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2026.09.25IPアメリカ:実使用の証拠不足を理由に登録を取り消された例


アメリカ:実使用の証拠不足を理由に登録を取り消された例

米国において使用に基づく商標を登録している場合、出願時点でその商標が実際に商取引において使用されていたかの確認を求められるケースが発生している。

第三者が米国特許商標庁(USPTO)に対し、再審査を請求する制度が開始されている。
この場合、商標権者は出願時点で、その商標を付した商品が実際に商取引において流通していたこと、または当該商標を使用して役務が実際に提供されていたことを、直接的な証拠によって立証する必要がある。

ここでいう商取引には、連邦議会の規制権限が及ぶ取引、複数の州にまたがる取引、米国と外国との間の取引などが含まれる。

商品商標については、当該商標を付した商品が実際に商取引において流通していることが必要となる。
またサービスについては、商標を役務と関連付けて使用し、その役務が実際に提供されていなければならない。
したがって、役務の提供を伴わず、将来提供する役務の宣伝・広告に商標を使用しただけでは、十分な使用とは認められない。

以下で紹介する事案は、出願時点での使用を十分に立証できなかったことを理由に、登録されていたサービスマーク「DISCUSS.IO」が取り消された事例である。

背景
当事務所では、第三者が請求を行うか、または米国特許商標庁(USPTO)長官が職権で開始できる、2020年商標近代化法(Trademark Modernization Act of 2020)に基づく「取消審査(Expungement Proceeding)」および「再審査(Reexamination Proceeding)」について過去に説明している。
これらは、商標権者の同意を要することなく開始できる手続である。
登録商標の使用状況について、次のような理由に基づき審査が行われる。
(a) 登録に係る商標が、指定商品または指定役務について、米国の商取引において一度も使用されていないこと。
(b) 使用に基づく出願において、出願日時点で、商標が指定商品または指定役務について使用されていなかったこと。
(c) 使用意思に基づく出願(Intent-to-Use Application)において、使用主張補正書(Amendment to Allege Use)の提出日時点で商標が使用されていなかったこと。

当事務所はこれらの制度について、「Trademark Law Alert - Regulations Implement the Trademark Modernization Act of 2020」において解説している。
また、米国における商標およびサービスマークの使用要件については、「U.S. Requirements for Establishing Use of a Trademark in Commerce」において説明している。

DISCUSS.IO事件
第三者は、第38類のストリーミングサービス、および第42類の市場調査の実施・分析に用いるウェブベースのソフトウェアの一時的な利用提供について登録された「DISCUSS.IO」の再審査を請求した。
請求人は、出願時点でこの商標が実際には商取引において使用されていなかったと主張した。
また、権利者が第38類の役務について、使用を裏付ける適切な使用見本を提出していなかったことなどを指摘した。
審査官は、不使用を示す一応の根拠があると認め、請求人に有利な判断を下した。

権利者による不服申立てを受けたが、商標審判部(TTAB)は審査官の判断を維持した。
その結果、出願時点で、商取引において実際に提供された役務について商標が使用されていたことが立証されていないとして、TTABは使用に基づく登録の取り消しを命じた。
不服申立てに際し、権利者は理由書に請求書(invoice)を添付して反論した。
しかし、これらの証拠は不服申立て後に提出されたものであった。
審理記録は不服申立て前に完備していなければならないため、TTABは請求書の提出が遅すぎると判断し、証拠として考慮しなかった。

TTABによる証拠評価
審判手続において、権利者は請求書(invoice)を提出して商標の使用事実を立証しようとした。
しかし、これらの請求書(invoice)は不服申立て後に提出されたものであり、審判記録は申立て前に完備している必要があることから、TTABはこれらを時機を逸した証拠として採用しなかった。
権利者が提出していた証拠は次のとおりである。


1.宣伝・広告資料
2.利用者向けガイド
  これらについては、権利者自身もTTABも、役務が実際に提供されたことを証明するものではないとの認識で一致していた。
3.当該サービスを紹介する記事
  これらの記事は、その内容が真実であると仮定しても、間接的な証拠にすぎなかった。
  TTABは、記事に掲載された画像が、権利者の販促資料で繰り返し使用されている素材画像のように見えることなどを理由に、証拠として不十分であると判断した。
4.Wayback Machineに保存された2016年当時のウェブサイトのスクリーンショット
 この証拠は出願日より5年以上前のものであり、出願時期と合理的に近接した時点の証拠とは認められなかった。

TTABは、権利者が、商標権を留保することのみを目的とした名目的な使用ではなく、当該商標について、真正な商業上の使用(bona fide use)が行われていたことを示すための当該事実を直接認識している者による宣誓書や証言などの直接証拠を提出していなかった点を重視した。

その結果、TTABは、権利者が提出した証拠では、出願日時点において当該商標を用いた役務が実際に商取引上提供されていたことを立証するには不十分であると判断した。
そして関係区分に係る登録を取り消す決定を維持した。
(In re Discuss.io Inc., Reexamination No. 2023-100526R, Reg. No. 6729238, TTAB, July 17, 2026) こちらから参照ください。

出典元代理人のコメント
本件のように、米国における商標出願は、使用見本(specimen)を添付し、「商取引上の使用(use in commerce)」に基づいて行うことができる。
これに対し、商標を将来的に使用する意思に基づく、使用意思出願(Intent-to-Use Application)によって出願することも可能である。
この場合、登録を受ける前に、使用見本を添付した使用宣誓(claim of use)を提出しなければならない。
また、本国登録に基づく出願も認められており、この場合は登録時点までに使用宣誓や使用見本を提出する必要はない。
しかし、出願の根拠を問わず、すべての登録商標について、指定商品または指定役務に関して当該商標が継続して商取引上使用されていることを示す宣誓書と、適格な使用見本の提出が求められる。
これは、原則として登録後6年目の期間内(さらに6か月の猶予期間あり)に行わなければならない。
そのため、商取引において流通された商品や提供された役務について、商標が適法に使用されているかを争う異議や再審査請求は、軽視すべきではない。
また、不利な判断に対して不服申立てを行う際には、その前に必要な証拠を十分に提出し、証拠記録を完成させておくことが重要である。
商標の使用を立証するうえで有力な証拠としては、次のようなものが挙げられる。


1.使用宣誓を行った時点において、当該商標のもとで商品が実際に商取引において流通し、または役務が実際に提供されていたことを示す使用見本(specimen)その他の客観的な書証


2.当該商標の商取引上の使用について直接の知識を有する従業員または顧客による証言

使用に基づく登録を取得していた場合であっても、必要な場面でこのような証拠を提出できなければ、米国商標登録が取り消される可能性がある。


[出典:Cowan Liebowitz & Latman PC]


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