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商標・著作権・特許・意匠・ドメインネームなど、知的財産権全般にわたる世界中の出来事を集約。
注目すべき主なニュースをわかりやすい記事にまとめ、リリースいたします。

2016.01.26IPARIPO:バンジュール議定書改正及びサントメ・プリンシペ加盟 他


ARIPO:バンジュール議定書改正及びサントメ・プリンシペ加盟

アフリカ広域工業所有権機関(ARIPO)の範囲内での標章の保護に関するバンジュール議定書が改正され、2016年01月から発効された。
主な改正点は以下の通り:

  • バンジュール議定書には商標に関する定義はなかったが、以下の新定義が導入された。
    「A Mark includes a sign, name, word, device brand, heading, level signature, letter, numeral or a combination thereof」
    この定義を見る限り、新しい商標は含まれていない。
  • 指定商品に関する字数制限設定:1区分につき上限を50単語とし、1単語追加につき5USDの追加チャージを規定する。
  • 指定国のARIPOへの対応期限が2か月となった。
  • 代理変更、期限延長、オフィシャルサーチについて50USDのオフィシャルフィーが科せられる。

更に、サントメ・プリンシペ民主共和国は2014年09月19日付でARIPOへ加盟したが、同国において2016年02月27日付でバンジュール議定書が発効され、ARIPO経由での商標出願が可能となる。同国の加盟により、バンジュール議定書の締結国は10か国(ボツワナ、レソト、マラウィ、ナミビア、リベリア、スワジランド、ウガンダ、ジンバブエ、サントメ・プリンシペ)となった。


[出典:JAH&Co. IP]


アルゼンチン:異議申立手続の変更

アルゼンチンでは2015年12月23日付で法律第27.222号が公布され、異議申立制度が変更された。

アルゼンチンはその特異な「異議申立制度」で知られている。当該制度において、出願人が異議申立通知を受けてから1年以内に当事者間で和解しなければ異議申立は不当であるとして訴訟を提起しなければならない。両当事者はこの1年の間に指定商品の削除や商標の使用制限等々の条件を出して和解するよう努力する。和解不調・不能の場合、異議申立は不当であるとして訴訟を提起しなければ出願は放棄されたものと看做される。しかし訴訟提起3か月前に調停(mediation)を経ることが義務付けられる。この調停では、新たな証拠提出をして非類似を主張することはできず、調停委員も両者の主張を聞きアドバイスをするだけで、決定権はない。

当事者間に付与された和解期間は調停を含めても1年であるが、実際にプラクティスにおいては調停期間が中断され、和解期間が2年に延長される場合もあった。このように権利不明な状態が継続されることにより、例えば商標出願を検討する第三者が、類似の被異議申立商標の状況が分からないまま出願しなければならない等、不利な影響を与えていた。

法律第27.222号はこのような中断を排除し、和解期間が1年であることを明確にしたものであり、2016年03月22日から施行される。
当日以降に和解期限を迎える当事者は、今後付与された1年の間に和解交渉と調停を終え、必要な場合は提訴しなければならない。当日以前、例えば03月21日に期限を迎える当事者は調停の開始によって和解期間を延長できる。


[出典:Kors Noviks]


ポーランド:異議申立手続の変更

ポーランドでは2016年04月15日より異議申立手続が以下のように変更される予定である。

  • 特許庁は新規出願の受理後2か月以内にオンラインデータベースに公開する。これは公告とは看做されない。
  • 公開後何人も悪意を含む絶対的事由に基づく情報提供を提出できる。
  • 情報提供は当局を拘束するものではないが、最終決定には影響を与える。
  • 出願は絶対的事由がなかった場合のみ公告となる。当局は拒絶理由となる絶対的事由があると判断した場合、その旨を出願人に通知し、同人はそれに対応できる。
  • 異議申立は公告日から3か月以内に請求しなければならない。
  • 異議申立は相対的事由のみに基づいて請求され、申立人は自身の先行商標と比較しなければならない。
  • 当局より出願人に異議申立が通知されると2か月のクーリングオフ期間が開始し、1回のみ延長可能である。延長可能な期間は4か月で、当該期間内に合意に達しなかった場合、異議申立が開始される。
  • 当事者双方は当局が定めた期間内に書面・証拠等を提出しなければならない。異議申立に対して、出願人は異議申立根拠となる商標の不使用を主張できる。
  • 異議申立は原則書面で審査されるが、上訴された場合、事情によってはヒアリングが開催される。第二審は3名の審判官からなるパネルで審議される。

[出典:Polservice]


ラオス:委任状に関する新要件

2016年1月よりラオスに委任状を提出する場合、ラオ語と英語の2か国で記載され、公証を受けた委任状を提出しなければならなくなった。
一度提出した委任状は署名日より5年間有効となる。


[出典:Ageless IP Attorneys & Consultants]


フィンランド、ラトビア:オフィシャルフィー変更

フィンランドとラトビアでは2016年01月01日よりオフィシャルフィーが変更された。


[出典:Papula-Nevinpat]


ドイツ:『アンネの日記』をめぐる著作権保護期間紛争

毎年01月01日を過ぎると著作権の保護期間が切れる作家の作品がパブリックドメインとなり一般公開される。日本でも2016年1月1日をもって江戸川乱歩、谷崎潤一郎らの作品がパブリックドメインとなったが、ドイツにおいて著作権保護期間である70年を経過し、今年から公開可能になったとされる『アンネの日記』について、紛争が発生している。公開されたのは1947年に出版された初版本と同じオランダ語版で、フランスの研究者等によってインターネット上に公開された。

『アンネの日記』はアンネ・フランクとその家族がアムステルダムの隠れ家で生活していた1942年06月12日から1944年08月01日までの間に書かれている。その後アンネを含む隠れ家の住人8人全員は強制収容所に送られ、アンネ自身は1945年3月頃死亡したとされている。8人の中で唯一生き延びた父のオットー・フランクは1947年にオランダ語の『アンネの日記』を出版、各国語に翻訳され世界的なベストセラーとなった。オットーはその後1967年にアンネ・フランク財団(Anne Frank Foundation)を設立し、同財団が『アンネの日記』の著作権を保有する。

財団は著者であるアンネ・フランクが死去した1945年からは確かに70年が経過したが、日記を編纂したのは父親であり、彼が死去した1980年を基準に計算すると、まだ保護期間は継続していると主張している。更に財団は、日記はアンネの死後に出版されたので、著作権は公表時から50年に延長されるとも考えており、例えばオランダ戦争資料研究所によって1986年に出版された版は、2037年まで著作権が有効であると主張している。

とはいえ日記の著者はアンネ・フランクとなっている以上、保護期間切れは明らかであるとして、財団の主張を聞き入れずにインターネット上で公開されるケースも相次いでいる。
ちなみに財団のサイトでは、これら保護期間について「各国の著作権法に応じて判断されるべき」とのみ記している。


[出典:The Guardian]


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