過、2007年2月1日に大統領の同意を受けたとあり、”The Trade Marks (Amendment) Act 2007 will come into operation on a date to be notified”.とあるから、まもなく実施されるのだろう。が、確実な日付は不明である。これから出願手続を執ろうと考えている人は要注意。現地代理人によく確認すべきだろう。

シリア:産業財産権関連法の公布

商標、実用新案、意匠を対象とする2007年3月12日の法律第8号が公布された。 この法律は、シリアが加盟している産業財産権協定の国際的条件のほとんどに準拠している。適用は2007年4月12日からとなる。

法律の重要な点は以下のとおり。

  1. 産業財産権システムを登録制へと変更した。商標、実用新案、意匠の登録出願は公告から90日以内に異議申立てがない場合、登録される。
  2. 更新にも同様の審査、公告および異議申立て手続きが適用される。
  3. 政府手数料が値上げされる。
  4. 侵害の罰金額が引き上げられる。
  5. 商標の使用が義務となる。出願時に使用している、あるいは3年以内に使用開始予定である旨を明記しなければならない。また更新には使用証拠が必須となる。
  6. 商品の区分毎に出願しなければならない。一以上の区分を有する登録の更新には、分類ごとの更新申請を行う。
  7. 拒絶された出願は、
    (1)特別委員会
    (2)特別裁判による再審査の対象となる。
  8. 実用新案および意匠につき、登録機関の要請により、正当な補償を支払った上での実施権設定の裁定を大臣が下す場合がある。
  9. 未登録著名商標を保護する。
  10. 地理的表示の登録が可能になる。
[出典:SYRIA-NEW LAW FOR TRADEMARKS, MODELS & DESIGNS]
【解説】
適用は4月12日とあるから、この記事が掲載されているときには既に改正法が施行しているはず。
ニース分類に従ってはいるものの、単区分制を採用。出願中のケースの譲渡、ライセンス登録等ができないことに注意しよう。シリアは、フランス領だったこともあってか、マドリッド協定加盟国だ。侵害の罰則規定を参照するに、300,000〜1,000,000シリアポンド(約75万円以上250万円以下)あるいは3ヶ月以上3年以下の懲役とある。近隣諸国より物価は安いようなので、この額は内国人にとってはかなりの高額のはずだ。
ちなみに、今回改正の対象となった法域は「商標」「実用新案」「意匠」だが、この国には「特許法」もちゃんとある(PCT加盟国)。

解説:豊崎国際特許商標事務所 弁理士 豊崎 玲子

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