2025.05.13IPイラク:NICE国際分類第11版の採用による影響と変更点
イラク:NICE国際分類第11版の採用による影響と変更点
イラク商標庁は、NICE国際分類第11版を採用することにより、商標分類制度の大幅な見直しを実施した。
本変更は2025年1月より施行され、これまで使用されていた国内サブクラス制度からの脱却を意味し、イラクの商標制度を国際基準に準拠させるものである。
背景:サブクラス制度から国際基準への転換
従来、イラク商標庁では商品および役務を国内のサブクラスに分類する独自制度を運用していたが、これは長らくNICE国際分類と乖離していた。
NICE分類は、国際的に広く採用されている体系的な分類制度であり、商標登録手続の円滑化と調和を促進することを目的としている。
今回の第11版への移行は、イラクが知的財産分野における国際標準を採用する姿勢を明確に示すものである。
ただし、本移行に伴い、イラクの商標登録手続には複数の実務的・定義的な変更が生じており、出願から登録後に至る各段階に影響を及ぼしている。
出願前手続き
イラク商標庁は、商標の登録可能性を確認するために、出願前調査を義務付けている。
この調査は、事実上の実体審査と位置づけられており、その結果が出願の可否を左右する。
調査結果は多くの場合「YES」または「NO」の形式で通知され、詳細な理由は添付されない。
出願人は、調査後30日以内(※将来的に90日に変更される可能性あり)に出願書類を提出しなければならず、期限を過ぎた場合、出願は放棄されたものと見なされる場合がある。
商品および役務の分類
すべての新規商標出願は、NICE国際分類第11版に基づいて提出する必要がある。
出願中の出願人には、以下の2つの選択肢が提示される。
1つ目は「出願後の再分類」である。
この方法では、出願手続を従来のサブクラス制度に基づいて進め、異議申立期間の終了後に第11版に準拠した商品・役務の再分類を行い、その結果に基づいて登録証が発行される。
多数の商品や役務を含む出願に適した方式である。
2つ目は「出願手続き中の再分類」である。
出願人は出願手続を行う過程で、第11版に準拠した商品・役務を選択し、出願中商標の再分類を行うことができる。
この方法を選択した場合、商標庁は選択された項目について、必要に応じて承認または修正を行う裁量を有する。
商標出願人への影響
NICE国際分類第11版への移行は、多くの商標出願人にとって重要な意味を持つものである。
出願人は、第11版の複雑な構造を正確に理解し、商品および役務の適切な分類を確保する必要がある。
一方、既存の商標権者においても、保有する登録商標を第11版に整合させるため、再分類の手続きを行う必要がある。
結論
イラク商標庁によるNICE国際分類第11版の採用は、同国の商標制度を国際的な標準に整合させるための重要な一歩である。
この移行により、国際貿易の円滑化や制度的な調和が促進されることが期待される。
一方で、出願中の案件を抱える出願人には短期的な対応負担が生じるため、移行の円滑化に向けては、実務運用の明確化と周知徹底が不可欠である。
[出典:JAH Intellectual Property]