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2022.03.23IP中国:同じ意味の中国語商標と外国語商標との類似性に関する判断標準について


中国:同じ意味の中国語商標と外国語商標との類似性に関する判断標準について

最近公布された「商標審査審理指南」下編第5章において、「商標の中国語文字と外国語文字の主な意味が同じ又はほぼ同じで、関連公衆に商品又は役務の出所について誤認を生じさせやすい場合、類似商標に該当する」と規定された。

「商標審査審理指南」において挙げられた先行例は以下:
 
上記の先行例では、外国語商標は全て英語であるが、英語以外の言語の場合はどうなるのか。
例えば、中国語「玫瑰」は英語「ROSE」と類似商標に該当するが、日本語「バラ」、韓国語「장미꽃」とはどうか。

異なる言語の商標同士が類似するとの判断には、当該言語の意味を理解できることが前提にある。
ここでは、日本語と韓国語を理解するような特定の団体ではなく、一般公衆の理解力を考慮すべきである。
即ち、中国語商標と外国語商標が類似するかを判断する際、まず関連公衆のその外国語への認知度を考慮すべきである。

例えば、第11041964号「小黑裙」の商標拒絶査定不服審決取消訴訟案件において、北京知識産権法院は、引用商標2(第G1116358号)がフランス語「LA PETITE ROBE NOIRE」からなり、当該フランス語が中国語において「小黑裙」に訳されることができるが、中国の一般消費者はフランス語をよく理解せず、絶対多数の消費者は引用商標2のフランス語に対応する中国語の意味を知らないため、関連公衆に誤認を生じさせない。
よって、類似商標に該当しない、と指摘した。

ここで疑問となるのが、「ROSE」は「玫瑰」(バラ)を意味することがよく知られているが、調べてみると「玫瑰」(バラ)以外に他の意味も有する。
例えば、建築工程学において「ROSE」は「圆花窗」(花窓)を意味し、数学においては「玫瑰线」(バラ曲線)を意味する。
「ROSE」と「圆花窗」(花窓)、「玫瑰线」(バラ曲線)とは類似するか。
答えは、類似しない、である。理由は、中国語商標と外国語商標とが類似すると判断されるのは、当該外国語の意味が関連公衆によく知られ、且つ、その中国語意味と対応関係になるという条件を満たす必要があるからだ。
では、どのような場合、対応関係になるのか。
筆者は以下のように考える。

1.言葉自体の固有の意味又は主な意味が一対一の対応関係になる場合:
これは理解が容易であろう。上記先行例の「老板」と「BOSS」、「鹦鹉」と「Parrot」、及び第34803668号「RENAISSANCE」の商標拒絶査定不服審判訴訟案件が一例である。
当該案件において、国家知識産権局は中国語商標「文艺复兴」(文芸復興)を引用し、請求商標「RENAISSANCE」の出願登録を拒絶したが、請求人はその決定に不服があり、訴訟段階に入った。
北京市高級人民法院は、判決において、請求商標が通常「文艺复兴」(文芸復興)に訳され、引用商標1と対応関係になるため、両商標の同一又は類似役務における使用は、関連公衆に対し役務の出所について誤認を生じさせやすく、同一又は類似役務における類似商標に該当する、と指摘した。

即ち、言葉自体の固有の意味又は主な意味が一対一又は高い程度の対応関係になる場合、消費者に誤認を生じさせやすく、類似に該当する。

2.一つの言葉に複数の意味がある場合:
上記にて意味が一対一の場合について検討したが、もしもある言葉が複数の意味を有し、且つ、いずれの意味もよく知られる場合は、どうなるか。
筆者は類似すると判断されるべきではないと考える。
中国語商標がその意味と対応する外国語商標と類似と判断される理由は、その意味が類似し、誤認を生じさせやすいからである。
もしもある言葉に複数の意味がある場合、全ての意味に対応する外国語について保護を与えると、その保護範囲が広すぎると思われる。

3.言葉自体は固有の組み合わせではなく、双方が直訳、音訳などの関係であり、一定の関連性を有する上で、使用を経てその関連性を強化した場合:

「脸书」を見る時、すぐに「FaceBook」を思い起こすであろう。商標「脸书」(第9781309号)への無効審決取消訴訟において、北京知識産権法院は次のように指摘した:
紛争商標は中国語「脸书」で、評審段階において第三者により提出された証拠から、第三者が国外の有名なソーシャルネットワーキング「FaceBook」(中国において「脸谱」又は「脸书」と訳される)の経営者で、紛争商標の出願日前に「FaceBook」標識を先に使用し、且つ、使用及び宣伝の過程において、よく中国語「脸书」と一緒に使用し、中国消費者にとって、「FaceBook」と「脸书」は対応する固定翻訳となったことが分かった。
且つ、「FaceBook」と「脸书」は、いずれも意味のある言葉ではなく、商標として使用する場合、強い識別力を有する。このような状況で、原告は第三者の先行商標を知りながら、「脸书」と全く同じ紛争商標を含む複数の商標を出願登録し、他人の先行権益を損じ、商標の正常登録秩序を乱す意図がある。よって、紛争商標を無効にする。

「FaceBook」の話をすると、「Twitter」についても思い出される。
「Twitter」と言えば、中国語「推特」が思い出される。
商標「推特」(第7906698号)への異議申立不服審決取消訴訟において、北京市高級人民法院は、次のように指摘した:
紛争商標は中国語「推特」、引用商標は英語「Twitter」で、中国語「推特」と英語「Twitter」の称呼は非常に類似し、前者は後者の音訳であるといえ、双方が強い対応関係になる。
よって、紛争商標と引用商標の同一又は類似役務における併存は、関連公衆に役務の出所について誤認を生じさせやすい。

前述の2件において、「脸书」は「Face」と「Book」の直訳からなる言葉で、「推特」は「Twitter」の音訳で、当事者は権利を保護することができた。
しかし、この2件が認められたのは、双方が直接的な翻訳・音訳の関係にあるという理由からか。
実はそれだけではない。直訳・音訳であると理由だけで類似性が認められると、権利者に与える保護範囲が大きすぎて、不適当である。
よって、この2件が認められたのは、双方に一定の関連性があり、その上で使用を経て、その対応関係を強化したからだ。

「脸书」において、この点が明記された。
第三者は「FaceBook」標識を使用及び宣伝する過程において、よく中国語「脸书」と一緒に使用し、中国消費者にとり「FaceBook」と「脸书」とは対応する固定翻訳となった。
「推特」においても、実は、当事者がインターネットや雑誌などの媒体が発行する、ツイッター社又は引用商標への関連報道(記事)を証拠として提出し、「Twitter」と「推特」の対応関係を証明していた。

これらを纏めると、直訳・音訳などは自然的に安定な対応関係を有するのではなく、類似性を判断する際には、使用を経て安定な対応関係になったかを考慮しなければならない。

最後に、中国語商標はその意味に対応する外国語商標と類似するかを判断する際、次の要素を考慮すべきである:
1.関連公衆の当該外国語への認識度
2.双方の対応関係は消費者に誤認を生じさせるほど強いか
3.消費者に誤認を生じさせるその他の要素(商標自体の識別力・知名度、商品の関連性、悪意の有無、商標の実際使用状況など)


[出典:Kangxin Partners]


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