2026.08.25IPEUIPO:「OpenAI」欧州一般裁判所で敗訴
EUIPO:「OpenAI」欧州一般裁判所で敗訴
一般裁判所もOpenAIの訴えを棄却―EU商標「OPENAI」は、少なくとも現時点では保護を受けられない
人工知能をめぐる問題は、事実上あらゆる分野に関係し、絶えず新たな問題を提起している。文字商標「OPENAI」をめぐる事件は、EU商標法の典型的な事例として、欧州連合一般裁判所(以下「EU一般裁判所」という)で争われた(2026年7月15日判決、事件番号T-555/25)。
本件の争点は、「OPENAI」という文字商標が、ソフトウェア関連の商品および役務について記述的であるか否かという点であった。
本判決は、記述性を理由とする絶対的拒絶理由の基本的要件を明らかにするとともに、欧州連合商標規則(EUTMR)第7条第1項(c)に基づく判断において、商標の評判や知名度は無関係であることを確認したものである。
もっとも、OpenAIには依然として登録を受けられる可能性が残されている。
背景
米国企業であるOpenAI Foundationは、AIツール「ChatGPT」で最もよく知られており、すでに世界各国で「OpenAI」に関する複数の商標登録を取得している。
しかし、今回、同社はEU文字商標「OPENAI」の出願をめぐり、EU一般裁判所で敗訴することとなった。
EUIPOの審査部は、EU商標規則第7条第1項(b)および(c)ならびに同条第2項に定める絶対的拒絶理由に基づき、第9類(特にコンピュータソフトウェアおよびアプリ)、第42類(ソフトウェア開発サービスを含む)、第45類(本人確認サービスを含む)に属する商品および役務について、「OPENAI」の商標出願を拒絶した。
審査部は、本件商標が、少なくともEUの一部地域において、関連する商品および役務について記述的であり、かつ識別力を欠くと判断した。この判断は、EUIPO第5審判部によっても維持された(2025年6月10日決定、事件番号R 190/2025-5)。
OpenAI Foundationは、審判部の決定を不服としてEU一般裁判所に提訴した。
EU一般裁判所の判断
EU一般裁判所は、2026年7月15日の判決において、審判部の決定を全面的に支持し、OpenAI Foundationの訴えを棄却した。
EU一般裁判所は、「OPENAI」という商標は、「容易に「利用可能な人工知能」または「制限のない人工知能」として理解されるものであり、そのためソフトウェア分野の商品および役務について記述的であると判断した。
原告は、「OPENAI」という商標は辞書に掲載されていない造語であり、出願に係る商品および役務の特徴を何ら想起させるものではないと主張した。しかし、EU一般裁判所は、この主張を退けた。
同裁判所は、本件商標は「open」と「AI」を単に結合したものにすぎず、通常とは異なる構造を有するものでも、新たな意味を持つ造語を構成するものでもないと判断した。
また、ハイフンやスペースがないこと、あるいは辞書に掲載されていないことのみをもって、当該商標が造語としての性質を有するとはいえないと判示した。
英語を理解する一般需要者および専門的需要者からなる関連公衆は、両語の間にスペースがなくても、「open」と「AI」という二つの語を容易に認識することができる。
「open」は「自由に利用できる」「制限なくアクセスできる」といった意味に理解され、「AI」は「Artificial Intelligence(人工知能)」の略語として認識される。
したがって、本件商標は、全体として「自由に利用できる人工知能」という意味を伝えるものである。
EU一般裁判所はまた、「open」という語には複数の意味があるため、本件商標は記述的ではないとする原告の主張も退けた。
同裁判所は、確立されたEU判例法を引用し、商標が有し得る意味のうち少なくとも一つが、出願に係る商品または役務の特徴を示す場合には、その商標の登録は拒絶されなければならないとした(欧州司法裁判所2003年10月23日判決、C-191/01 P、OHIM対Wrigley事件、第32段落)。
したがって、関連公衆が「open」と「AI」の組合せを、考えられる意味の一つとして「自由に利用できる人工知能」と理解すれば、記述性の判断には十分であるとされた。
EU一般裁判所はさらに、ソフトウェア分野に属する本件の商品および役務はいずれも、一般公衆が自由に利用できるAIを基礎とするもの、またはそのようなAIによって動作するものとなり得るとした審判部の判断を支持した。
これが当該商品および役務の主たる目的ではない可能性があるとしても、そのことは結論を左右しない。同裁判所は従前の判例を引用し、商標が記述的であると判断されるためには、当該商品または役務について想定される用途の一つを記述するものであれば足りると強調した(類推として、EU一般裁判所2021年5月19日判決、GluePro事件、T-256/20、第49段落および第50段落)。
いずれにしても、本件商標は、当該商品および役務が自由に利用できる人工知能に関連することを直接伝えている。このような直接的な情報を示すものである以上、本件商標は、商品または役務の事業上の出所を示すという商標の本質的機能を果たすものではない。
EU一般裁判所は、「OPENAI」商標が世界30以上の法域ですでに登録されているとの原告の主張も退けた。同裁判所は、EU商標制度は自律した独立の法体系を構成しており、EUIPOおよびEUの裁判所は、各国の商標庁または裁判所の判断に拘束されないと強調した。
最後に、原告は、「OPENAI」商標はEUにおいてすでに広く認知されていると主張したが、この主張も認められなかった。
EU一般裁判所は、EU商標規則第7条第1項(c)に定める絶対的拒絶理由の該当性を判断する際には、商標の実際の使用状況や周知性は考慮されないと強調した。
「OPENAI」のEU商標出願がなお登録される可能性がある理由
今回の判決により、「OPENAI」という文字商標をEU商標として登録できる可能性がすべて失われたのであろうか。必ずしもそうではない。
OpenAI社は、EU商標規則第7条第3項に基づき、同規則第7条第1項(c)に定める絶対的拒絶理由を克服できる可能性がある。
EU商標規則第7条第3項によれば、本質的に識別力を欠く、または記述的であると判断された商標であっても、使用による識別力を獲得している場合には、登録を受けることができる。
そのためには、当該商標が広範に使用された結果、関連公衆の相当部分が、当該商標を商品または役務の事業上の出所を示すものとして認識するに至っていることを立証する必要がある。
OpenAI社は、EU商標実施規則(EUTMIR)第2条第2項と併せて適用されるEU商標規則第7条第3項に基づき、使用による識別力の獲得について予備的請求を提出していた。この予備的請求は、遅くとも審査官による最初の拒絶理由通知に対する応答時までに提出しなければならない(EU商標実施規則第2条第2項第2文およびEU商標規則第42条第2項第2文)。
この予備的請求が提出されていたことから、使用による識別力の獲得に関する審査は、本件商標の記述性について最終的な判断が下された後に行われることになる。
したがって、「OPENAI」商標の使用による識別力の獲得や周知性に関する原告の主張は、EU商標規則第7条第1項(c)の該当性を判断するうえでは考慮されず、EU一般裁判所も今回の判決において、これらを判断の対象としなかった。
EU一般裁判所の判決が確定した場合、本件はEUIPOの審査官に差し戻され、本件商標が使用による識別力を獲得していたか否かについて審査されることになる。
もっとも、EU商標規則第7条第3項に基づく使用による識別力の獲得については、厳格な立証が求められる。
出願人は、出願日である2023年6月15日より前に、出願に係る商品および役務について、「OPENAI」商標がEU全域で識別力を獲得していたことを立証しなければならない。
そのためには、具体的な売上高、消費者調査、広告展開の実績など、広範な証拠を提出し、2023年6月15日より前の時点で、関連公衆の相当部分が、指定された商品および役務との関係において、本件商標をOpenAI社に由来するものとして認識していたことを証明する必要がある。
出願人がこの立証責任を果たすことができるかについては、今後の審査を待つ必要がある。
[出典:HARTE-BAVENDAMM]
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