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2023.08.22IPスロベニア:産業財産権法を改正


スロベニア:産業財産権法を改正

スロベニア産業財産権法の改正が2023年7月27日に施行された。
この改正は、国内法をEUおよび国際法との調和を図り、手続きを簡素化し、より効率的かつ安価にすることを目的としている。

■商標に関する改正
この改正は、商標に関するEU加盟国の法律に近似させるために、EU商標指令2015/2436号の第45条をスロベニア国内法に移管するものである。

商標の取消・無効審判請求の手続きは、スロベニア知的財産庁(SIPO)で審理されることになった。
これらの手続きは、以前はリュブリャナの地方裁判所で行われていた。
不使用を理由とする取消・無効審判請求手続きの請求理由は従来と変わらないが、民事訴訟法の規則ではなく、産業財産権法および一般行政手続法に基づく行政手続規則が適用されることになった。
これらの規則は、例えば、書類の交付、期限、手続費用等の点で若干の違いがある。

SIPOに対する取消・無効審判請求のオフィシャルフィーは500ユーロとなる。
これまでは、係争額に応じた裁判所手数料が適用されていた。

新しい規定では、各手続当事者が提出できる書状は2通に制限され、請求人は取消・無効審判請求の申請について1回、被請求人は請求に対する応答について1回補足することができる。
裁判所で行われる取消訴訟や無効訴訟にはこのような回数制限はなかった。

この改正では、外国語の証拠はスロベニア語に翻訳されなければならないと明確に規定されている。

当事者はSIPOの審決に対してスロベニア行政裁判所に不服申立を行うことができるようになった。
これまでは、地方裁判所の判決に対する不服申立は、リュブリャナの高等裁判所に提訴していた。
行政裁判所への提訴手数料は現在148ユーロであり、高等裁判所への上訴手数料は係争額によって異なる。

改正発効前に提起された審理中の取消・無効審判請求の手続きは、裁判所において旧法に従って審理される。

注意すべき点は、侵害訴訟における反訴の場合、商標の取消・無効を決定する権限は地方裁判所にあることである。
このような場合、裁判所において侵害訴訟における反訴手続が開始されたことを、裁判所はSIPOに対し通知しなければならない。

裁判所に出頭する代理人は弁護士または司法試験合格者であるが、SIPOに出頭する代理人は弁護士である必要はなく、SIPOの知的財産弁護士リストに登録されている弁理士または商標弁理士であればよい。

不使用に基づく異議申立手続において使用の証拠を要求することができるようになったのは、2020年の産業財産権法の改正にからであるため、SIPOの審査官にとって使用証拠の評価は比較的新しい分野である。
証拠を評価する際のSIPOのアプローチや、SIPOと地方裁判所、高等裁判所、行政裁判所が下す決定の間に顕著な違いが生じるかどうかが注目される。
また、管轄機関の変更により、取消・無効審判請求の件数が増加するかどうかも注目される。
スロベニアにおいてこのような請求は年数件ほどであり、珍しいものである。
また、EU商標の著名性の証明に関しても変更がなされ、スロベニアにおける著名性のみに言及し、EU商標を含む商標の著名性はスロベニアに関連するものでなければならないと誤って解釈されていた従来のあいまいな表現が明確化された。
改正された第44条(1)(c)は、EU商標については、EUにおける著名性が証明されるべきであると明確に規定している。

■特許に関する改正
この改正は、国内法を欧州特許条約(EPC)、EPC第65条の適用に関する協定(ロンドン協定)、統一特許裁判所に関する協定(UPCA)、統一特許保護の創設分野における協力強化を実施するEU規則第1257/2012号に調和させるものである。

特許の権利規定の矛盾、特に間接侵害に関する規制の欠如は、UPCAのそれと調和するようになった。

特許保護の免除に関するEPCとの不整合が解消された。
この点に関する法律の内容は変わっていないが、EPCに沿ってより正確に定義されている。

この改正は、国内段階に移行する際の欧州特許(EP)申請の翻訳文の提出に関する義務の改訂と明確化、およびEPCとロンドン協定に準拠した国内段階における追加的な変更または制限の明確化を含んでいる。
本改正は、欧州特許庁(EPO)において欧州特許(EP)が取り消された場合、SIPOが職権で国内登録された欧州特許(EP)の無効を決定することを規定している。

本改正は、EPOが形式的な理由によりEPに単一の効力を付与しなかった場合、特許権者はその特許を国内特許としてSIPOの特許登録簿に登録することができると規定している。

EU規則第1257/2012号に従い、本改正は、EPがスロベニアにおいて単一の効力を付与されている場合、そのEPがスロベニアにおいて国内特許としての同時効力を持つことを禁止する旨を規定している。

この改正は、SIPOが宣言的決定を下す根拠となる複数の書面の提出を認めることにより、国内特許権者が10年目以降も特許の有効性を維持するための新たな方法を規定するものである。

この改正により、SIPOは、特に未公開の特許出願及び未公開の発明に関する情報サービスを提供するために、他の国際機関及び他の知的財産庁と契約を締結することができるようになった。

■その他の変更点
この改正はまた、(権利取得手続中に要求される義務を履行するための)期限を徒過した後に手続継続を請求できる期間を、徒過した期限から6ヶ月だったものを4ヶ月に短縮するものである。
これは、特に、権利者が国内段階移行期限を徒過した場合のEPの法的確実性に影響を及ぼす可能性がある。
この規定は2023年9月27日から適用される。

委任状(POA)を書面で代理人に渡すことが明示的に要求されなくなったため、委任状はスキャンコピーでもよく、原本はもはや要求されないと解釈される可能性がある。
一つの権利に対して複数の代理人がいる場合、特に指示がなければ、SIPOは直近に登録された代理人に書類を交付する。

最後に、統一弁護士報酬が導入され、これは改正発効から1年以内にスロベニア知的財産弁護士協会(ASIPA)によって受理されなければならない。


[出典:PETOŠEVIĆ]


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