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2022.09.21IP台湾:商標識別力審査基準改正


台湾:商標識別力審査基準改正

台湾特許庁は2022年7月26日、「商標識別力審査基準」の改訂を発表した(2022年9月1日施行)。
台湾特許庁公布内容によると、今回の改訂は各類型の商標における識別力の審査原則の強化を目的とし、各類型の適用例が大幅に追加された。
今回の幅広い範囲における改訂により、同審査基準は頁数が51頁から120頁へと大幅に増加し、商標の識別力を評価する出願人や権利者等にとって大いに参考価値を有するものとなった。
本稿では留意すべき主な改訂内容を抜粋し、紹介する(以下に記載する内容は今回の改訂で追加・修正された内容である)。
台湾へ商標を出願する意向がある者や台湾で商標権を有している者は注意すべきである。
■識別力の有無に関する判断要素を追加
識別力を判断する際に考慮すべき要素として、以下の内容が追加された。
•標識が表現する外観形式、伝達する概念及び標識自身の意味は、出所識別機能を有する商業的印象(ビジネスコンセプト)を形成したか
•商標は、ある商品や役務の出所を指す特性を有するため、特定の商標権者に独占的使用権を与えた場合に、同業者の自由使用を制限し、市場における公正かつ自由な競争に影響を及ぼす可能性があるか
 また、記述的商標における判断基準において以下の内容が追加された。
•消費者が商標と指定商品役務との関連性を連想でき、且つ当該商標は商品役務に関する特性だけを伝達するものである場合、当該商標は記述的商標に属する。
 もし当該商標は特定の商品役務において識別力を有しないとしても、他の商品役務においては識別力を有する可能性がある。
•たとえ明らかな記述的商標ではない場合であっても、台湾商標法第30条第1項第8号の消費者に誤認誤信させる虞があるという規定に反するかどうか引き続き判断しなければならない。
■通用標章及び名称(普通名称・慣用商標)は使用による識別力を取得したとしても登録を受けることができないと明記
市場における公正かつ自由な競争秩序を確保するため、従来から通用標章及び名称は商標法29条2項の規定により、使用による識別力獲得を経た登録の対象外だが、今回の改訂で審査基準にこの点が改めて明記された。
標語(キャッチフレーズやスローガン)の識別力の有無に関する判断要素を追加
標語の識別力判断要素として、以下の内容が追加された。
•全体的な文字の組み合せは創造性を有するか又は暗示的商標に属するか
•全体的な文字の組み合せは指定商品役務の品質、効果、又は他の特性を直接的に示すものではない
•よく見られる広告用語及び競合他社が使用を必要とする文字の組み合せではない
•出願人の世界的な実際の商標登録及び使用状況に応じて総合判断する
追加された事例のうちの1つを紹介する。
 
文字商標の識別力判断に関する事例が追加
文字商標の識別力判断に関する内容及び事例が多数追加されている。
以下にいくつか取り上げる。
「記述的な文字が全体的にデザインされ、商品役務そのものの特性や普通名称等の本来の意味から離れている場合は、識別力を有する。」
 
「複合語は文法や意味に特殊な変化をもたらし、元の説明された意味を超える場合、識別力を有する。」
 
図形商標の識別力に関する判断基準を追加
図形商標の識別力判断に関する内容及び事例が多数追加されている。
以下にいくつか取り上げる。
流行の図形
時事問題や話題、トレンドから派生した図形を指す。各業界で幅広く使用されている場合、消費者に特定商品の出所を指示し、区別する機能を具えるものと認識させることはないため、原則として識別力を有しない。
例:指でハートを作る(指ハート)流行のポーズから派生した「」は識別力を有しない(指定商品:被服等)。
単に情報を示す図形
商品パッケージ又は操作盤上で広く使用され、商品が具える特定の機能、用途又は特性などの情報を示す図形を指す。商品又は役務そのものの関連説明を伝えるに過ぎない場合、識別力を有しない。
1次元バーコードやQRコードも「単に情報を示す図形」である。
例:UV機能を具えた商品であることを示すために一般的に使用される「」(指定商品:化粧品等)や1次元バーコード「」は、いずれも識別力を有しない。
商品パッケージ又は外観デザインの図形
 
外国の氏に関する規定を追加(台湾消費者の認知に基づき、識別力を有する)
知的財産及び商事裁判所による昨今の実務的見解は外国人の氏の識別力を認める傾向にあり、今回審査基準の改正に伴い関連規定が追加された。
例:FORDやTOYOTAといった外国の氏は台湾消費者に普遍的に認知されているため、識別力を有する。
弊所英語Wisdom Newsで外国の氏の識別力に関する近年の実務的見解を紹介しており、参考にされたい(日本語版は近日公開予定)。
その他
・地理的図形及び地名が「産地」の説明又は産地の誤認誤信に係る場合の判断原則を追加
地理的図形や地名の商標が商品役務の出所を誤認誤信させる虞があるか否かについて、「出願人の住所と商標の地名との間に直接的な関連性があるか否か」だけで判断すべきではない。
「消費者が市場のマーケティングモデルから連想し、誤認誤信するか否か」という点も合わせて考慮し、判断すべきである。
会社/機関名称が誤認誤信に係る場合の判断原則を追加
出願人が個人であるが商標に会社名が含まれている、又は出願人が企業であるが商標に「大学/学院」の文字が含まれる場合、商品又は役務の性質又は出所を誤認誤信させる虞があるため、誤認誤信の虞の条項が適用される。
例えば、「康橋國民中小学」という商標(41類教育関連役務)を個人が出願した場合、「康橋」とは実在する教育機関の名称であり、役務の性質等を誤認誤信させる虞があるため、登録を受けることができない。


弊所分析及び出願時のアドバイス
今回、「商標識別力審査基準」に大幅な変更が加えられているが、具体的には、従来の審査基準の規定内容を実質的に廃止した訳ではなく、現行の審査基準に基づき、より明確かつ詳細な規定が追加されている。
また、台湾商標法では「識別力を有しない」及び「公衆に誤認誤信させる虞がある」がそれぞれ不登録事由として規定されている。
しかし、ある商標(特に情報性のある事項や地理的名称を含むもの)が同時にこの2つの不登録事由に該当する可能性もあり、実務上どう判断するかが審査ポイントの1つになるところ、今回の改正において拒絶事例が多数挙げられ、詳しい説明がされている点に注意が必要である。このほか、改訂版審査基準には「誤認誤信の虞」の判断に関する説明が数多く盛り込まれている。台湾特許庁が今後も引き続き当要件を審査のポイントと見なすことが予想されるため、出願人は商標をデザインする際、これらの点に十分留意しなければならない。


[出典:Wisdom International Patent & Law Office]


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