2021.09.28IPインド:インドにおける仲裁について
インド:インドにおける仲裁について
紛争解決の代替手段として広く好まれている仲裁は、商業的性質を持つ紛争の裁定に広く利用されています。
最近では、比較的迅速かつ柔軟な枠組みであることから、当事者間の紛争を解決するための手段として仲裁が重要視されるようになってきた。
本 FAQ では、インドにおける仲裁の基本的原則、関連手続き、法律について扱う。
1. 仲裁とは?裁判所/法廷への訴訟提起との違いは?
仲裁は、代替的紛争解決手段の一つの形態である。すなわち、当事者が裁判所/法廷外で紛争を解決することができる方法の一つで、これは、法的紛争を解決するための従来の方法である、裁判所/法廷への紛争提起に代わるものである。
仲裁は、以下の点で裁判所への訴訟提起と異なる。
仲裁は、紛争当事者の相互の合意の下、独立した第三者(=仲裁人または仲裁廷)に紛争内容を提出し、内容についての決定は非公開である。
この決定(=仲裁判断または裁定)は、紛争当事者の双方を拘束し、仲裁における文書や答弁等は非公開で仲裁人または仲裁廷に提出される。
従って、仲裁は機密 的性質を有する。
裁判所/法廷における訴訟では、紛争内容についての決定は、裁判官によって、公の場において下される。
訴訟時の文書や答弁等は、公の記録として残る。
仲裁は、終了までに長期間を有する可能性のある訴訟とは異なり、迅速な解決が可能である。
裁判所での訴訟手続きは法的に定められているが、仲裁においては、仲裁実施時に従うべき手続きについて、当事者間で相互同意の上定めることが可能である。
インドにおける仲裁は、1996 年仲裁調停法に準拠して行なわれる。
同法第1部では、国内および国際的商業仲裁 について規定されており、第2部では、外国裁定の執行について規定されている。
インドにおける仲裁は、当事者 の国籍に関係なく、仲裁調停法の第1部に従うことになっている。
2. アドホック仲裁と機関仲裁の違いは?
アドホック仲裁では、当事者間による相互の合意の上、仲裁実施のための手続きを決定している。
一方、機関仲裁では、仲裁実施のための手続きは仲裁機関によって決定される。
仲裁実施のためのルールや手順等の手続きは各仲裁 機関毎に異なる。
著名な仲裁機関としては、シンガポール国際仲裁センター(SIAC)、ロンドン国際仲裁裁判所(LCIA)、国際商工会 議所(ICC)等がある。
3. 国内仲裁および国際商事仲裁とは?
国内仲裁とは、インド国内において行われる仲裁であって、仲裁当事者が、インド国民、インドにおいて設立された法人、インド政府による中央管理・統制を受けている個人・団体、のいずれかである場合の仲裁のことである。
国際商事仲裁とは、法的関係から生じる紛争に関する仲裁であって、当事者の少なくとも一方が、(1)インド以外の 国の国民または居住者、(2)インド以外の国において設立された法人、(3)インド以外の国において中央管理・統制を 受けている個人・団体、(4)外国政府、のいずれかである場合の仲裁のことである。
4. 仲裁合意とは?
仲裁合意とは、既に発生している、もしくは発生する可能性のあるすべての紛争を解決するために行なわれる、仲裁 に関する当事者間の合意です。
有効な仲裁合意が存在する場合にのみ、当事者は仲裁を行うことができる。
仲裁合意は、契約書における仲裁条項の形もしくは別途契約の形で結ぶことが可能だが、書面でなければならない。
これはつまり、当事者による署名がなされた文書出なければならないが、合意の記録を提供する手紙、テレックス、電報またはテレコミュニケーション等の手段によることも可能である。
契約書において、仲裁条項を含む文書を参照する旨の記載があり、仲裁条項が契約の一部とされている場合には、当該契約書における参照は仲裁合意を形成することになる。
ただし、書面であることが必要である。
契約書における仲裁条項は、主契約が無効であっても存続する。
5. 紛争当事者間に有効な仲裁合意が存在するにも関わらず、一方の当事者が訴訟を提起した場合、どうなるか?
定義された法的関係に関して当事者間に有効な仲裁合意が存在するにも関わらず、一方の当事者が裁判所に訴訟を提起した場合、相対当事者は、当事者間には有効な仲裁合意が存在し、紛争は訴訟ではなく仲裁によって解決されるべきであることを裁判所に注意喚起の申請を行うことができる。
申請は、紛争内容に関する最初の陳述書を提出する前に、相対当事者が提出しなければならない。
このような状況下では、裁判所は、当事者間に有効な仲裁合意が存在しないことが判明しない限り、紛争を仲裁に付託する。
6. 暫定的救済はどのようにして得られるか?
法の下、暫定的救済は、仲裁廷設置前は裁判所によって、仲裁廷設立後は仲裁廷によって、付与される。
暫定的救済は、仲裁手続開始前、仲裁手続の係属中、仲裁判断後のいつでも、裁判所による付与が可能である。
(1)仲裁のため の未成年者または心神喪失者の後見人の選任、(2)(a)仲裁合意の目的となる商品の保全、暫定的保管または売却、 (b)仲裁における紛争額の確保、(c)仲裁における紛争対象財産の留置、保存または検査、(d)仮差止又は管財人の選任、(e)その他裁判所が正当かつ便宜的であると認める暫定的な保護措置、について裁判所に対して申請を行うこと が可能である。
仲裁廷は、その設置後は、仲裁手続中、上記事項関する暫定的救済の付与が可能だ。仲裁廷の決定により付与された暫定的救済は、裁判所の命令とみなされる。
仲裁廷の設置後は、裁判所は、仲裁廷が、当事者が求める暫定的救済を与える立場にないということについて納得しない限り、申請を受理しないことに注意する必要がある。
仲裁手続の開始前に、裁判所が暫定的な保護措置を認めるとする命令を下した場合、仲裁手続は、裁判所がそのよう な命令を下した日から90日以内、または裁判所が定める時間内に開始されることになる。
7. 法の下、管轄権を有する裁判所はどこですか?
国際商事仲裁以外の仲裁の場合には、高等裁判所の原審側を含む地区の主たる民事裁判所(該当する場合には、原審 側高等裁判所を含む)が、暫定的救済の付与等の仲裁における管轄権を有する。
当該主たる民事裁判所よりも劣る 等級の民事裁判所や小法廷は、含まれない。
国際商事仲裁の場合には、高等裁判所のみが管轄権を有する。
8. 仲裁人および仲裁廷とは?
仲裁に付託された紛争は、紛争の中立的当事者であり、仲裁人と呼ばれる1人以上の者により、仲裁判断がなされる。
このような仲裁人によって構成される合議体を総称して、仲裁廷と呼ぶ。
9. 仲裁人はどのようにして選任されるか?
仲裁人の数:
選任する仲裁人の数は、当事者が自由に定めることが可能である。
ただし、仲裁人の数は、奇数でなければならない。
当事者間の仲裁合意において、各当事者がそれぞれ1名ずつ仲裁人を選任することが定められている場合には、第3の仲裁人は、選任された2名の仲裁人が共同で選任することになる。
また、当事者が仲裁人の数を定めない場合、 仲裁廷は単独の仲裁人で構成されることになる。
仲裁人の選任:
当事者が別段の合意をしない限り、国籍を問わず、誰でも仲裁人となることができる。
当事者は、仲裁人を選任するための手続きについて、自由に定めることが可能である。
仲裁人は、独立且つ公平な立場でなければならないが、 必ずしも法的関係のバックグラウンドを有している必要はない。
国内仲裁における仲裁人の選任において、当事者が仲裁人の独立性や公平性に疑問を有する場合、または仲裁人が当事者間で定めた資格を有していない場合には、 異議を申し立てることができる。
したがって、仲裁人は、当事者が相互に選任するか、もしくは裁判所が選任することになる。
10. 裁判所が仲裁人/仲裁廷を選任するのはどのような場合か?
仲裁合意において、仲裁人の選任手続きが規定されておらず、当事者が仲裁人の選任について相互に合意できない場合、または当事者が他方の当事者から依頼を受けてから30日以内に仲裁人を選任しない場合、または選任された2人の仲裁人が、選任日から30日以内に、第3の仲裁人についての共同での選任ができない場合、裁判所が仲裁人を 選任することができる。
国内仲裁においては、仲裁人選任の管轄権は各高等裁判所にあるのに対して、国際商事仲裁においては、仲裁人選任の管轄権はインド最高裁判所にある。
11. 仲裁人の選任前に求められる必須開示事項とは?
仲裁人として選任される可能性のある全ての者は、(1) 直接または間接を問わず、当事者との過去または現在における関係性、利害関係の存在、紛争対象に関連する金銭的、事業的、専門的またはその他の種類を問わず、その独立性 または公平性に正当な疑念を生じさせるおそれのある事項、(2) 仲 裁に十分な時間を割くことができる能力に影響を与える可能性があるもの、特に法に基づいて定められた期間内に仲裁を完了させる能 力に影響を与える可能性があるもの、を書面で開示しなければならない。
12. 仲裁人の選任について異議を唱えることができるのはどのような場合か?
仲裁人の選任に異議を唱えることができるのは、次の2つの理由に限られる。(1)仲裁人の独立性又は公平性について正当な疑義を生じさせる事情が存在する場合、(2)仲裁人が、当事者が合意した資格を有していない場合。
異議申立は、仲裁人の選任後にのみ行うことができ、次の2つのいずれかの日から15日以内に、当事者が異議申立の 理由を記載した書面/申請書を仲裁廷に送付することにより行うことができる。
(1) 当事者が仲裁廷の構成を認識 した時点、(2)当事者が異議申立の理由を認識した時点。仲裁廷は、当該仲裁人が退席しない限り、又は相手方が異議申立に同意しない限り、当該異議申立について裁定することができる。
異議申立が成立しない場合、仲裁廷は仲裁手続を継続し、仲裁判断を下さなければならない。
仲裁判断については、裁判所において異議申立を行う ことが可能である。
13. 仲裁人への委任が終了するのはどのような場合か?
仲裁人への委任は、(1)事実上又は法律上の理由によりその機能を果たすことができない場合またはその他の理由に より不当な遅滞なく行動しない場合、(2)その職を辞する場合または当事者がその委任の終了に同意した場合、に終了させることができ、他の仲裁人に代えることができる。
これらついて論争がある場合、別段の合意をしない限り、 仲裁人の委任終了の決定について、当事者は裁判所への申請を行うことが可能である。
14. 紛争の裁定中に仲裁廷が遵守すべき手続や規則は?
仲裁合意の当事者は、仲裁手続実施時に仲裁廷が従うべき事項について、自由に合意することができる。
当事者が手続について合意していない場合には、仲裁廷は適切と考えられる方法で手続を実施する権限を有する。
ただし、 仲裁手続が仲裁機関によって実施される場合には、仲裁機関の規則が適用される。
15. 独自の裁判管轄での裁定は可能か?
仲裁廷は、自らの管轄権を裁定する権限を有する。
(1)契約の一部を形成する仲裁条項は、他の条項とは独立した 契約として扱われるものとし、(2)契約が無効であるという仲裁廷の決定は、それ自体が仲裁条項を無効にするものではない。
仲裁廷が管轄権を有しない旨の申立は、抗弁書の提出前に主張する必要がある。
さらに、仲裁廷がその権限の範囲を超えている旨の申立は、その権限の範囲を超えているとする問題が仲裁手続中に提起され次第、直ちに主張しなければならない。
16. 仲裁手続が行なわれる場所はどこか?
当事者は、仲裁地について、自由に合意することができる。
ただし、当事者間での合意がない場合には、仲裁地は、当事者の便宜を含む事案の状況を考慮して、仲裁廷が決定するものとする。
17. 仲裁における「venue」と「seat」の違いは?
「venue」とは、仲裁が行われる地理的な場所を。
「seat」とは、仲裁について管轄権を有する裁判所が所在する場所を意味する。
18. 仲裁手続を実施する際の言語はどうなるか?
当事者は、仲裁手続で使用される言語について自由に合意することができる。ただし、当事者間での合意がない場合には仲裁廷が決定するものとする。
仲裁廷は、当事者が合意した言語または仲裁廷が決定した言語への翻訳を伴う証拠書類の提出を命ずることが可能である。
19. 仲裁手続が開始されるのはいつか?
紛争に関する仲裁手続は、紛争の仲裁への付託を求める申立書を被申立人が受領した日に開始される。
これは「仲裁通知」と呼ばれる。
当事者が裁判所から暫定的救済を受けている場合、暫定的救済の付与日から90日以 内、または裁判所が定める時間内に仲裁を開始しなければならない。
20. 仲裁において、各当事者が弁論を行うための機会は与えられるか?
仲裁においては、各当事者は平等に扱われると共に、十分な弁論の機会が与えられなければならない。
21. 仲裁廷設置後の具体的な流れは?
仲裁廷の設置後、仲裁廷は、手続上の指示を出すため、当事者との間で会議を行う。
当該会議において、当事者及と仲裁廷 は、仲裁が実施される会場、適用される手続等について決定することができる。
また、請求陳述書、抗弁陳述書などの答弁書提出のためのタイムラインについても、暫定的申請も含めて会議において議論される。
予備会議においては、証拠開示、文書の作成及び閲覧、決定のための論点の設定、証拠の宣誓供述書の提出、証人の反対尋問のためのスケジュールに関する指示等が出される。
仲裁廷は、当事者の合意がない限り、証拠提示若しくは口頭弁論のために口頭での審問を行うか、文書その他の資料 に基づいて審理を行うかを決定しなければならない。
仲裁廷は、当事者の合意がない限り、当事者の要請に基づいて、適切な段階で審理を行わなければならない。
22. 申立人(仲裁を提起する当事者)が、特段の事業なく、定められた期限内に請求陳述書の提出を行なわなかった場合や定められた特定の事項の記載がない場合、どうなるか?
申立人が期限内に請求陳述書の提出を行なわなかった場合や特定事項の記載がない場合、仲裁廷は手続を終了する。
23. 被申立人が、期限内に抗弁書の提出を行なわなかった場合や定められた特定の事項の記載がない場合、どうなるか?
被申立人が期限内に抗弁書の提出を行なわなかった場合や特定事項の記載がない場合であっても、仲裁廷は不履行それ自体が申立人の主張を認めたものとしては取り扱わず、手続きを継続する必要がある。
24. 仲裁手続中の、当事者の口頭審問への欠席、書面証拠の未提出が起きた場合、どうなるか?
当事者の口頭審問への欠席、書面証拠未提出が起きた場合であっても、仲裁廷は手続きを継続し、それ以前の証拠に基づいて仲裁判断を下すことができる。
25. 仲裁判断とは?
仲裁判断とは、仲裁手続に基づき、仲裁廷によって行われた裁定のことである。
裁判所によって下される最終判決に似たイメージである。
26. 仲裁判断の形式および内容は?
仲裁判断は書面にて行われ、仲裁廷構成者の過半数の署名が必要。
署名を省略した場合には、その理由を記載しなければならない。
仲裁判断は以下の場合を除き、その根拠となる理由を述べなければならない。
当事者が理由を記載しないことに合意した場合
当事者間の紛争解決に基づいて裁定が下された場合
仲裁判断には、仲裁の日付及び場所を記載しなければならず、裁定は当該場所においてなされたものとみなされる。
仲裁判断がなされた後、署名された写しを各当事者に交付する必要がある。
仲裁廷は、最終的に仲裁判断を下す可能性のある事項について、仲裁手続中いつでも暫定的な判断を下す権限を与えられている。
仲裁判断が金銭の支払いのためのものである場合、仲裁廷が合理的であると判断した利率で、金額に利息を含めることが可能である。
27. 仲裁手続中に当事者間で紛争を解決することはできるのか?
仲裁手続中、当事者間で紛争を解決することは可能である。
このような場合には、仲裁廷は仲裁手続を終了しなければならない。
当事者が要求し、仲裁廷が異議を唱えない場合には、合意された条件に基づく和解内容について、仲裁判断の形式で記録しなければならない。
合意条件に基づく当該仲裁判断も、本質的に他の仲裁判断と同じ地位および効力を有する。
28. 仲裁判断が成立しなければならない期間は?
国際商事仲裁以外の裁定は、弁論が完了した日から12ヶ月以内に仲裁廷によって行われなければならない。
弁論は、仲裁廷の設置から6ヶ月以内に申立/完了する必要がある。
当事者間の同意により、6ヶ月を超えない範囲で指定された期間を延長することは可能。
国際商事仲裁に関しては、仲裁廷は弁論完了日から少なくとも12ヶ月以内に、できるだけ迅速に問題を処理するように努めなければならないとされている。
29. 仲裁手続が終了するのはいつ?
仲裁手続は、最終的な仲裁判断または下記いずれかの仲裁廷の命令によって終了することになる。
(1)被申立人が裁定に異議を唱え、仲裁廷が紛争の最終的解決のために正当な利益を認める場合を除いて、申立人がその申立を取り下げた場合
(2)当事者が手続の終了に合意した場合
(3)その他の理由により手続の継続が不必要又は不可能になったと仲裁廷が認めた場合
30. 仲裁手続終了後、仲裁廷の権限はどうなるか?
仲裁廷の権限は、仲裁手続の終了と同時に消滅する。
31. 仲裁判断を無効とすることはできるのか?その場合の根拠は?
以下の場合、仲裁判断を無効とすることが可能である。
仲裁合意の当事者に何らかの欠格事項があった場合
仲裁合意が法的に有効でない場合
仲裁人の選任若しくは仲裁手続の適切な通知がなされなかった場合または当事者に弁論の機会が与えられなかった場合
仲裁判断が仲裁に付託された条件に該当しない紛争を扱っている場合または仲裁に付託された条件の範囲を超えた事項に関する決定を含んでいる場合
仲裁廷の構成または仲裁手続が当事者の合意に従っていなかった場合
施行されている法律の下では、仲裁による紛争解決ができない場合
仲裁判断がインドの公共政策に抵触している場合
仲裁判断を無効にするための申請は、仲裁判断が下された日から3ヶ月以内に、当事者が行われなければならない。
32. 仲裁判断が最終的に確定するのはいつ?
仲裁判断は、当事者およびそれに基づく請求者に対してそれぞれ最終的かつ拘束力のあるものとなる。
仲裁判断は、裁定について異議申立がなかった場合には、120日終了時に最終的なものとなる。
異議申立があった場合であっても、異議申立人が管轄裁判所によって裁定を無効にすることができなかった場合、最終的なものとなる。
33. 仲裁合意における当事者が死亡した場合、どうなるか?
仲裁合意は、いずれかの当事者の死亡によっては解除されないものとし、そのような場合には、故人の法定代理人によって、または故人の法定代理人に対して執行可能でなければならない。
仲裁人の委任についても、任命された当事者の死亡によっては終了しない。
34. 控訴は可能か?
控訴は、以下の場合について可能。
裁判所:
当事者の仲裁への付託を拒否する命令
当事者が求める暫定的救済を認めるまたは拒否する命令
仲裁判断の無効または無効を拒否する命令
仲裁廷:
管轄権に対する異議申立ての受諾
当事者が求める暫定措置の付与または拒否
35. 仲裁にかかる費用の目安は?
アドホック仲裁に関しては、法は仲裁廷において発生費用およびスケジュールを明示しているが、これに関わらず、当事者は費用とスケジュールについて合意することができる。
機関仲裁に関しては、仲裁費用は機関規則にて定められている。
36. 法の下認められている外国裁定は?
法は、(1)ニューヨーク条約に基づく外国裁定、(2)ジュネーブ条約に基づく外国裁定、の2つを認めている。
37. ニューヨーク条約に基づく外国裁定とは?
ニューヨーク条約に基づく外国裁定とは、以下の要素を満たす仲裁裁定をいう。
インド国内で有効な法律の下、商業的とみなされる法的関係から生じている1960年10月11日以降になされたものであるニューヨーク条約が適用される仲裁のための書面による合意に基づくものである。
中央政府が通告した互恵地域で行なわなければならない。
38. ジュネーブ条約に基づく外国裁定とは?
ジュネーブ条約に基づく外国裁定とは、以下の要素を満たす仲裁裁定をいう。
インド国内で有効な法律の下、商業的とみなされる法的関係から生じている1924年7月28日以降になされたものであるジュネーブ条約が適用される仲裁のための書面による合意に基づくものである。
中央政府が通告した互恵地域で行われなければならない。
39. ニューヨーク条約に基づく外国裁定は、インドではどのように執行されているか?
仲裁調停法第2部に基づき、外国裁定を申請する当事者は、裁定の原本または正当に認証された写し、(2)仲裁合意の原本または正当に認証された写し、および裁定が外国裁定であることを証明する証拠を、裁判所に提出しなければならない。
相手方当事者は、適用法上無効となる仲裁合意や、仲裁手続きに関する通知の欠如、仲裁機関の構成や仲裁手続きに関する適用法の非遵守等、一定の理由を下に、対象となる裁定について異議を申し立てることができる。
また、紛争の主題が、インド法の下仲裁できない、または仲裁判断の執行がインドの公共政策に反するという理由で、仲裁判断の執行についての異議申し立ても可能。
裁判所が、外国裁定が執行可能であると判断した場合、裁定は裁判所の判決と同等にみなされ、インドの裁判所が下した判決であるかのように執行される。
40. ジュネーブ条約に基づく外国裁定は、インドではどのように執行されているか?
仲裁調停第2部に基づき、外国裁定を申請する当事者は、(1)裁定の原本または正当に認証された写し、(2)裁定が確定したことを証明する証拠、対象となる裁定が適用法に従って有効な仲裁手続の結果としてなされたこと、および裁定が仲裁手続を規定する法律に準拠してなされたことを証明するための証拠を、裁判所に提出しなければならない。
また、当事者は、裁定の主題がインド法の下仲裁可能であること、裁定が最終的に確定していること、および裁定の執行がインドの公共政策や法律に反していないことを証明する必要がある。
裁判所は、裁定が行われた国において裁定が取り消されていると判断した場合、相手方当事者に弁論の機会が与えられていなかった、または適切な代理がなされていなかった場合、裁定が仲裁への提出範囲を超えた問題を扱っている、等と判断した場合には、インドでの執行を拒否することができる。
外国裁定が執行可能であると裁判所が判断した場合、裁定は裁判所の判決と同等にみなされる。
ただし、関連当局に、裁定を無効にする旨の申請がなされた場合、裁判所は、それが適切と考えられる場合には、裁定執行に関する決定を延期し、相手方当事者に適切な担保を提供することを命じることができる。
外国裁定の執行の申請は、高等裁判所で行われる。
[出典:Acuity Law]