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2021.06.08IPオーストラリア:景気に逆行する商標出願動向


オーストラリア:景気に逆行する商標出願動向

コロナウィルスによるパンデミックの経済的影響により、2020年6月の四半期は、オーストラリアのGDPが歴史上最も急激に落ち込んだが、逆に商標出願数は前年同時期に比べて8%増加した。
2021年4月29日に発表されたオーストラリア知的財産レポート2021によれば、特許(2%減少)、商標(上記のように8%増加)、意匠(4%減少)、育種者権(12%増加)となっている。
ここでは商標の出願/登録と、商標と輸出業者の行動について焦点を当てた。

・商標出願登録の増加
GDPは1年間で1.1%減少したが、2020年度の商標出願件数は81,702件で前年より8%増加した。
商標登録も2020年度には64,068件と前年より10%増加している。
出願件数の増加は、知的財産戦略の重要性に対する認識の高まりを示している。
個人や企業は、自社のブランドの価値を理解し、結果として権利保護の重要性が高まった。
これは、わずか12年前のリーマンショックの際に、新規の商標登録出願が大幅に減少したこととは大きく異なる。

・出願人所在
データによると、国内出願人は国外出願人の約2倍であり、ノーザンテリトリー(-6%)以外の全土からの商標出願が増加した。
国外出願人は、件数最多の米国から、中国、英国、ドイツ、日本と続く。日本以外の新規出願数は、2020年は減少している。

・商標と輸出業者
オーストラリア知財庁は、今年のレポートに新章を追加し、国外への商標出願(海外で商標保護を求めるオーストラリア人)と輸出業者の行動との関係について興味深い分析を提供している。
これよると、商標の権利保護は、輸出事業の重要な予測因子である。
商標を保護する輸出業者は、オーストラリアドルの価値が上昇し、関税が引き下げられ、貿易障壁が緩和されたときに恩恵を受ける。
レポートで言及されている1つのシナリオは、確立された商標ポートフォリオを持つ企業は、オーストラリアドルが現地通貨に比べて高い時期に、マーケティングと広告のコストを削減できるというものである。
輸出業者にとって外国法域における商標の所有は、為替レートの変動や関税の影響の変化に対応して、資産を活用し、行動を修正し、回復の機会を確保する。
オーストラリア知財庁は、今年後半にこのトピックに関する完全なレポートを発行する予定であり、この魅力的なミクロ経済的相互作用に関するさらなる洞察を提供するはずである。

・他国の状況
オーストラリアだけでなく、他の国でも商標登録出願の着実な増加が見られる。
例えば、米国と英国では、2020年の間に商標登録出願数が増加した。
これは、パンデミックが経済に与えた壊滅的な影響や、政治的・社会的な不安が消費者心理に打撃を与えていることを考えると、世界的に見ても素晴らしいことである。
中国は、2020年を通して商標出願が驚異的に増加し、900万件に近い出願が行われるなど、またしてもその強さを証明した。
前述の輸出者情報と合わせて考えると、ビジネス展開の可能性がわずかであっても、中国で商標出願する必要性がかつてなく重要になっている。

・本レポートから得られる主なメッセージ
レポートは、企業がブランドを創造し、想像し、投資し続けていることを示している。ブランドの価値は今も昔も変わらない。
このレポートは、ビジネスの世界が次の機会をどのように見ているのかを垣間見ることができ、商標やブランド保護の重要性に満足している人々へのタイムリーなリマインダーでもある。
国内外の商標出願の増加は、企業が商標を保護するだけでなく、知的財産全般に対してますます洗練されたアプローチを取っているという仮説を裏付ける。
これにより、企業は成長と成功への道を整備している。
統計は、ブランドアイデンティティがビジネスにとって最も価値のある資産の1つであることを裏付けている。
景気後退期にオーストラリアの商標登録出願が(主に国内の出願人によって)増加したことは心強く、これはリーマンショック以降にオーストラリアの企業が知的財産に精通したことを示している。


[出典:LEXOLOGY(FB Rice Patent & Trade Mark Attorneys)]


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