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2026.08.12IP中国:商標の類似性に関する一考察


中国:商標の類似性に関する一考察

デジタル経済、AI、そしてプラットフォーム型ビジネスモデルの急速な発展に伴い、商品/役務の分類に基づいて商標の類似性を判断する従来の仕組みは、構造的な課題に直面している。
本記事では、この問題を法的観点から検討し、実務上のジレンマや新たな潮流を探るとともに、急速な変化の中で商標が指定する商品/役務の類似性の定義をどのように革新すべきかについて考察する。

従来の商標類否判断の限界
中国では、商標審査における商品/役務の類似性は、主に以下の要素に基づいて判断される。
・商品/役務の機能および目的
・生産・販売経路
・対象となる消費者が、通常、相互に代替可能または補完関係にあると認識するか
・関連する公衆に混同または誤認を生じさせるおそれがあるか

これらの判断基準は、商標審査制度の基本的な立法目的である以下の点に由来する。
•消費者の混同または誤認を防止すること 
•商標権者の権利および利益を保護すること

総じて、従来の類似性判断基準には三つの特徴がある。
①商標審査官は固定的な分類体系に依拠している。中国では、類似性の判断に当たり、通常、「類似商品・役務区分表」が基本的な基準として用いられる。
中国では類似群制度が採用されており、同一の類似群に属する商品または役務は、原則として同一または類似すると判断される。
したがって、商品または役務が同じ区分に属していても、類似群が異なることを理由に非類似と判断される場合がある。
②商標審査官は商品と役務の間に比較的明確な境界があると想定しており、両者は一般に別個の商業活動として扱われている。
③商標審査官は一般消費者の認識を判断基準としている。
混同が生じる可能性があるか否かについても、比較的安定した消費者構造および市場認識を前提として判断されている。

しかし、AI、プラットフォーム型ビジネスモデルおよび仮想産業が急速に発展する中、このような従来の類似性判断基準では、十分に対応できない場面がますます増えているように思われる。

従来の分類体系の安定性が揺らいでいる
社会および技術の変化により、中国の従来の分類体系はその安定性が揺らぎつつある。
単に「商品を販売する」形態から「統合的なソリューションを提供する」形態へと移行するにつれて、商品と役務の境界はますます曖昧になっている。
その結果、従来は異なる区分に属していた商品・役務の間に、強い重なりが生じている。
例えば、住宅設備・インテリア関連企業は、現在では物理的な商品を販売するだけでなく、住宅全体の設計・施工サービスも提供している。
また、自動車産業も、車両の製造、自動運転ソフトウェア、モビリティサービスのプラットフォームなど、幅広い事業を包含している。
そのため、従来の「商品」と「役務」の区別は、今日の市場における実際の関連性をもはや十分に反映していない。

さらに、AI技術は汎用性が高く、もともと業界の垣根を越えて利用される性質を有するため、AIの急速な発展は、異業種間の融合を一層加速させている。
例えば、画像認識技術は、医療、セキュリティ、品質検査、電子商取引など、さまざまな分野で利用できる。
また、大規模言語モデルは、教育・研修、広告制作、ソフトウェア開発支援、行政サービスなどに活用できる。
したがって、類似性の判断において、もはや硬直的な「商品か役務か」という分類のみに依拠することはできない。
今後は、その基盤となる技術の仕組みや、それによって生み出されるユーザー体験も考慮する必要がある。

また、中国ではエコシステムを基盤とした競争やプラットフォーム経済が台頭している。
主要なインターネットプラットフォームは、エンターテインメント、通信、決済、小売、物流、クラウドサービスなど複数の分野にまたがって事業を展開し、複雑なビジネスエコシステムを形成している。

消費者は一般的に、こうした企業が複数の領域で事業を行うことを「当然のこと」と認識するようになっている。ブランド認知も単一の製品に紐づくものではなく、「エコシステムブランド」としての性質を帯びている。

その結果、従来は無関係とされてきた商品/役務の分類であっても、プラットフォームというビジネスの文脈では、ブランドの事業領域が拡張されるとの消費者の期待により、出所の混同又は誤った関連付けが生じる可能性がある。

現代の商標審査が直面する主要な構造的課題
中国の商標審査は、現在いくつかの重要な構造的課題に直面している。

中国の「類似商品・役務区分表」は、現代のビジネスにおける急速な変化に後れを取ることが多い。
同区分表とニース国際分類は定期的に更新されているものの、ビジネス上のイノベーションは絶え間なく、リアルタイムで進展している。
そのため、商標分類と実際のビジネスの特性との間には、避けることのできない時間的なずれが生じ、その乖離が拡大している。
例えば、オンライン英語学習プラットフォームで使用される、実在の人物又はアニメーションによるバーチャル対話キャラクターは、教育サービス(類似群4101)に属するのか、それとも娯楽サービス(類似群4105)に属するのかという問題がある。

確立された先例や明確な分類指針が存在しない場合、商標審査官による類否判断には、必然的にばらつきが生じる。実務上、審査官は、現在の市場実態に即した判断を下すため、補足的な説明、関連する先例、さらには業界横断的な分析に依拠しなければならないことが多い。
さらに、審査官や審査機関によって、「関連性」の捉え方が異なる場合がある。
例えば、「決済用ソフトウェア」と「金融サービス」は類似するのか。
また、自動運転システムは「自動車製造」の一部として捉えるべきなのか、それとも独立したソフトウェア関連サービスとして扱うべきなのか、といった問題がある。

現在、これらの問題について、広く受け入れられた統一的な見解は存在しない。
市場における認識や業界慣行に基づき、状況に応じて柔軟に判断する必要がある。

また、消費者認識の変化も混同のおそれの判断に影響を与えている。今日の若い消費者は、業界横断的な事業展開やブランドコラボレーションに慣れ親しんでおり、それらを抵抗なく受け入れる傾向がある。たとえば:
・国有薬局によるコーヒー飲料の販売 
・コーヒーチェーンと酒類ブランドのコラボレーションによるアルコール飲料の販売 
・小中学校による独自の文化的IP商品やマスコットの制作 
・スマートフォン企業による金融サービスの提供

このような業界横断的な商品・サービスや共同ブランド商品は、もはや一般消費者にとって驚くべきものではない。
これは、消費者の認識が絶えず変化していることを意味する。この変化は、消費者がブランド間の関連性をどのように捉えるかに影響を及ぼし、混同のおそれの判断にも影響を与える。

商標の類否判断における今後の傾向
現在の商標審査基準は、類否判断に関する従来の法的枠組みから完全に脱却したものではない。
しかし、区分又は類似群の境界を越えて類似性を認める事例が増えていることは、注目すべき動きである。

第5類と第31類の類似性
2023年、異議申立て第0000098660号において、中国国家知識産権局は、異議申立の対象となった商標「冀中/ JI ZHONG(&図形)」(出願第54716321号)について決定を行った。
当該商標は、第5類の「殺虫用の獣医科用洗浄剤」及び「獣医化用化学薬剤」を指定していた。

被異議商標は以下のとおりである:
・「冀中薬業/JIZHONG YAOYE+漢字」(登録番号第5880159号)
第31類の「動物用飼料」及び「家畜用塩」を指定 
・「冀中獣薬/JIZHONG SHOUYAO+漢字・図形」(登録番号第44519784号)
第31類の「ペットフード」及び「ペット用飲料」を指定

商標局は、これらの商標の指定商品について、次の点で類似していると判断した。

機能・用途・販売経路・対象となる消費者

指定商品が類似すると判断されたうえ、異議申立対象の商標と被異議商標に含まれる識別要素「冀中(JI ZHONG)」が実質的に同一であることから、両商標を併存使用すると消費者の混同や誤認を生じさせるおそれが高いとされた。

また、(2016)京73行初第4951号において、北京知識産権法院は、後願の商標と先行商標が、同一又は類似の商品について使用される類似商標に該当するとの判断を下した。

先行商標「AVAILA」(登録番号第1099573号)は第5類を指定し、同類の「医療用動物飼料添加剤」について登録されていた。
これに対し、後願商標「安維楽/AN WEI LE・AVAILA」(登録番号第6947874号)は第31類を指定し、「動物用飼料」「動物用穀物加工副産物」及び「ペットフード」について登録されていた。

区分表上は両者に直接の対応関係がないものの、裁判所は両区分の商品が以下の点で密接に関連すると判断した。

第6類と第9類の類似性
2020年異議申立て第0000143294号において、中国商標局は、二つの商標の指定商品が機能及び用途の面で一定の共通性を有しており、相互に関連する商品に当たると判断して、異議決定を下した。

異議申立ての対象となった商標 「CJSJ」(出願第34683146号)は、第9類の「電子錠」および「生体認証指紋ドアロック」を指定。
被異議商標 「CJSJ」(登録第3645765号)は、第6類の「金属製ノズル」および「金属製建築部材」を指定

商標局は、異議対象商標が引用商標と同一であることから、両商標が併存して使用された場合、消費者に混同を生じさせるおそれがあると判断した。

第1類と第5類の類似性
商標評審委員会(Trademark Review and Adjudication Board 以下「委員会」という。)は、商評字〔2026〕第0000015589号において、以下の係争商標について無効の裁定を下した。

係争商標:「秋施宝」(登録第40790935号)
指定商品:第5類「農業用殺菌剤、殺虫剤など」

引用商標:「施宝蜜」(登録第5360571号)
指定商品:第1類「化学肥料、植物用肥料など」

委員会は、係争商標の指定商品と引用商標の指定商品は類似すると判断した。
また、両商標は、文字構成及び称呼の点においても類似すると認定した。
そのため、両商標が類似商品について併存した場合、関連公衆が商品の出所について混同又は誤認するおそれがあるとして、両商標は類似商品に使用される類似商標に該当すると判断した。

類似群0611と類似群0607~0609及び0616との類似性
商標評審委員会は、商評字〔2025〕第0000367889号において、以下の係争商標について無効の裁定を下した。

係争商標:「小吉」(登録第45395327号)
指定商品:第6類・類似群0611「金庫(金属製又は非金属製)」

引用商標:「小吉」(登録第17011734号)
指定商品:第6類・類似群0607~0609及び0616「金物類、ろう付け用合金など」

商標評審委員会は、両商標の指定商品は、機能、用途及び流通経路の面で密接な関連性を有すると判断した。
そのため、両商標がこれらの密接に関連する商品について併存した場合、関連公衆が商品の出所について混同するおそれがあると判断した。

類否判断は今後どのように変化するか
これらの決定からは、商標審査及び司法実務において生じつつある、いくつかの新たな傾向を読み取ることができる。

分類体系から実際の取引状況を重視する判断への移行
今後、中国の「類似商品・役務区分表」は、類否判断における中核的な基準ではなく、参考資料の一つとして位置付けられるようになる可能性がある。
これに伴い、審査官は、次のような点をこれまで以上に重視するようになると考えられる。
•商品又は役務がバリューチェーンにおいて果たす機能的役割 
•企業全体の事業構造を踏まえた市場における位置付け 
•商品又は役務の実際の利用場面及び購入・利用時におけるユーザー体験

消費者の認識が重要な判断要素となり、混同のおそれの判断基準も、分類上の判断だけにとらわれず、より動的で、消費者の行動実態に基づくものとなるべきである。

類似性を評価するための新たな基準
AI時代においては、商品・役務の類似性を評価する際、技術的属性やデータ上の関連性が、これまで以上に重視されるようになると考えられる。
審査官は、例えば次のような点を検討することになる。
•商品又は役務が、同一の技術プラットフォーム又はアルゴリズム基盤を共有しているか 
•商品又は役務が、同一のデータ資源を共有しているか 
•商品又は役務のビジネスモデルに相乗効果が認められるか 

巨大ブランドに対する、より厳格な基準の適用
アリババ、ByteDance、Meituan、Tencentなど、市場において高いブランド拡張力を有する大企業については、その現実の影響力を適切に反映するため、混同のおそれの判断に際して、より厳格な基準が適用される可能性がある。
また、審査官は、いわゆる「一般的なブランド」と「エコシステム・ブランド」とを区別して評価するための判断手法についても、検討する必要がある。

もはや単なる「分類体系」の問題ではない
今日のデジタル化、インテリジェント化及びプラットフォーム化が進展した産業環境において、従来の商品・役務の類似性判断の仕組みは、構造的な課題に直面している。
今後の動向については、消費者の認識、技術の進歩、産業の融合及び企業のビジネスエコシステムといった観点から検討する必要がある。
類似性の判断は、もはや単なる「分類体系上の問題」ではなく、法的、経済的、技術的及び社会的な観点を総合的に考慮すべき複雑な問題となっている。
法的思考を継続的に更新し、新たな時代のビジネスロジックを的確に理解することによって、初めて商標の類否について、より正確かつ公正な判断を行うことができる。


[出典:ROUSE]


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