2021年08月30日ブランディング今日から実践シリーズ!!「モノ忘れ怪獣」の倒し方
プロジェクトを進めていくなかで出現するネーミング決定を阻む怪獣たち。
これまで「ゼロ怪獣」「ピンとこない怪獣」「スネスネ怪獣」が登場しました。倒し方はばっちりですか?
もちろん、立ちはだかる怪獣はまだまだこれだけではありません。
今回は「モノ忘れ怪獣」に立ち向かうための有効な武器をこれまでの経験を踏まえて解説していきます。
―――さぁこれまでの戦績は対「ゼロ怪獣」「ピンとこない怪獣」「スネスネ怪獣」三連勝でした。
西岡:今回は「モノ忘れ怪獣」です。
―――ド直球な名前ですね・・・
西岡:そうですね。「忘れんといて」と思わず突っ込んでしまいたくなります。
―――何となく特徴がイメージできますが、改めてどのような怪獣なのでしょうか?
西岡:必殺技は「なんでネーミングが必要なんだっけ?」。ネーミングの必要性そのものを忘れてしまっています。
―――確かに「いやいやいや、忘れんといて」と突っ込みたくなりますね。
西岡:ネーミングを決定する最終局面で登場した場合「モノ忘れ怪獣」として立ちはだかります。
しかし、指摘しているポイントは的を得ている非常に重要なポイントであることもままあります。
―――どうゆうことですか?
西岡:『ネーミングが必要か議論を行い、必要だと合意した上でプロジェクトをスタートしているか?』ということです。
―――セミナーなどでもお話いただく「ネーミングの必要性」ですね?
西岡:その通りです。新しく出る技術や製品すべてにネーミングを行うことはお勧めできません。
ネーミングのプロジェクトをスタートする前に必ず「今回はネーミングが必要か否か」を議論してください。
自分たちが区別する為だけではなく「ユーザーに認知してもらう為に特別な『印』が必要かどうか」ということです。
―――≪最大の難関!!ネーミングを決めるコツ≫でも触れられた、ネーミングを作り始める前の準備運動ですね。
西岡:その通りです。この議論を経てプロジェクトをスタートしていれば、
「なぜ、今回はネーミングが必要なのか?」については答えが出ていますよね?
―――その通りですね。
西岡:ここまで準備が整っていれば「モノ忘れ怪獣」に対する対処はシンプルです。
その議論を思い出させてあげればいいのですから。
―――なるほど。
西岡:「○○の議論で△△の理由でネーミングが必要だと結論が出てプロジェクトがスタートしましたよね?」
「なのでネーミングが必要な理由は△△ですよ。」と優しくお伝えしてください。
―――ネーミングを作り始める準備運動がしっかり出来ていれば。ですよね?
西岡:その通りです。もしこの準備運動を怠っていたら「モノ忘れ怪獣」は非常に強敵になります。
なぜなら、「なぜ今回はネーミングが必要なのか」が曖昧なのですから、立ち向かう武器がありません。
プロジェクトが白紙に戻る場合も考えられます。
―――そのような場合はどうすればいいのでしょうか?
西岡:その時点で「なぜネーミングが必要か」を改めて議論することが大切です。そこで全員の認識を合わせましょう。
―――その結果「今回ネーミングは不要だった」と結論になった場合はどうでしょう?
西岡:それも一つの良い結論だと思います。明確に「ネーミングは不要だった」と結論が出るのですから。
確かに、これまでプロジェクトに費やした時間がもったいないと思うかもしれませんが、
今後もずるずると無駄な時間を費やさなくてよかったとか、今後の教訓になった、とポジティブに考えてください。
ネーミングの創作は他者商標権の調査や登録など実際に使用するためには以外とお金と時間がかかります。
そして残念ながらそのことがあまり知られていないというのが実情ですから。
―――最悪のケースはどのようなケースですか?
西岡:ネーミングの必要性を議論せず曖昧なままずるずると何となくネーミングを決めていくことです。
そういった場合、目的がはっきりしていないのでネーミングが決まりづらいです。
ネーミングが決まっても、もとより明確な理由も無く作られたネーミングが活躍することはあまり期待できないでしょう。
―――なぜそう思われるんですか?
西岡:要するに、単なる区別で十分なところにむりやりキャッチーなネーミングをしても「あまり意味がない」からです。
スーパーの青果売り場で、大根や人参は産地の表示があってもあくまでも「大根」と「人参」ですよね?
でも例えばぶどうはどうでしょう?「ぶどう」ではなく「巨峰」のような特別なネーミングで売っていることが多いですよね?
ちなみに「巨峰」は品種名ではなく商標です。よさてこの違いはどこから来るのでしょうか?
もちろん理由があるわけですが、次に登場する「ラスボス」にも関わってくるので、次回までに考えてみてください。
―――わかりました。
西岡:つまり結果的に必要のないものを苦労してつくることで、時間とお金を無駄にすることになる、ということです。
早い段階でその見切りをつけておくことが、最も重要なポイントだと思います。
ネーミングはブランディングの一要素にすぎません。その時間とお金をマーケティング戦略、デザインなど他の要素に費やすべきだと思います。
―――ネーミングを使い続ける為にも「準備運動」がここまで重要だとは思っていませんでした。
西岡:本当に見落とされがちですが非常に重要な点です。ぜひ覚えておいてください。
―――今回も大変参考になりました。さて次回は「最大のラスボス」をご紹介いただきます。
ブランディングニュースの定期購読
ブランディングニュースの定期購読(無料)も受け付けていますので是非ご利用ください。
購読をご希望の方は下のボタンからお申込みください。