2021.04.20IPアメリカ:2021年末に商標法改正
アメリカ:2021年末に商標法改正
昨年末にアメリカ議会は、商標法の改正を含む商標近代化法(Trademark Modernization Act)を可決し、2021年12月21日に施行となる。
実施に関する詳細はまだ決まっていないが、法案には商標法に関する次の改正点が含まれている。
1.応答期間の短縮
2.情報提供制度(Letters of Protest)の法定化
3.査定系取消手続(Ex Parte Expungement)の導入
4.差止請求権の強化
■応答期間の短縮について
審査段階で拒絶理由が通知された場合、現状では6ヶ月の応答期間が付与され、延長は出来ない。
改正法では応答期間が60日~6ヶ月となる。
手数料を支払って期限を延長する事もできるようになるが、応答期間は6ヶ月を超えないものとなる。
■情報提供制度(Letters of Protest)の法定化
出願審査中、商標が登録されるべきでないと考える第三者は、米国特許商標庁長官宛にその証拠を提出できるようになる。
長官は2ヵ月以内にその証拠を審査の記録として残すかどうかを決定し、同制度の金額を設定する権限を有する。
長官の判断は最終決定となり、再審は出来ない。同決定は、何れかの当事者が他の手続において争う事案における証拠には影響しない。
■査定系取消手続(Ex Parte Expungement)の導入
米国特許庁は登録された商標が指定する商品/役務に関し、商取引において使用されているかどうかを確実に登録簿に反映したいと望んでおり、監査プログラムなどの規則を実施する事で対処している。
今回新たに査定系取消手続(Ex Parte Expungement)が導入され、誰でも証拠を示した上で、登録商標の取消しが請求できるようになる。
現状では、アメリカにおける取消請求は取消理由に基づき米国特許商標庁の審判部(TTAB)で争い、その手続きは民事訴訟手続に準拠しており、単に使用していない商品/役務を削除する目的には対応していない。
改正法により、今年の終わりまでには、誰もが取引において商標が使用されていない事を理由に、いくつかの商品/役務もしくは全てを対象に商標の取消申請が出来るようになり、登録日から3年経過後10年前であればいつでも請求できるようになる。
アメリカを指定する国際登録や本国登録を基礎とする商標も対象となる。
■差止請求権の強化
商標権侵害訴訟において侵害行為が認定され原告が差止命令を請求する場合に、原告に回復不能な損害が生じたとする反証を許す推定(rebuttable presumption)が認められることになった。
真の商標権利者や商品/役務に関する需要者を正しく保護する目的である。
[出典:Brooks Kushman P.C.]