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商標・著作権・特許・意匠・ドメインネームなど、知的財産権全般にわたる世界中の出来事を集約。
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2022.08.23IPEUIPO:NFTおよび仮想商品に関する指針を更新


EUIPO:NFTおよび仮想商品に関する指針を更新

メタバースがデジタル環境と物理的な世界との境界線を曖昧にしつつある。実生活でリアルタイム情報と仮想オブジェクトとが相互に影響し合う空間に足を踏み入れる自分を想像してほしい。これはテクノロジーの大きな前進であり、数多くのビジネスチャンスを生み出すであろう。しかし、この新しい世界で自社のブランドや知的財産をどのように保護すればよいだろうか。
商標はその保護機能により企業の注目を最も集め、また企業が商業的利益を得るための最新の機会をもたらす知的財産権かもしれない。仮想世界での使用や非代替性トークン(Non-Fungible Token、以下「NFT」という。)に関し、世界で最も認知度のあるブランドの多くは既に商標登録のための出願申請を行っている。ルイ・ヴィトン、グッチ、ヴァレンティノ、ナイキ、アディダス等のファッションブランドから、KFC、マクドナルド等のファーストフード企業まで、これらのブランドは自社の象徴的な商標のメタバースでの使用に向けて準備を進めている。
NFTは基本的にブロックチェーン技術を活用したデジタル資産である。NFTは唯一無二で分割不可能なトークンで、アイテム(すなわち、収集可能なデジタルアートあるいはゲーム内のアイテム)と関連付けられている場合が多く、ブロックチェーン技術を利用して所有権の情報を記録し、真正性を証明する。
NFTおよび仮想商品に関する商標を通じてブランドを保護することは、メタバースに関してのみならず、新技術やデジタルコンテンツのトレンド全般にわたって有益であろう。ここ最近、フランスの高級ブランドであるエルメスは、デジタルアーティストが作成したMetaBirkin NFTシリーズが同社の著作権を侵害したとして訴えを提起した。
メタバースにはブランドにとって新たな機会が存在するが故、ブランド保護の必要性がある。

NFTおよび仮想商品に関するEUIPOの指針
仮想商品・NFTに関連する表記を含む商標出願の急増を受け、欧州連合知的財産庁(EUIPO)はそれらの分類方法についての指針を発表した。この分類方法については2023年のガイドライン案(欧州連合の商標制度利用者にとって主要な参考資料)にも記されている。
EUIPOはNFTを「ブロックチェーン上に記録されている唯一無二のデジタル証明書で、デジタルアイテムを証明するものであるが、デジタルアイテムとは区別される」と定義している。
仮想商品およびNFTはデジタルコンテンツあるいはデジタル画像(digital content or images)として扱われるため、ニース国際分類上、第9類に属するとした。第9類には主に科学用あるいは研究用の機械器具、視聴覚用・情報技術用装置、および安全用・救命用器具が含まれる。そのような商品に関連する役務は、現行のプラクティスに沿って分類される。
EUIPOに出願する場合、“virtual goods”および“non-fungible tokens”の2表記は、いずれも単独では認められず、その“virtual goods”に関連する内容を(すなわち、“virtual goods, namely virtual clothing”と)明記する必要がある。NFTについては、NFTで証明されるデジタルアイテムを明記しなければならない。2023年公表予定のニース国際分類第12版では、"downloadable digital files authenticated by non-fungible tokens"が第9類に追加される予定である。
このようなタイプの出願の増加は、NFTがブランド認知・知的財産権保護のための貴重なツールであることを示している。今後ブランドはメタバースやオンラインで自社の商標を保護・管理することが不可欠になるであろう。EUIPOが発表した指針は、この種の保護を求める出願人のために明確な説明を提供している。


[出典:William Fry LLP]


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