2009.09.08IPベネズエラ:出願に関する新たな要件 他
ベネズエラ:出願に関する新たな要件
ベネズエラ特許庁は、2009年5月4日付通知により、事前商標調査(オフィシャルサーチ)を出願時に義務付けることとした。
特許庁が調査結果を出すまで5~9日間かかるため、緊急の出願の場合には調査結果を待たなければならない不都合が生じる。特にパリ条約による優先権主張を行う場合には留意しなければならない。
ベネズエラはアンデス条約に基づく決定486号によって国際分類を採用していたが、同条約から脱退し、再度採択した1955年商標法ではローカル分類を採用している。従って、現行商標法での出願はローカル分類に従わなければならないが、事前調査は過去に採用していた国際分類に基づいて行われなければならない。更に、出願するローカル分類毎に個別の調査が行われることになる。例えば、国際分類第9類の全指定商品をカバーする出願の場合、これはローカル分類の21,24,25類に相当するが、3つのローカル分類に応じて第9類の調査を3つ行わなければならない。
- 解説
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ベネズエラが旧商標法を復活させた結果、制度の使い勝手が悪くなっていますが、今回の事前調査義務付けは更なる改悪と言えるでしょう。同一国際分類について重複調査が必要となるのは、多区分出願を採用していないためですが、非常に非効率的です。
そもそも、旧法の復活は、反米路線を歩むベネズエラ(チャベス政権)が親米路線のアンデス共同体から脱退したことに端を発していますが、今年2月にチャベス大統領の再選制限が撤廃されたため、ベネズエラは当面国際調和と逆行することとなるのかもしれません。
なお、ベネズエラの旧法復活に関しては、IP News2008年12月号、2009年1月号もご参照ください。
[出典:Moeller IP Advisors]
アルゼンチン:更新申請手続きの簡略化
アルゼンチン特許庁は、2009年6月4日から4ヶ月間、商標の更新申請の簡略手続きを実施する規則604/09号を2009年5月15日付で発した。当該簡略手続きを受けるには下記の要件を満たす必要がある。
- 登録証、登録証明書又は代表者か代理人が署名した登録証コピーと一緒に申請する。
- 登録名義人と申請人が同一である。
- 申請書に記載された情報が登録されているデータベースの情報と一致する。
上記に加え、当該手続きは更新時における指定商品・役務の区分変更が不要の場合でなければ認められない。当該手続きを受けたい場合は、申請書に「更新簡略手続き」と記載する必要がある。
- 解説
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当該運用は、更新申請手続きの簡略化により、更新処理の遅滞を緩和することが目的のようです。
当該運用は4ヶ月間限定で試験的に実施されるものです。このような実験的な試みは日本ではなかなか考えられませんが、施策の有効性を確認するうえでは、なかなか良い方法かもしれません。
[出典:Baker & Mckenzie]
ペルー:新知的財産法の発効
2009年2月1日、アメリカとの自由貿易協定で課された義務を果たすべく、ペルーにおいて法第29316号が発効された。新法で導入された重要な条項は下記の通りである。
- 1出願多区分制度、出願・登録の分割制度導入
- R記号は登録商標にのみ使用が許され、違反した場合は商品が差し止められる。
- 正当な理由に基づかない異議申立請求(法による定義はない)に罰金を科す。
- 先行出願、登録又は著名商標を地理的名称として登録することを禁じる。
- 解説
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ペルーは、ベネズエラとは対照的に米国とFTA、TPA(貿易推進協定)を締結した結果、商標制度の国際調和が図られてきています。両国を対比すると、商標制度が外交と密接に関係していることが改めて実感されます。
上記3.のとおり正当な理由のない異議申立は、最大USD62,500の罰金の対象となります。しかも、どのような申立が正当な理由無き申立てに該当するかは明確ではないため、安易な異議申立には注意が必要です。
その他には、商標権侵害訴訟は180日(休日を除く)以内に処理されなければならないという改正も盛り込まれています。
[出典:Baker & Mckenzie]
アルバ:オフィシャルフィーと新手続き開始
アルバ特許庁は2009年6月1日からオフィシャルフィーを約13%値上げし、新手続きも導入した。
主な変更としては下記が挙げられる。
- 出願費は1商標3クラスまでを含む
- 早期調査(3日)が可能となった
- 権利者による調査が可能となった
- 早期登録制度(5日間)が可能となった
- 包括委任状の登録が導入された
- 上記は無期限に有効である。
- 猶予期間内での更新費に追加費用がかかる
- 代理人変更登録が導入された
- 訂正に関する費用が導入された
- 解説
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今回の料金改定で値上げがされましたが、従来は区分数にかかわらず出願費用は一律であり、むしろ今まで気前が良すぎたということでしょうか。
ちなみに、アルバという国にあまり馴染みはないと思われますが、当該国は西インド諸島南端に所在するオランダ領の島であり、アルバ特許庁の謳い文句によると、北米・ヨーロッパ・アジアと南米を繋ぐ理想的なハブとのことです。
[出典:Moeller IP Advisors]