2022.10.25IP中国:「商標審査および審理指南」における一問一答
中国:「商標審査および審理指南」における一問一答
国家知識産権局(CNIPA)が2021年11月22日に公布した「商標審査および審理指南」(以下 「指南」とする)は、2022年1月1日をもって発効することになった。
「指南」をよく理解させるため、国家知識産権局(CNIPA)は「商標審査および審理指南」における重点問題の、馳名商標の審査及び審理、商標の顕著な特徴の審査及び審理、商標として使用してはならない標章の審査及び審理、使用を目的としない悪意ある商標登録出願の審査及び審理に関する一問一答を発表している。
「指南」の下編第二章の「使用を目的としない悪意ある商標登録出願の審査及び審理」の部分は、「中華人民共和国商標法」の改正に適応し、新たに制定されたものである。
「指南」の下編第二章は制定当時から社会や業界からの注目を集めていた。
国家知識産権局 (CNIPA)が発表した使用を目的としない悪意ある商標登録出願の審査及び審理に関する一問一答によれば、とりわけ注意すべきなのは、「使用を目的としない」と「悪意ある」に関する判断基準及び「使用を目的としない悪意ある商標登録 」に該当する典型的行為との二つの問題であろう。
一、「使用を目的としない」と「悪意ある」に関する判断基準について、国家知識産権局(CNIPA)は以下のように解釈した。
『我が国の「商標法」の文言には「悪意」の定義がなく、悪意ある商標登録の撲滅に関する規定は、商標法第4条、第7条、第15条、第19条、第32条、第44条などの各条項に散見される。
一般的に、悪意ある商標登録は、侵害された利益によって2種類に分けられると考えられる。
1つ目は、悪意ある商標駆け抜け登録、即ち他人の商業上の名誉、民事的権利および正当な利益を侵害し、または付着させるために、「ブランド名パクリ」、「トレンドを悪用すること」および著名人の名前などの登録をあえて行うような悪質な登録行為を指す。
もう一つは、「使用を目的としない悪意ある商標登録出願」、すなわち「大量出願」と「資源占有」など商標登録と管理の秩序を乱し、または衝撃を与えることを特徴とする商標登録行為である。
上記2種類の悪意ある商標登録の行為は、区別されつつも、関連している。
指南は、商標法第4条第1項の「使用を目的としない悪意ある商標登録出願」とは、「出願人が生産、営業活動の必要性に基づかない商標登録出願を大量に提出し、真の使用目的を欠き、商標資源を不当に占有して、商標登録の秩序を乱す」ことを指すことを明らかにした。
「使用を目的としない悪意」の 「悪意」とは、使用を目的としない商標を大量に出願し、それによって利益を得ようとすることを指し、「悪意ある商標抜け駆け登録 」の「悪意」とは異なる。
「ブランド名パクリ」及び 「トレンドを悪用すること」が特定の主体の民事上の利益を害するだけで、公共の利益を害するものではない場合、相対事由条項を適用して規制すべき、「使用を目的としない悪意ある商標登録出願」に属さない。
もちろん、悪意を持って大量の商標を登録出願し、不当に商標資源を占有し、商標登録の秩序を乱す場合、同時に商標法第4条第1項をも適用して規制すべきである。
いわゆる「使用を目的としない」商標登録出願行為とは、商標登録出願の時点で、実際に商標を使用する目的も商標の使用を準備する行為もなく、あるいは合理的な推論によれば実際に商標を使用する可能性がないことを指す。
商標法第4条の目的は、商標資源を不当に占有し、商標登録の秩序を乱すような商標の不当占有などの悪質な出願を抑制することにあり、使用目的を持たず、利益を得る目的で大量の商標を出願することは、本条が規制する使用を目的としない「悪意ある」出願に属する。』
二、「使用を目的としない悪意ある商標登録」に該当する典型的行為について、国家知識産権局(CNIPA)は以下のように、10 種類の行為を列挙した。
(1) 商標登録出願の数は膨大で、明らかに営業活動のための通常の需要を超えて、使用する本当の意図を欠き、商標登録の秩序を乱す場合
(2) 複数の主体の一定程度の知名度を有するまたは強い識別性を有する商標を大量にコピーし、模倣し、剽窃し、商標登録の秩序を乱す場合
(3) 単一主体の一定の知名度を有するまたは強い識別性を有する特定の商標を繰り返し登録出願し、商標登録の秩序を乱す場合。
(4) 他人の会社名、会社名の略称、電子商取引名、ドメイン名、一定の影響力を有する商品名称、包装、装飾、他人の知名かつ識別性を有する広告スローガン・外観設計など商業標識と同一または類似する商標を大量に登録出願している場合。
(5) 著名な人物名、著名な作品名またはキャラクター名、他人の知名かつ識別性を有する美術作品などの公共の文化資源と同一または類似する商標を大量に登録出願している場合。
(6) 行政区画名、山川名、景勝地名、建物名などと同一または類似する商標を大量に登録出願している場合。
(7) 指定商品 ・役務の一般名称、業界用語、商品 ・役務の品質 ・主原料 ・機能 ・用途 ・重量・数量等を直接的に表示する識別性を欠く商標を大量に登録出願している場合。
(8) 大量に商標登録を出願し、大量に商標を譲渡し、かつその譲受人が分散していて、商標登録の秩序を乱す場合。
(9) 出願人が不正な利益を得る目的で大量に販売すること、商標の先使用者又は他人に商業協力を強要し、高額な譲渡料、使用料又は損害賠償金を要求するなどの行為を有する場合。
(10) その他の悪意ある商標登録出願行為と認定できる場合。
上記の場合にいう「数は膨大」「大量」は、出願人の状況や出願した商標などの要素と合わせて総合的に判断する必要がある。
上記 (10)の記述からして、列挙された諸行為は例示列挙であることが分かる。他の行為も場合によっては、悪意ある商標登録出願と認定されることがあると考えられる。
[出典:北京路浩国際特許事務所]