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商標・著作権・特許・意匠・ドメインネームなど、知的財産権全般にわたる世界中の出来事を集約。
注目すべき主なニュースをわかりやすい記事にまとめ、リリースいたします。

2016.11.29IPインド:改正法施行 他


インド:改正法施行

2015年12月8日付IPニュースでお伝えした通り、改正商標法が早ければ今月下旬施行される予定である。
改正法においては以下が予定されている。

  • オンライン出願の奨励:紙ベースの出願はオンライン出願より10%割高
  • 使用ベースの出願における宣誓書提出
  • 著名商標の認定申請の規定
  • 出願と申請に係る書式を8つに限定
  • 早期審査の適用拡大:現在審査報告書発行までに適用されているが、登録証発行の各段階で実施
  • 異議申立手続の迅速化:異議申立通知が特許庁サイトで公表された後、正式な通知を待たずに答弁書の提出可能。当事者双方は異議申立関連の申請書類を特許庁に提出すると同時に、相手にも副本を提示しなければならない。
  • 訂正手続の迅速化:訂正申請書の受領日より3か月以内に登録商標権者から答弁がなかった場合、申請人は訂正の根拠となる証拠を提出しなければならない。
  • 職権による訂正手続の迅速化:登録商標権者が書面によって登録の取消に同意した場合、登録官は同権者に通知を送付せずに手続を進める。
  • オフィシャルフィーの100%上昇

インドでの出願・更新を検討されている場合は、できるだけ早めに手続されることをお勧めする。


[出典:Lall Lairi & Salhotra]


カンボジア:証明商標に関する新規則発行

2016年08月30日、カンボジア商業省は証明商標の保護と登録に関する手続に関する宣誓書を発効した。同書は証明商標の登録、保護期間、無効、取消等の手続と必要書類を定めるものである。
登録にあたり、出願人は法人格を有し、商品・役務の品質・質を証明する能力を有するものでなければならない。出願は所定の書式に従い、カンボジア語又は英語で申請し、宣誓書、証明能力を示す証明書、証明商標の使用に関する規則等を伴わなければならない。
パリ条約に基づく優先権主張も可能であるが、海外出願人はカンボジア国内の代理人経由で出願しなければならず、本国登録又は出願書と公証済委任状が求められる。いずれは証明商標に個別のオフィシャルフィーが定められるが、現時点では通常商標出願に係る費用が適用される。
出願が要件を満たさない場合、出願人は6か月の応答期限を与えられ、登録と同時に商標に関する情報と使用に関する管理規則が公告となる。証明商標に対しては公告後90日以内に異議申立の請求ができる。
証明商標は出願日から10年有効であり、更新可能であるが、権利者は毎年知的財産局に商品と生産者のリストを提出しなければならない。このリスト及び関連文書はカンボジア語に翻訳しなければならず、当局からの通知後90日以内に提出されなかった場合は取消となる。


[出典:INTA Bulletin]


カンボジア:電子取引法設立へ

カンボジア商業省は全90条に渡る電子取引法を作成中であり、2017年に議会で採択する予定であることを発表した。同法はe-ASEAN枠組協定において各加盟国に設立が求められていたものである。カンボジアはASEANにおいて、現在でも未だ電子取引法が発効されていない国である。


[出典:khmertimeskh.com]


サモア・キルギス:オフィシャルフィー変更

サモアでは2017年01月01日よりオフィシャルフィーが変更される予定で、全般的に上昇が見込まれる。

キルギスでは2016年10月26日、商標を含む知的財産関連のオフィシャルフィーが変更された。重要なポイントは、2016年03月18日付規則第135号を受け、支払通貨がUSDからキルギスソムに変わったことで、これにより実質すべてのオフィシャルフィーが変更となっている。


[出典:AJ Park, Mikhailyuk, Sorokolat and Partne]


カナダ:ケベック州看板におけるフランス語表記の明確化実施

2016年6月14日号でお伝えした通り、カナダのケベック州において同州内で今後看板におけるフランス語の表記を明確にする規制改正案が提出されていたが2016年11月24日から施行されることとなった。これはフランス語以外の言語が使用されている看板について、フランス語による説明の併記を義務付けるもので、既存の看板についても改正規則施行後3年以内に訂正が求められる。


[出典:Smart & Biggar/Fetherstonhaugh]


中国:海外出願人による初めての音商標登録

中国では2016年08月21日付で日本企業による日用品についての音商標が認められた。これは海外商標所有者による初めての音商標登録となる。
2014年05月01日の改正により、中国ではこれまで400件の音商標が出願されたが、現在まで3件しか登録が認められていない。
このうち最初の登録がCCTVによるもので、日本企業の登録は2番目となる。3番目の登録はGuangDong YiHua Investment Group CO. Ltdによるものである。


[出典:CCPIT Patent & Trademark law office]


中国:新サイバーセキュリティー法採択

11月07日全国人民代表大会は、新しいサイバーセキュリティー法を可決した。
同法は全8章、79条からなり、2017年06月に施行予定である。本法は同国内でユーザーネットワークを利用、維持、運営、構築するすべての団体又は個人並びにネットワークセキュリティーの管理と監視を行う責任者に適用される。
同法は各企業に「公衆と政府の監視を受け入れる(第9条)」ことを要求し、政府に「攻撃、侵略、干渉又は破壊に対する重要な情報のインフラ」を保護するために「ネットワークセキュリティーのリスクと脅威を監視、防御、対処」する権限を付与し(第5条)、ネットワーク運用者に対し「社会的道徳と商業上の倫理を順守する」(第9条)ことを求めるが、その具体的な内容については定義していない。更に、重大なセキュリティー上の問題に関して、情報部は「一定地域のネットワークコミュニケーションについて、規制等暫定的措置を取る」(第58条)ことが認められている。
同法は、データの局所化も要求しており、「重要情報基盤の運営者」は個人情報を始め、各データを中国国境内に保管することを義務づけられる(第37条)。
個人情報は氏名、生年月日、ID番号等個人を特定できる情報を意味する(第76条)。
新たな規制によって、インスタントメッセージング・サービスを始めとするインターネット企業は、ユーザーに実名を含む個人情報を登録させ、「禁止」されているコンテンツの検閲を行うことが要求される。実名ポリシーは、匿名性に制限を加え、オンラインコミュニケーションの自己検閲を促進する効果がある。
検閲の強化に加えて、同法はその名にふさわしくサイバーセキュリティーに新たな要求を課している。企業は「ネットワークセキュリティー事象」を政府に報告し(第51-58条)、侵入について顧客に通知する義務を負うだけでなく、当局による捜査中に「技術支援」を行うよう記されている(第10, 21, 23, 25条)。「技術支援」もまた明確には定義されておらず、暗号解読のバックドアを含め政府の監視への協力を意味している可能性もある。

このサイバーセキュリティー法によって、いくつかのカテゴリーのコンテンツが犯罪とみなされるようになり、「社会主義体制の崩壊」「虚偽情報の捏造あるいは流布による経済秩序の乱れ」あるいは「分離主義の扇動や国の結束を損う行為」を促すコンテンツ等が対象となっている(第12、14条)。
さらに第5章では本法に違反した場合の様々な罰則が規定されている。中国では従来からネットの検閲が実施されているが、今回の法律はそれよりもさらに高い権限を持つものとして施行される。ただし、一部の条文については明確に規定されていないこともあり、施行細則でどのように実施されるか注目される。
同法の原文は以下のサイトで見ることができる。


[出典:Squire Patton Boggs]


中国:信義則違反に関する初めての判決

2016年11月03日、北京知的財産法院は、不使用取消審判において証拠捏造した商標権者に対して罰金を科す判決を下した。

2013年、Fujian Qianchuan Co., Ltd. (以後"Qianchuan"と呼ぶ)は「食用油」についての登録商標「家家JIA JIA」に対して不使用取消審判を請求した。2014年04月11日、商標局は当該商標を取消す決定を下した。商標権者はこれに対して商標評審委員会(TRAB)に不服申立を行い、2010年から2012年までの使用証拠を提出したところ、同委員会はこれを認め、商標局の決定を覆した。
Qianchuanはこれに対して北京知的財産法院へ出訴した。提出された証拠は商品テスト報告書、請求書、宣伝に関する証書、ムスリム食品許可証のコピーを公証したものであった。これに対してQianchuanは同じものの原本を提出したが、これは商標権者が提出したものと差異があるもので、明らかに改編した跡があった。更に宣伝に関する証書について、同人がTRABに提出したものと北京知財法院に提出したものは異なっていた。商標権者は結局これらの原本を提出することができなかった。
以上のことから北京知的財産法院は、商標権者の提出した証拠を虚偽のものであると判断し、同人に対して10,000元の罰金を科す判決を下した。
これは同院が信義則に違反するとして最初に下した判決である。


[出典:Jiaquan IP Law Firm]


ニュージーランド:知的財産庁、地震により一時閉庁

ニュージーランド知的財産庁(IPONZ)は2016年11月14日の地震により、2016年11月15日まで一時閉庁した。この期間に設定されていた期限は、同庁開庁の翌日に期限が再設定されている。


[出典:Shelston IP Pty Ltd]


ニュージーランド:商標詐欺の被害者へ返金

ニュージーランドでは今年の03月、“公式商標出版機構”を自称する第三者団体IDRTMによって、ネット経由での公告と登録費用NZ$1,600以上の支払を求める多数の請求書が商標所有者に発送され、2016年03月10日から05月09日までの間に280人以上の権利者が同機構に送金した。
この問題は、ニュージーランド商業委員会でも取り上げられ、同委員会とANZ銀行が協力して、実際にIDRTMへ支払を行った権利者への返金を開始し、すでにNZ$60万が約110人の権利者に返還されている。
IDRTMの行為は1986年公正取引法に違反するものであり、同委員会は公的警告を発している。


[出典:AJ PARK]


モザンビーク:拒絶商標の再出願可能に

2016年09月02日、モザンビーク知的財産庁(IPI)は、同庁によって拒絶された商標について再出願を認める公式レターを発行した。以前、このような再出願が認められていなかったが、2016年03月31日付で発効となった改正法では当該条文は削除されている。


[出典:ENSafrica]


トルコ:不使用取消の対象商標の再出願は悪意と看做される

トルコ特許庁高等審議会(Turkish Patent Institute's Higher Council)は2016年08月22日、不使用取消対象商標の再出願は善意によるものとは看做されず、既登録は新出出願についての既得権を構成するものではないと決定した(2016-M-8281)。
この事件は、企業Aが2003年に区分6,19,20について登録した商標に対し、別の企業Bが同一商標を第20類に出願し、先行商標に対して不使用取消審判を請求したものである。案件は最高裁判所まで争われたが、この途中で先行商標権者Aは同一商標を同一区分に出願した。当該商標は公告となり、これに対し企業Bが異議申立を請求し、Aは裁判の結果生じるネガティブな結果を克服するために再出願を行ったものであり、悪意に基づくと主張した。企業Bは第20類に関しては、対象商標を再出願の商標に先行して使用していた。
高等審議会は、Aの先行商標は取消の虞があり、紛争の対象であった。したがって先行商標は異議申立の対象となっている商標に対する既得権を構成するものではなく、再出願は拒絶されなければならないと判断した。


[出典:Deris Patents and Trademarks Agency]


スイス:不使用に関する行政審判導入

スイスにおいて商標の取消審判は従来民事裁判所で扱われていたが、2017年01月01日より商標庁に対して請求できるようになる。
不使用取消審判にあたって、請求人が商標庁へ請求書と不使用の推定証拠を提出しなければならない。審判は異議申立と並行して請求できるが、この場合、異議申立手続は不使用取消の決定が下るまで中断される。尚、一部取消も可能である。
不使用の証明が請求人側にあることは重要である。この証拠は市場調査、第三者の証言、ネット調査等複数の書類によって証明しなければならず、商標庁が十分ではないと判断した場合は却下される。


[出典:TRADEMARCA]


グアテマラ:知的財産会議所設置

グアテマラでは、長年に渡る試みの末、このほど知的財産会議所(Chamber of Intellectual Property)が設立された。これは弁護士で構成される高度レベルの団体で、その最初の目的は名誉法廷(Court of honor)の設立である。名誉法廷は知財に係る専門官の業績を評価し、信義則に反していないか等の裁定を行う予定である。


[出典:Jauregui & Asociados]


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