2022.12.27IPEU:化粧品および医薬品の類似性リスクについて(一般裁判所判決)
EU:化粧品および医薬品の類似性リスクについて(一般裁判所判決)
商品間の境界が曖昧ということは、スキンケア製品は、3, 5類に渡って類似と見なされる可能性があることを意味する
スキンケア製品は、化粧品と医薬品の境界線をますます曖昧にしつつある。
化粧品は、医薬品と同じ目的を果たすことがしばしばあり、(量は異なるものの)成分や形状が似通っている。
EUの一般裁判所(General Court)はある判決でこのような傾向を認め、化粧品は本質的に医薬品ではないものの、化粧品のスキンケア製品と、医薬品のスキンケア製品は類似する可能性があると結論付けた。
本判決は、この分野の事業従事者への重要な警告の役目を果たす。
ブランドオーナーは、自社ブランドの十分な保護を確立するため、区分と商品/役務名が適切に選択・表記されていることを確認する必要があるだけでなく、想定していなかった他区分との重複についても考慮しなければならない。
化粧品と医薬品の境界が曖昧であることを踏まえて、リスクをより正確に評価するため、第3, 5類の両区分が含まれるような、より広範なクリアランスサーチを実施すべきである。
【係争の背景】
この係争は、欧州連合知的財産庁(EUIPO)に出願された商標に関連して発生したものである。
出願人はクロアチア企業のCreaticonで、さまざまなスキンケア製品を提供している。
Creaticon社は、第3類の幅広い“cosmetic”商品に関し、同社のブランド“Skintegra”を含むロゴ商標の出願を行った。
しかし、医療機器メーカーのPaul Hartmannにより、同社のドイツおよびEUにおける先行商標で、第5類等の商品に関する文字商標“Skintegrity”を根拠に、異議申立がなされた。
EUIPOの異議部はその異議申立の一部を支持し、第3類のいくつかの商品に関する商標登録を拒絶した。
この決定は、審判部によっても支持され、その後、一般裁判所に提訴された。
【一般裁判所の判決】
Creaticon社の訴えを棄却するにあたり、一般裁判所は審判部にて示された決定理由を支持した。
具体的には、出願された第3類商品が、先行のドイツ商標の第5類商品“pharmaceutical products for skin protection and cleansing for the purposes of personal hygiene”および“pharmaceutical preparations for body care, for skin protection and cleansing”と類似するとした。
また裁判所は、第3類で保護されている商品は非医療用の化粧品で、第5類は医療用製品および医薬品を保護しているとの出願人の主張を退けた。
代わりに数々の理由から、それら商品は類似すると結論付けた:
・どちらの商品も用途は同じである。薬用であるか否かに関わらず、両商品は肌を保護・清潔にし、外見をよくすることを目的としている、
・どちらの商品も成分が似ている可能性が高く、またたとえばクリームやジェル状など、同じ堅さを持つ可能性がある。
・両カテゴリーの商品は、たとえば薬局など、同じ流通経路で販売されている。
・両商品は補完関係にある。出願された商標がカバーする、非医療用のクレンジング・保湿製品は、医薬品グレードの処置でも一緒に用いられるであろう。
これにより、両商品が同じ事業者から発売されていると消費者に思わせるほどの密接な関係が生じる。
【当所(Osborne Clarke)のコメント】
この判決は、商品が異なるニース区分に分類されるとしても類似すると見なされることが、企業にもたらすリスクを浮き彫りにしている。
具体的には、特定の化粧品と医薬品の境界が曖昧な可能性があることを警告している。
これらの分野で事業を行う企業は、この潜在的な重複について認識を持っておくべきである。
ブランドオーナーは、自社製品の用途をはっきりと把握しておく必要があり、適切な保護を受けるためにも商品名と区分を慎重に表記・選択すべきである。
いくつかの商品は区分を超えて類似すると見なされることから、相手方が異議申立に成功するリスクを最小限に抑えるため、化粧品もしくは医薬品の商標保護を目指す際は、第3, 5類の両区分がカバーされるような、より広範なクリアランスサーチを実施すべきである。
[出典:Osborne Clarke]