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2026.03.10IP韓国:模倣パッケージに対する不正使用取消審判の行方


韓国:模倣パッケージに対する不正使用取消審判の行方

ニュートロ(※1)ブームの主役「곰표(コンピョ)」の小麦粉商標権者、「곰표」麺の商標権者によるパッケージ模倣行為に対し不正使用取消審判で反撃

ニュートロブームで国民的な人気を博している小麦粉ブランド「곰표」(熊印のハングル)商標を模倣して販売した企業の「곰표」登録商標の取り消しを命ずる特許審判院の審決が出され、注目を集めている(特許審判院2025.11.27.2024ダン1221, 1222, 1223, 1224審決)。

本件の経緯
「곰표」小麦粉商標の商標権者であり本件の審判請求人である大韓製粉は韓国の代表的な製粉企業の一つで、1955年から小麦粉、てんぷら粉などに「곰표」商標を使用してきた。
「곰표」は長い間登録及び使用されてきた韓国の代表的な長寿商標としてよく知られている。
一方、過去に大韓製粉から小麦粉の供給を受けてきた取引先である審判被請求人は1980年代から麺などの加工食品に「곰표」商標を登録・使用しており、両商標は長い間共存してきた。
しかし両社の営業領域が次第に重なり始め、居心地の悪い共存関係が続いていた。
その後2010年代後半、大韓製粉の「곰표」小麦粉の袋デザインをモチーフにした곰표衣類製品が人気を博し、「곰표」商標が使用された商品パッケージデザインがビール、化粧品など業種の境界なく幅広く使用されるようになった。
このような一連の現象は「곰표」商品のデザインの特徴が国内需要者に新たに認識されるきっかけになり、いわゆる「ニュートロ」ブームの火付け役となった。


 
このように大韓製粉の「곰표」商標が使用された商品パッケージデザイン(すなわち、特有の「곰표」の書体と白色・黄色・緑色の組み合わせ、及び独特の熊図形の結合; 以下、「本件トレードドレス」)が国民的な人気を博すや、被請求人は商標権を保有していた小麦粉加工食品(ブリトー、トルティーヤなど)のライセンシー(使用権者)を通じて本件トレードドレスの主な特徴を適用した製品を販売し、これにより大韓製粉の「곰표」商品との誤認・混同誘発の可能性が浮上した。 


 
使用権者による不正使用取消審判
これに対し、大韓製粉は被請求人の登録商標「   」が使用権者によって「不正使用」されたことを理由に商標法第119条第1項第2号に基づく商標登録取消審判を請求した。
同条項は、使用権者が登録商標と同一・類似の商標を、その指定商品または類似の商品に使用して、需要者に商品品質の誤認または他人の業務と関連した商品との混同を生じさせた場合、商標登録を取り消すことができるようにした規定であるが、商標権者が相当な注意を払った場合には取消を免れることができるとしている。
これは、商標権者に対し、使用権者の監督義務を課し、使用権者が商標制度の本来の目的に反して登録商標をその使用権の範囲を超えて不正に使用できないように規制することによって取引者と消費者の利益を保護することはもちろん、他の商標を使用する者の営業上の信用と権益も保護するための規定である。

被請求人はこれに対し、大韓製粉の「곰표」商品に使用された書体や白色・黄色・緑色の組合わせなどは商品の装飾的要素に過ぎず、出所表示機能はしていないので文字部分のみを基準として判断すべきであり、被請求人の商品に使用された文字商標「곰표」は、被請求人の登録商標の正当な権利範囲内の使用に該当し、小麦粉などを加工して作ったブリトー、トルティーヤなどの商品は被請求人の登録商標の指定商品と同一性の範囲に属するので、不正使用に該当しないという趣旨で反駁した。

しかし、特許審判院は「곰표」に白色・黄色・緑色の組み合わせと特有の熊図形が使用されたものは登録商標と類似の商標の使用に該当するとした。
また、被請求人が登録商標と同一範囲内で使用したという主張に対しても、商標法第119条第1項第2号は登録商標と同一範囲内の使用にも適用され得るということが法文上明白なので、仮に登録商標をそのまま使用した場合でも、他人の商品との混同を生じさせた場合は取消事由に該当すると判断した。
そして、被請求人の商品に使用された商標は国内で広く知られている大韓製粉の本件トレードドレスと全体的な構成とモチーフが極めて類似しており、文字部分の書体や熊図形の具体的な形状まで類似するとして、被請求人の登録商標を取り消す審決を出した。
今回の事件は登録商標を保有していることに乗じて、有名ブランドのパッケージデザインや製品コンセプトを模倣して不当な利益を得ようとする業者に警鐘を鳴らす事例であると評価される。

一方、被請求人は本審決に不服を申し立てて特許法院に審決取消訴訟を提起したところ、大韓製粉が長い間続いてきた厄介な共存関係から抜け出せるか、その行方が注目される。
 
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(※1)「ニュートロ(Newtro)」とは、新たな(New)と復古(Retro)を合わせた単語で、単に懐古する「レトロ」を超えて過去のものを現代的な感覚で再解釈して楽しむ現象を指すもので、韓国では過去に特定品目にのみ使用された古い商標を洗練された感覚でリニューアルし多様な品目に拡大使用して大きな人気を得るに至ったブランドが幾つもあるが、「곰표」がその代表的な一つである。



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