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2023.09.12IP中国:商品/役務の類否判断における行政規制の影響


中国:商品/役務の類否判断における行政規制の影響

2023年4月23日、最高人民法院は中国の知的財産法の適用における43の問題に関する公式見解を発表した。
No. 19-26は商標に関するもので、最高人民法院が最近になって審理・支持した具体的な事件に関連している。
このうち、国際企業に有益と思われる以下の商標問題について要約・コメントしたい。

No. 24:商品/役務の類否判断における行政規制の影響 [(2021) 最高法行再第76号]
商品/役務の類否判断において、最高人民法院は商品の生産・販売および関連サービスに関わる行政規制の影響を考慮すべきであることを明確にした。
販売経路、サービス形態、および消費者層は規制に影響を受け、そういった規範によって長期的かつ安定的な市場秩序が形成されている場合、行政規制によってもたらされる影響は、商品/役務の類似性を判断する上で重要な要素と見なすべきである。

この商標無効審判事件の再審で、係争商標は“retail or wholesale service for pharmaceuticals(薬剤の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供)”、引用商標は“drugs(薬品)”に使用されていた。
薬品は人の健康に関係することから、中国では、流通に関する規制が厳しくなっている。
関連行政法規によると、薬品メーカーによる販売には次のような特徴がある:1)販売は種類を限定した、自社で製造した薬剤であること、2)販売対象は基本的に医薬品貿易企業および医療機関であること、など。
対照的に、医薬品の卸売または小売業者は異なるメーカーの多種多様な医薬品を扱っており、ターゲット層は患者や一般最終消費者である。
薬品製造および管理に関する特殊な規制は、長年にわたって比較的安定した、明確な市場パターンを形成してきた。関連公衆は、薬品メーカーおよび販売業者について、明確な理解を得ている。
以上のことから、係争商標がカバーする“retail or wholesale service for pharmaceuticals”は、取引形態や提供者等の点で、引用商標の商品“drugs”とは異なり、係争商標は維持されるべきである。

コメント:最高人民法院の結論は理論的に首尾一貫しているが、本事件の当事者は、いずれもそれぞれの事業分野で評判の高い著名企業であることにも留意すべきである。
このことから、長期的かつ安定的な市場秩序について主張している傾向にある。
係争商標の出願人が悪意をもって他者商標の海賊版を作成している、あるいは非常に著名である等のいくつかの事件では、“retail or wholesale service for pharmaceuticals”と商品“drugs”は、自然な結び付きにより類似すると見なされた判例もある。


[出典:Chofn IP]


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