IPニュース IPニュース

商標・著作権・特許・意匠・ドメインネームなど、知的財産権全般にわたる世界中の出来事を集約。
注目すべき主なニュースをわかりやすい記事にまとめ、リリースいたします。

2022.06.28IP台湾:商標法及び著作権法の一部改正


台湾:商標法及び著作権法の一部改正

台湾の立法院の院会(国会本会議)は、CPTPPの加盟に向けて、2022年4月15日付で「著作権法」及び「商標法」の一部の改正案を可決し、総統府は、2022年5月4日付で公表した。

「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)」への加盟に向けて、台湾の立法院(国会)は、「著作権法」及び「商標法」の一部の改正案を2022年4月15日の院会(国会本会議)で可決した。総統府は、2022年5月4日に公表したことによって正式に発効させるようになった。これは、国際社会の法制度と連携する決意を示し、商標権者と消費者の権益の保護を徹底させ、著作権者の保護の強化に資するものとなっている。

実は、2016年頃に、政府が「著作権法」及び「商標法」の一部の改正案を立法院(国会)に提出したが、当時の立法院(国会)の第9会期が終了するまでに立法することができなかった。しかし、アメリカが2017年1月にTPPから離脱し、その後、日本が主導するCPTPPが2018年12月に発効したことを機に、さらに草案の一部を修正し、改めて立法院(国会)に提出したという経緯がある。

両法案の改正案のポイントは、次のとおりである:

一、「著作権法」の改正案について

(一) 以下の犯罪行為があり、かつ、被害者が100万台湾ドル以上の損害を受けた場合は、親告罪から非親告罪(公訴罪)になる:(改正案第100条)

l 著作権法第91条第2項(販売または賃貸を意図し、無断で著作物を複製することにより、他人の著作財産権を侵害する)の罪を犯し、その対象がデジタル形式である場合

l 著作権法第91条の1第2項(他人の著作財産権を侵害する物であることを知りながら、配布または配布を意図し、当該物を公開陳列、または所持する)の罪を犯し、その対象がデジタル形式である場合

l 著作権法第92条の、無断で公衆送信することにより他人の著作財産権を侵害する場合

(二) 海賊版の光ディスクは、上記改正案第100条のデジタル媒体の範囲に含まれることから、現行法の光ディスクに関連する規定(第91条第3項、第91条の1第3項、第98条、第98条の1)を削除した。

(三) 改正法の発効時間は、行政院の命令で決定する(修正第117条)

二、「商標法」の改正案について

(一)   現行商標法の第70条第3号における「まだ商品若しくは役務と結合していないラベル、タグ、包装容器、又は役務と関係のある物品を製造、所持、陳列、販売、輸出又は輸入したとき。」などの行為は、「明らかに知っていた」を権利侵害の主観的要件とするが、改正法では、「故意」を帰責条件とするように変更した。また、この侵害行為に関し、現行法では民事責任しか課されていないが、今回の改正により、刑事責任も追加されるようになった。(改正案第68条第2項新設)

(二) 上記(一)の修正に合わせて、商品若しくは役務と結合していないラベル、タグ、包装容器、又は役務と関係のある物品を製造、所持、陳列、販売、輸出又は輸入した行為は、権利侵害を準備及び幇助する行為として、刑事責任も科すことで、商標権者の商品販売と利益確保を向上させ、商標権の保護を強化する。なお、電子媒体又はインターネットにてこれを行う行為も同様とする。(改正案第95条第2項、第3項新設)

三、権利者にとっては、今回の法改正により次の点をご留意いただきたい

(一) 「著作権法」

親告罪から非親告罪(公訴罪)になる著作権侵害の犯罪対象の範囲が増えることから、特定の犯罪行為を取り締まるために、著作権者が台湾の警察又は検察に刑事告訴を提起しなくても、模倣品の取り締まりを担当している台湾の警察専門部署(保二總隊)が職権で犯罪を摘発し、押収された侵害容疑品が模倣品であるか否かにつき著作権者に真贋鑑定を求めるケースが今後増えると予想する。ただし、台湾では著作権の公的な登録制度がないため、台湾の警察専門部署(保二總隊)は、台湾に現地法人を持っていない日本の著作権者に連絡する術がなく、著作権者を確認することさえできない可能性がある。この点について、日本の著作権者としては、台湾の警察専門部署(保二總隊)に事前の照会を行うとともに、現地台湾の法律事務所に依頼して、常に警察専門部署と連携する重要性が増すと思われる。

(二) 「商標法」

まだ商品若しくは役務と結合していないラベル、タグ、包装容器、又は役務と関係のある物品を製造、所持、陳列、販売、輸出又は輸入したときの模倣行為を刑事罰とする規定を新設したため、この類の犯罪行為の刑事責任も追及することが可能になるため、商標権侵害の予備行為を防げる効果があると考える。


[出典:理律法律事務所]


IPニュースの定期購読

IPニュースの定期購読(無料)も受け付けていますので是非ご利用ください。
購読をご希望の方は下のボタンからお申込みください。