2021年12月15日ブランディングネーミングのためのコミュニケーション術 ~商標担当者へ贈る言葉 (中編)~
前回はネーミングプロジェクト担当者の知られざるミッションと日々立ち向かっている壁についてご紹介しました。今回は、ネーミングプロジェクト担当者の立場をふまえ、具体的にコミュニケーションを取る際に意識すべきことを解説していただきます。
―――思っていた以上に、プロジェクト担当者も苦労されているんですね。
西岡 社内外でのネゴシエーションなど、実はけっこう多岐にわたる業務、そしてプロジェクトに関わるメンバーの為に活動していたことがお分かりいただけたのではないでしょうか?
―――そうですね、お互いに不満ばかりぶつけあっていても仕方ないですよね・・・
西岡 まさにその通りですね。同じ社内で同じプロジェクトに携わるメンバーは敵ではなく、味方です。綺麗ごとに聞こえるかもしれませんが必ずお互いに支えあい、協力しあう必要があります。
―――今回のお話が、そんな支えあい協力しあう為の強固な地盤につながる内容であることを期待します。
西岡 プレッシャーがかかりますが頑張ります。ではプロジェクト担当者の立場を踏まえて、商標担当者が意識すべきコミュニケーションについて解説していきます。
知財担当者が避けるべきコミュニケーション
―――早速ですが具体的なコミュニケーションについて教えてください。
西岡 今回は知財担当者の方が気を付けたほうがよいコミュニケーション事例を紹介していきます。プロジェクト担当者に対してこんなコミュニケーションをとっていませんか?ひょっとすると、あなたも怪獣になっているかもしれませんよ?
・怖くて近寄りがたい。「なんで早めに相談に来ない!?」
・細かく粗探し。「何できちんと準備していないの?」
・無関心キャラ。「それは私の仕事では無いので・・・」
―――なるほど、なかなか自分では気が付かないですが、ありがちなコミュニケーションなように思います。
西岡 まずは、「怖くて近寄りがたい。」。当然、皆さんお忙しいと思いますが、それがあまりにもオーラとして出てしまっていると、やっぱり担当者としては、いつ相談にいったらいいのかな?と思ってしまいますよね。
―――確かに、相談に行くことだけでもプレッシャーというか、緊張するというか・・・
西岡 そんな中でいざ相談しに行くと「なんで早めに相談に来ない?」と詰められる。まさに止めを刺された気分ですね。
―――心の中ではきっと「いやいや、声をかけにくそうな忙しい雰囲気が出ていますやん・・・」と思っていますね・・・
西岡 これも逆の立場で考えてみていただいてください。「相談しないといけないけれども、相談するのに勇気がいる」といった経験があるのではないでしょうか?なぜ相談することに躊躇するのか?忙しそうなオーラやプレッシャーを感じませんでしたか?今度はご自身がそんなオーラを出しているかもしれません、ということですね。
―――プロジェクト担当者に限らず仕事のコミュニケーションにも通ずるところですね。
西岡 続いては「細かく粗探し」。相談をしにいくと「何できちんと準備してないの?」。「○○って言ったよね?」「△△は重要だからって伝えたよね?」「なんで□□を伝えてこないの?」。もちろん指摘したい気持ちも十分理解できます。ただやはり、あまりに細かく指摘されすぎてしまうと、どうしてもちょっと担当者としては身構えてしまします。
―――ただ本当に準備不足であった場合は仕方がないと思うのですが?
西岡 もちろん、その通りです。「準備不足を指摘したらダメです。」と言うことでは無く「細かく粗探しをするように、指摘しすぎることは避けた方が良いですよ」と言うことです。
―――バランスが大切と言うことでしょうか?
西岡 その通りです。結果だけに対するダメ出しは案外簡単に誰でも出来ちゃうもんなんです。例えばプロ野球を観戦していてヒットが打てなかった選手に対して、「ヒットが打てなかった」という結果に対しては、素人でも「あれがダメ」「これがダメ」って言えますよね?
―――そうですね。私も実際に観戦しているときは言いますね。
西岡 そうですよね?ですので「あれもこれも、受け手が粗探しをされているように感じるくらいに細かく指摘をしすぎない」バランスを意識することは大切ですと言うことです。言われすぎると担当者も次から相談しにくくなりますよ、ということですね。
―――なるほど、わかりました。
西岡 次は「無関心キャラ」。商標調査をして結果があまり良くなかった。この次どうしたらいいのか相談に行ったところ「私の仕事は商標調査なので・・・」。
―――なるほど、かなりドライな所謂「塩対応」というやつですね。
西岡 その通りです。やっぱりこのように言われると、相談しに来ている担当者からすると、「いやいやいや、そしたら誰に相談したらいいですか?」となりますよね?そして、次からその商標担当者に積極的に相談しにいこう、とはならないですよね。
―――確かに、相談しにいったところで・・・ってなっちゃいますね。
西岡 その通りです。多くの商標担当者の方々は十分理解されていらっしゃると思いますが、商標手続きつまり調査や出願は目的ではなく、会社のブランドを作り育てる手段であり、その一任を負っている立場で相談に乗っていただければと思います。
―――なるほど。これからの対応の参考にさせていただきます。
西岡 そして最後にプロジェクト担当者に絶対に言ってはいけない禁断の一言、一撃必殺の禁句ワードがあります。それは「商標として安全だったら何でもいいんですけどね・・・」
―――実際、商標担当者の方がよく言いそうですし、ぶっちゃけ本音なのではと思いますが・・・?
西岡 もちろんある意味本質をついていらっしゃいます。しかし、これは実際にネーミング作成を行う私もそうですが、この一言をいわれるとめちゃくちゃ凹みます。
―――そうなんですか?意外です。特に西岡さんはメンタル強そうなので・・・。
西岡 もちろん商標担当者の本音の部分ではあります。一方で何とか「自分たちにとっての良いネーミングとは何か?」を考え続け苦労しながらネーミング案を絞り出してきた、プロジェクト担当者、制作サイドの立場からするとやはりこの一言を言われるととてもショックを受けます。「「安全やったら何でも良い」ってなんやねん。」って思います。
―――例えば一生懸命晩御飯を準備したけど、「晩御飯、別にお腹が満たされたら何でもいいけど・・・」と言われた時のような感覚に近いでしょうか?
西岡 身近なニュアンスとしては近いかもしれませんね。そんなフレーズを言われてしまうと、ネーミング制作サイドとしては次にプロジェクトがあったとしても、「どうせ商標として安全だったら何でもいいんでしょ?」と思ってしまいます。そう思うとやっぱり足が遠のきますよね。
―――たしかに、さっきの例えでも「お腹が満たされたら何でもいい」と言われたら、次から作るモチベーションにも影響しますよね・・・
西岡 その通りです。そして、繰り返しになりますが、そもそも商標担当者のミッションは調査や出願ではなく、良いブランドを育てるサポートです。「安全であればOK」という要素は本来このミッションに照らせば出てくるはずのない言葉です。
―――なるほど、ご指摘の通りかもしれません。盲点でした。
西岡 今回ご紹介したお話は、実際にどれも現場で本音からでてしまうことで何気なくついつい無意識にとっているコミュニケーションだと思います。しかし、それがプロジェクト担当者との距離を生むきっかけになっているかもしれません。長い目で見れば、その距離による不都合が自分の仕事に跳ね返ってくることを忘れてはいけません。
―――ありがとうございます。商標担当者がプロジェクト担当者からの相談を受ける立場とするならば、やはり相談をしやすい環境づくりは必要だということですね。
西岡 その通りです。確かにパーソナルな部分かもしれませんが、私は非常に大事な部分だと考えています。そして相談がしやすい環境になれば自然と早く情報が入ってくることにもつながり、商標担当者にとっても非常にメリットのあることだと思います。
―――ありがとうございます。やはりお互いに歩み寄りながらプロジェクトを進めるための環境を作り上げることは非常に重要ですね。大変参考になりました。では次回はネーミングのためのコミュニケーション術 ~商標担当者へ贈る言葉 (後編)~として、具体的に相談を受けた際のコミュニケーションについて考えていきたいと思います。
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