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2016.01.13IPEU:商標制度改正 他


EU:商標制度改正

2015年6月23日号でも一部お伝えしたが、欧州議会は、2015年12月15日付本会議において、共同体商標規則・商標ハーモ指令・欧州共同体商標意匠庁(OHIM)手数料規則を改正する商標制度改革パッケージ法案についてのEU理事会の立場を承認する立法決議を採択した。

共同体商標規則は欧州連合商標規則(以下「EU商標規則」という)に改称され、OHIM手数料規則は廃止され、対応する内容がEU 商標規則にその附属書として組み込まれる。EU商標規則はEU官報への掲載から90日後、2016年3月に発効される予定であり、商標ハーモ指令は同掲載から36月以内に各加盟国によって履行されなければならない。しかし無効手続等、一部の手続は7年以内の履行となる。
予定されている主な改正内容は以下のとおり。

1)名称変更

欧州共同体商標意匠庁(OHIM)の名称を「欧州連合知的財産庁(EUIPO:European Union Intellectual Property Office)」に変更し、共同体商標の名称を「欧州連合商標(EUTM)」に変更する。

2)商標の定義規定の変更

旧規則において商標は「視覚的に表示できるあらゆる標章(any signs capable of being represented graphically)」と定義されていたが、「視覚的に表示できる(being represented graphically)」の文言が削除され、音声ファイル、CADファイル等の新技術を使用した標章にも範囲を拡大した。

3)費用の変更

旧規則において、3区分までをカバーするオフィシャルフィーが設定されていたが、今後は区分毎にチャージされる。

4)手続の変更
  • 情報提供
    情報提供が可能な期間について異議申立期間終了まで、異議申立が請求された場合は決定が下される前までとなった。
  • クラスヘディングの指定商品・役務は文字通りの意味に解される。
    2012年06月21日以前にクラスヘディングで出願したCTM商標の所有者は、出願時に有効であったニース国際分類に基づき、クラスヘディングの文字通りの意味ではなくそれ以上の範囲を保護する目的で出願したことを記載した宣誓書を提出しなければならない。本宣誓書は2016年09月24日までに提出しなければならない。
    2016年09月24日までに宣誓書が提出されなかったクラスヘディングの登録はその用語が示す通りの商品のみを指定したものと看做される。
  • 異議申立請求時における先行商標の使用証明
    旧規則においては公告日以前の5年であったが、後願商標の出願日(又は優先日)以前の5年について求められる。
  • 国際商標の異議申立期間
    旧規則では公告日の6か月後から3か月であったが、1か月後から3か月となった。
  • 識別性欠如に基づく無効請求に対する識別性獲得の起算日
    旧規則においては無効請求日前の識別性の獲得であったが、今後は登録日以降の獲得が求められる。
  • Own name defence(商号としての使用主張)の制限
    旧規則においてCTM所有者は第三者が取引の過程において標章を個人名又は住所、商号として使用することを禁じることはできなかったが、新規則では当該条文から「商号」が削除され、今後商号として使用した場合は商標権侵害となる可能性がある。
  • ライセンシーの権限
    通常使用権者は商標権者の同意があった場合のみ侵害に対する法的行為を取ることが可能であり、専用使用権者は商標権者が書面による通知によって知らされた後、適切な期間内に対応しなかった場合、法的行為を取ることができる。
  • 優先権主張
    従来は出願後に優先権主張が可能であったが、今後は出願と同時に請求しなければならない。優先権書類は出願から3か月以内に提出する。
  • 審判に関する行政スキームの調整
    異議申立及び無効審判について、加盟国は裁判所ではなく行政機関に提起できるようスキームを整えなければならない。各加盟国はこの調整期間として7年を付与される。
5)トランジットの侵害品に対する権利者の保護

改正までは、欧州連合の域内に流通させる目的で輸送された侵害品でなければ税関において差し押さえることができなかったが、改正後は、域外に流通させる目的で単に「通過」(transit)するのみの侵害品も差押の対象となる。しかし、商品の所有者が商品の最終目的地において商標権者が侵害を主張できる権利がないことを証明できる場合は適用されない。

上記のうち、特に2012年06月21日以前に出願・登録されたCTMをお持ちの場合は、自社のCTMの指定商品リストを早速検討することをお勧めする。尚、弊社案件に関して該当案件がある場合は随時お知らせする予定である。
尚、EU公報に掲載された改正規則は以下で確認できる。


[出典:Staeger & Sperling]


セルビア:異議申立制度導入

セルビアでは以下の商標法改正が予定されている。

1)情報提供制度導入

現在セルビアでは絶対的・相対的事由に基づく書面による情報提供を受け入れているが、改正法では絶対的事由による情報提供のみ公告日から3か月以内に提出しなければならない。これは何人も提出可能であり、同人が当事者として審理に加わることはない。知的財産庁はこれを出願人に通知し、出願人は15日以内に書面で回答しなければならない。

2)異議申立制度導入

改正法では実体審査は異議申立が請求された場合のみ行われる。異議申立は先行商標権者、著名商標の権利者、ライセンシー、著作権者その他の知的財産権の権利者によって請求される。これらの先行権利者が後願商標の登録に対する同意書を提出した場合、当該商標は拒絶されない。

3)登録証が任意

改正法では登録証は要請があり、費用を支払った場合のみ発行される。


[出典:SD PETOSEVIC]


タイ:特別控訴裁判所設立へ

タイでは2015年12月15日から知的財産裁判所(IPIT裁判所)におけるアピールの手続が変更された。
従来IPIT裁判所の決定に対するアピールは最高裁判所に提起しなければならなかったが、今後は特別控訴裁判所(Specialized Appeal Court)に提起することになる。特別控訴裁判所は仏暦2558(2015)年特別控訴裁判所設定法に基づき設立されるもので、その手続には民事訴訟法のアピールに関する条文が適用される。民事訴訟法第247条及び244条1項に基づき、控訴院の決定が終審となる。

これに不服がある当事者は最高裁判所に聴聞を要請する上申書を提出できる。
最高裁判所長官は副長官と3名の判事から成る選定判事会(quorum)を任命し、半数以上の判事が賛成しなければ聴聞が開催されない。

最高裁判所は聴聞を開催する義務はなく、重大な事件に関してのみ開催する。
民事訴訟法第249条によれば、重大な事件とは公益又は公序に関する問題、最高裁判所先例と抵触する控訴裁判所の判決に関する法律問題、最高裁判所に先例がない控訴裁判所判決に関する法律問題、他の裁判所の最終判決に抵触する控訴裁判所の決定に関する法律問題、司法解釈、その他最高裁判所長官の通知に規定された問題を含む。

現時点では特別控訴裁判所は未だ設立されていないが、設立されるまでIPIT裁判所の決定に対するアピールは最高裁判所へ提起することになる。


[出典:Satyapon & Partners]


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