2025.03.11IP中国:不使用取消請求における証拠の厳格化
中国:不使用取消請求における証拠の厳格化
中国国家知識産権局(CNIPA)は、不使用取消請求について、特定の商標代理人及び法律事務所に対して是正通達を出した。
この措置は、不使用取消申請に必要な証拠基準が引き上げられ、安易に不使用取消請求を行うことが将来的に困難になる可能性を示唆している。
是正通達は、不使用取消の請求人に対して、登録商標が3年以上市場で使用されていないことを証明する予備的証拠の提出を求めるものである。
必要となる(オンライン)検索は最低でも3つのプラットフォームを網羅し、各検索エンジンのスクリーンショットには十分な情報が含まれていなければならないとされている。
さらに、事業範囲や事業状況などの登録者に関する予備的な情報の提供を求めるものである。
中国における商標をめぐる課題
従来、このような是正通達がなされるのは稀であるが、今回CNIPAがこのような通達を行ったのは、登録商標に対する不使用取消請求が繰り返しなされ、請求件数が大きく増加している現状への対応策であると考えられる。
請求件数の増加は商標権利者とCNIPAの双方に大きな負担となるものである。
また、競合他社の事業を妨害するという悪意を持って、不使用取消請求のプロセスを悪用している請求人も一部存在する。
このような悪意のある取消請求を抑制すべく、CNIPAは取消請求人に対して、不使用に関する主張を裏付ける、より確固たる証拠の提出を要求していると考えられる。
なお、CNIPAによるこのような要求は法的根拠に基づくものである。
中華人民共和国商標法実施条例の第六十六条には次のように規定されている:
商標法第四十九条における「正当な理由なく3年間連続して登録商標を使用しなかった」行為がある場合、如何なる組織又は個人も商標局に、その登録商標の取消しを請求することができ、請求する際には関連する状況を説明しなければならない。
この規定は請求人が不使用取消を請求する際に、関連する事実を提示しなければならないことを示している。
将来的な証拠要件について
当所が担当した最近の実務内容や様々な情報源から推察するに、CNIPAは商標の取り消しを求める請求人に求める証拠要件をさらに定量化することが予想される。
この予想は、一部の取消請求人に対して、主要検索エンジン(百度、Bing、Sogou等)、電子取引プラットフォーム(淘宝網、京東、Pinduoduo等)、ソーシャルメディア(WeChat、Weibo、Xiaohongshu等)といった包括的なオンラインプラットフォーム上の証拠が現在要求されているという情報と合致するものである。
なお、当所がCNIPAに問い合わせたところ、これらの検索エンジンの証拠は、主に登録商標の関連業界における登録商品/役務に関するものである必要があると、口頭で確認が取れた。
今後の対応
本稿執筆時点では、CNIPAは不使用取消請求の証拠要件の変更について、正式な指針を文書では発表していない。
当所は引き続き証拠要件に関する変化をモニタリングし、タイムリーな情報を提供していく。
[出典:Spruson & Ferguson]