2015年のIPニュース

2015年6月23日号イギリス領ヴァージン諸島:新商標規則開始 他

  1. イギリス領ヴァージン諸島:新商標規則開始
  2. EU:商標制度の改正草案発表
  3. ノルウェー・スーダン:オフィシャルフィー上昇
  4. イラク・イラク領クルド:出願に関する新たな指令
  5. 中国:漢字商標の重要性の再確認

イギリス領ヴァージン諸島:新商標規則開始

イギリス領ヴァージン諸島内閣は2015年04月15日付で、新商標規則を採択し、同規則は2015年09月01日付で施行される。これによりイギリス登録と国内出願の二重制度が廃止されることになる。

旧制度においてイギリス登録をベースにした場合と国内出願の最大の相違は前者において役務区分が保護されるにも拘わらず、後者においては商品区分のみが保護されることにあった。新制度はこの矛盾を解消し、出願制度を統一し、商品・役務両区分が保護可能となる。

尚、現在同国において登録されている商標は自動的に新制度でも保護されるが、旧英国分類で登録された国内商標登録については、審査官が職権により書き換えを行う。
また、新制度におけるオフィシャルフィーは未だ発表されていない。
進展があり次第、IPニュースでも報告する予定である。

[出典:Caribbean IP]

EU:商標制度の改正草案発表

EU委員会は2015年04月21日付プレスリリースにおいてEU商標制度の近代化を目的としたいくつかの改正を発表した。この草案はその後2015年06月08日、EU理事会において最終版が公布された。これは①加盟国の国内商標法の調和、②トランジットの侵害品に対する権利者の保護、③OHIMと加盟国商標庁の協力強化、④OHIMのガバナンス調整を目的とする。

まず、OHIMはその名称を“European Union Intellectual Property Office”とし、CTMは“European Union Trademark”に変更される。
その他、音商標、ホノグラムの登録手続の簡素化、異議申立、無効手続等の国内手続の調和、EU証明商標の導入を含む法的明確性を確立するいくつかの条項の簡易化等が含まれる。

またオフィシャルフィーに関しても現在は3区分まで同一料金であるが、それ以下の区分のみを必要とする中小企業のために出願・更新等に関する新たなフィーが導入される予定である。

更に改正指令第10条(5)は、商標所有者は、許可なく指定商品について登録した商標と同一又は実質上識別できない外観の商標を付した第三国からの商品又はそのパッケージについて、第三者のそのようなEU加盟国への輸入を、当該商品が当該国において市場にリリースされることなく、防ぐことができると規定している。しかしながら、商品の所有者が最終国の市場における商品の流入を商標権者が禁止することができないことを立証した場合は、商標権者はこの手続を取ることができない。
この条文については、“最終国”の定義について争う余地があり、その実効性が注目される。

本草案は今後EU議会で検討され、更に加盟国における移行手続が必要となるため、すぐに施行されるものではない。尚、指令と規則の改正案については以下で確認できる。

【規則について】

【指令について】

[出典:OHIM]

ノルウェー・スーダン:オフィシャルフィー上昇

2015年06月06日より、国際登録においてノルウェーを指定する場合、又は事後指定、更新する場合のオフィシャルフィーが上昇した。
また、スーダン商標庁も商標出願に関するオフィシャルフィーを上昇した。

[出典:Lall Lahiri & Salhotra、Jah & Co.]

イラク・イラク領クルド:出願に関する新たな指令

イラク商標登録庁は2015年06月07日付で指令を発し、出願日より6カ月以上経過した委任状の所有者に対して新たに領事認証済委任状の提出を求めると公布した。新しい委任状が提出されなかった場合、当該出願はイラク商標及び地理的表示に関する1957年法律第21号第16条に基づき拒絶される。

またイラク領クルドに関して、従来同自治区における個別商標出願又はイラク商標権の拡張申請によって保護が可能であったが、イラク商標登録庁が拡張申請を廃止する指令を出した。これが事実とすれば、今後クルド自治区に関しては新たに商標出願を行う必要がある。

現在、これらの情報については詳細を確認中であり、弊社管理案件については別途ご案内する予定である。

[出典:Maddock & Bright IP Law Office、JAH & Co., IP]

中国:漢字商標の重要性の再確認

中国においてはローマ字のブランドであっても、その音訳又は翻訳となる漢字商標の保護の重要性が強調されていたが、この都度その重要性を再確認する判例が2つ下され、いずれも正当な商標権者に不利な内容となっている。

2013年07月、アメリカの有名な運動靴ブランド“New Balance”は、中国で商品販売において“新百倫”の文字を使用したため、広州市在住の周氏に商標権侵害と訴えられた。このたび、広東省広州市中級法院(広州地裁)は、本件に対して原告の権利を認め、被告“NewBalance”の中国関係会社は権利侵害と認められ、9800万元の損害賠償の支払を命じられた。本件は今まで広州地裁の商標権侵害事件において最も高額の賠償事件であった。
原告周氏は、第25類の「服装、靴等」を指定し、それぞれ第865609号の“百倫”商標と第4100879号の“新百倫”商標を登録した。第865609号の“百倫百倫”の商標は1994年08月に出願し、1996年08月に登録した。第4100879号の“新百倫”商標は2004年06月に出願し、2007年10月に商標局の審査を経て公告された。

その後、“New Balance”のブランドを所有するアメリカ新平衡運動靴公司(NEW BALANCE ATHLETICSHOE, INC.、以下、新平衡公司という)は当該商標に対して異議申立を請求した。その理由として、当該商標が“New Balance”の商標を模倣しこの商標と類似する疑いがある。2011年07月、両商標は類似ではないとする審決が商標局から出され、新平衡公司が再審査を請求せずに、第4100879号“新百倫”商標は登録された。

2003年、アメリカ企業は“New Balance”を“新百倫”に中訳して上海市でその関連会社新百倫貿易(中国)有限公司(以下、“新百倫公司”という)を創立し、関連商品を中国へ販売している。新百倫公司はインターネット上で天猫ショップと京東ショップに開設した旗艦店に“新百倫公式旗艦店”の文字を使用;カタログに“New balance/新百倫”の標章を使用;公式サイトで“新百倫公式サイト”“新百倫”の標章を多数に使用;また、宣伝資料や領収証およびレシートなどにも複数回“新百倫”の標章を使用していた。

新百倫公司は“新百倫”の使用は善意の先使用であり、“新百倫”を“New Balance”商標の中訳、商品の中文名称、ブランド所有者名称の中訳として合理的に使用しており、原告の登録商標権を侵害していないと主張した。
しかし広州地裁は、周氏の商標権2件は合法的であり、新百倫公司が商品販売際に“新百倫”の文字を使用する行為は、商標的使用であること、また“新百倫”は“New Balance”の音訳または意訳ではなく、その意訳は中文の“新平衡”であると判断し、侵害行為の停止、損失賠償の支払いを命じた。被告の侵害行為は販売侵害行為に属し、直接販売商品に“新百倫”の文字を使用していないため、賠償金額が販売利潤の1/2となり、合計9800万人民元を支払う判決が下された。現在“New Balance”側が上訴の準備を進めている。

またマイケル・ジョーダン事件に関してもこのほど同氏に不利な判決が出た。
2015年05月12日、米プロバスケットボールリーグNBAの歴史に残るスーパースター、マイケル・ジョーダン氏が中国スポーツ用品メーカーを相手取り、「名前や肖像を無断で借用された」として同社を訴えていた問題で、中国の裁判所は一審の判決を支持し、この訴えを棄却したことが分かった。

ジョーダン氏は1984年のロサンゼルスオリンピック以降中国国内で有名となり、その中国名称「喬丹」は瞬く間に中国全土で認識されるようになった。これに目を付けた中国のスポーツ用品メーカーは名称も「喬丹(チャオダン)体育」とし、1998年以降ジョーダン関連の商標を100件以上出願・登録した。そもそも社名に冠した「喬丹」からして、「ジョーダン」の音訳語である。同社はロゴマークにも現役時代のジョーダン氏のシルエットを彷彿させるイラストを使用。また、同氏の背番号として知られる23番を付した衣類を販売していることもあり、多くの消費者は自然とジョーダン氏を連想することになる。
2012年02月、ジョーダン氏は「無断で氏名と肖像を使用され、精神的損害を被った」として中国の裁判所で訴訟を起こした。

現在、関連の訴訟は78件に上っている。うち、32件に関してこのほど北京高級人民法院(高裁に相当)は、原告の訴えを棄却した。ジョーダン氏の代理人を務める弁護士は「判決内容は誠に遺憾」と不満を表明し、最高人民法院(最高裁に相当)に上訴する構えを見せている。ジョーダン氏は「私は中国の法律を尊重する。また、中国の法律が私の合法的権利を守り、消費者をミスリードから守ってくれると信じている」とコメントした。

「喬丹体育」は2000年に福建省で設立され、中国では相応の知名度を有するアパレルメーカーである。同社の言い分としては、「『喬丹』はあくまで一般的な人名『ジョーダン』の表記法のひとつであり、必ずしもマイケル・ジョーダン氏個人と結びつけられるものとは限らない」としている。

[出典:Shanghai Patent & Trademark Law Office, LLC]

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