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2022.11.22IP中国・台湾:中国・台湾における医薬品商標に関する審査実務の比較


中国・台湾:中国・台湾における医薬品商標に関する審査実務の比較

医薬品に関する知的財産権は特許権、商標権、著作権など多岐に渡るが、中でもマーケティングやプロモーションなどに使用される商標は最も主要な知的財産権と言えるため、医薬品の商標登録は製薬会社にとって非常に大きな意義を持つ。
しかし、医薬品は安全性に関わること、及び治療効果又は成分がマーケティングの要点となること等の特殊な性質を鑑みると、医薬品商標では語の選択や関連する出願において、一般商品に付される商標より多くの困難が伴い、各国特許庁が定める医薬品商標に関連する規定を満たすことに加え、医薬品名称に対する法規及び命名原則も満たす必要がある。
このほか、医薬品商標の多くは海外へも出願することが多いため、医薬品商標の選定は様々な要素を検討する必要がある。
中国と台湾を例に見ると、医薬品商標の審査にはそれぞれ異なる判断基準が設けられている。
つまり、先行商標との類似による混同誤認が生じる虞という拒絶理由を解消するという状況において、台湾では登録を受けたとしても、中国では拒絶査定となる場合がある。
以下に、中国、台湾商標実務において拒絶査定となりやすい医薬品商標の種類をまとめるとともに、中国・台湾における関連規定の相違点を紹介する。

中国・台湾の商標法の規定に基づいた主な拒絶理由
先行商標との類似や混同誤認の虞のほかに、中国・台湾の商標法の規定に基づいた拒絶査定の理由としては、以下が挙げられる。
 
中国及び台湾では、医薬品商標に対する個別の規定や審査基準は設けられておらず、医薬品関連案件の審査・審理には商標法が適用される。
しかし、中国では現行の「医薬品添付文書及びラベル管理規定(藥品説明書和標籤管理規定)」によれば、医薬品添付文書に使用する商標は登録を受けたものでなければならない。
中国の審査実務では医薬品の安全性などを考慮し、医薬品商標に対して厳格な審査が行われているため、製薬会社や商標出願人はこの点に十分留意する必要がある。

中国・台湾における医薬品商標の審査事例
通用名称(普通名称)

中国商標法第11条第1項第1号、及び台湾商標法第29条第1項第2号において、通用名称は登録を受けることはできないと規定されている。
以下に「通用名称」に関する医薬品商標の審査事例を紹介する。
 
中国の商標審査実務では、「医薬品の通用名称は商標として使用・登録してはならない」という原則が厳守されており、通用名称を含む商標に対して、より厳格な判断基準で審査が行われている。

原材料や効能などに関する語の使用
中国商標法第11条第1項第2号、及び台湾商標法第29条第1項第1号において、指定商品の原材料、用途などの特性を直接表示するものは、原則として登録を受けることはできないと規定されている。
以下に「原材料、効能」に関する医薬品商標の審査事例を紹介する。
 
中国の商標審査実務では、医薬品の効能を記述・暗示する商標、例えば「舒、通、暢」などの文字を使用している商標は、商品の効能や用途を直接表示していると見なされ、拒絶査定となる可能性がある。

適応症、治療対象などの表示
中国商標法第11条第1項第2号、及び台湾商標法第29条第1項第1号において、指定商品の特徴又は関連する特性を直接表示するものは、原則として登録を受けることはできないと規定されている。
以下に「適応症、治療対象」に関する医薬品商標の審査事例を紹介する。
 
中国の商標審査実務において、器官名称・身体部位・使用対象を含む商標は指定商品の特徴又は関連する特性を直接表示するものと見なされ、拒絶査定となる可能性がある。
また、公衆に誤認を生じさせる虞があると見なされる可能性もある(後述)。
 
識別力の欠如
中国商標法第11条第1項第3号、及び台湾商標法第29条第1項第3号において、識別力(顕著な特徴)を欠くものは、原則として登録を受けることはできないと規定されている。
以下に「識別力欠如」に関する審査事例を紹介する。

消費者に誤認誤信を生じさせるもの
中国商標法第10条第1項第7号、及び台湾商標法第30条第1項第8号において、消費者に誤認誤信を生じさせる虞のあるものは、登録を受けることはできないと規定されている。
以下に「誤認誤信の虞」に関する審査事例を紹介する。

社会主義の風習や公序良俗を害し、社会的悪影響を及ぼすもの
中国商標法第10条第1項第8号、及び台湾商標法第30条第1項第7号において、社会主義の風習や公序良俗を害するものは、登録を受けることはできないと規定されている。
以下に「公序良俗の妨害」に関する審査事例を紹介する。
 
分析及び出願時のアドバイス
実務上、製薬会社が医薬品名称を決定する際、候補をいくつか挙げ、そしてそれらが医薬品名称の法規及び関連する命名原則を満たしているか、商標登録の可能性はあるか、1つずつ検討を行うのが常である。
中国及び台湾を例に見ると、関連法規や政府機関が定めた規範、例えば中国では中国国家薬品監督管理局(NMPA)、台湾では台湾衛生福利部食品薬物管理署(TFDA)が定めた規定を満たした名称でなければ、医薬品名称として使用することができない。
医薬品名称に関する規定は中国と台湾で異なるものの、「医薬品名称は他人の医薬品商標又はメーカー名であってはならず、他メーカーの医薬品名称と同一であってはならない」、「医薬品名称として不適切なものであってはならない」という原則は共通している。
このほか他の主要国と同じく、中国や台湾においても医薬品名称が商標権として保護を受けるためには、商標登録出願を行い、商標登録される必要がある。
治療効果や成分に関連する語を商標として使用することで、消費者の医薬品に対する認知度や購買意欲向上を期待する製薬会社は多い。
ただ、このような「暗示的」商標は消費者へ強い印象を与えることができるが、権利化の難易度は上がってしまう。
よって、商標で使用する語の選択は慎重に行わなければならず、もし中国語商標の出願を考えている場合には、中国や台湾での商標ポートフォリオの構築についても合わせて考慮すべきである。
さらに出願前に徹底した商標調査を行うとともに、医薬品商標に精通した事務所に候補名の総合評価を依頼することで、より確実に医薬品市場を保護することができる。


[出典:Wisdom International Patent & Law Office]


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