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2023.03.28IPロシア:商標保護の現状


ロシア:商標保護の現状

ロシアのウクライナ侵攻から1年以上が経過した。現在のロシアの商標保護の現状を伝える。
ウクライナ侵攻以前から、ロシアにおける商標保護の体制は歴史的に非常に高い水準にあった。
警察、税関、独占禁止機関、知的財産裁判所を通じて、効果的な執行手段が存在する。ロシアは多くの国際協定や条約に加盟しており、ユーラシア商標制度を通じて新しい保護体制の構築にも積極的である。
現在の審査も極めて公正であり、外国企業の出願人である事を理由に偏った判断が出る事もない。

現在のロシアの制度で注目を集めているのが、特定の商品について並行輸入を認めている事である。
2022年3月末、ロシアで特定の商品に関し並行輸入を認める法律が施行された。これは2023年まで、医薬品については2024年末まで有効な暫定的措置である。
以前は、権利者の同意がない並行輸入はロシアの法律で禁止されており、同意を得ていない商品は模倣品とみなされていた。
現在では並行輸入により、特定の商品のロシアへの出荷が認められている。
ロシアの小売業者や流通業者は、並行輸入の合法化を支持している。
この並行輸入は、特定の企業(主にロシアから撤退した企業や撤退しつつある企業)の特定の商品のみに適用されている。
最近になり約200のブランドが並行輸入を認める商品リストから削除された。
これはロシアでの事業を再開したため、あるいはロシア市場で代替品が再び入手できるようになった事を示す。
また並行輸入を認める措置は、一時的な対応に過ぎないと考えられている。

最近、ロシア特許庁が公表した2022年1月から8月までの出願件数だが、商標については、外国人の出願が16%減少し、ロシア人の出願は14%増加した。
残念ながら、一部のロシア企業や個人は、現在の状況を利用しようとしている。
戦争が始まった直後、ロシア特許庁は、外国企業が所有する商標、またはこれらの商標と紛らわしい類似商標について、ロシア企業から数百件の出願を受けた。
「Adidas」「Coca-Cola」「Instagram」「Mercedes-Benz」など、ロシア人もしくは企業が登録しようとした商標は、ロシア国外の良く知られた企業に関連するものが含まれている。
これらの出願に関しては、ロシア特許庁は、先行する権利を含めきちんと審査する姿勢を打ち出している。
よって正当な権利者であれば、必要な商標は出願し保護を求める事が重要である。

次に使用であるが、ロシア国内は戦争状態ではないので、不可抗力には該当しない。
市場からの撤退は、商標を使用できない正当な理由としては認められないと考えられている。
多くの外国企業がロシアを離れたり、事業を縮小したりして、ロシアで商標を適切に使用していないため、不使用を理由に商標を取消すことに関し、知的財産裁判所がどのように判断するか、今後の経過を見守る必要がある。


[出典:Papula-Nevinpat]


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