2026.03.10IPジャージー島:新たな知的財産制度の枠組み導入
ジャージー島:新たな知的財産制度の枠組み導入
ジャージー島の知的財産制度は、ここ数十年で最も重要な変革期を迎えている。
主要な国際条約の適用拡張および近代化された国内知的財産制度の導入により、同島は、歴史的に英国制度に依拠してきた体制から、世界的な知的財産枠組みの中で独立して機能する制度へと大きく転換しつつある。
これらの変更は、単なる技術的修正にとどまるものではない。
ジャージー島における商標、特許および意匠の登録、管理および執行の在り方を根本的に変革するものであり、権利者、代理人および当局に直接的な影響を及ぼすものである。国際的に事業を展開する企業や、知的財産の保有・管理拠点としてジャージー島を利用する企業にとって、この改正を正確に理解することは重要である。
2026年2月3日、ジャージー州議会(States Assembly)は、英国が加盟している以下の4つの主要国際条約について、その効力をジャージー島にも拡張するよう要請することに合意した。
特許協力条約(PCT)、ハーグ協定、マドリッド議定書およびニース協定である。
これらの条約拡張は、2024年9月に施行された特許および意匠規則の改正、ならびにジャージー島における初の本格的な商標登録制度の導入といった一連の改革を補完するものである。
新制度は、従来の英国登録に依拠する「セカンダリー」制度に代わる「プライマリー登録制度」を確立するものであり、ジャージー島がマドリッド議定書に参加するための制度的基盤を形成するものである。
この「プライマリー登録制度」は、英国依存型の従来制度からの実質的な脱却を意味し、ジャージー島の知的財産制度を国際標準と整合させる中核的な転換点となるものである。
特許:英国指定PCTのジャージー島への自動拡張
従来、ジャージー島において特許を有効にするためには、英国特許または英国を指定する欧州特許について、登録日から3年以内にジャージー島で再登録を行う必要があった。
ジャージー島における権利の存続期間は、基礎となる英国特許または欧州特許の存続期間と同時に満了する仕組みであった。
ジャージー島のPCT加入準備の一環として、2024年後半に手続規則が改正され、英国のPCT加盟の効力がジャージー島に拡張された場合に、PCT経由の保護を実施できる体制が整備された。
当該拡張が実現した後は、PCT出願に基づき英国で付与された特許は、ジャージー島においても自動的に登録されたものとして扱われることとなる。
これにより、1957年法の下で従来必要とされていたジャージー島での再登録手続は不要となる。
もっとも、この取扱いはPCT経由で英国において付与された特許に限られる。
PCT出願に基づき欧州を指定した特許、英国国内出願に基づく特許、ならびに欧州特許庁への直接出願に基づく特許については、引き続きジャージー島での再登録が必要である。
意匠:ハーグ協定の拡張
ハーグ協定の効力がジャージー島に拡張されることにより、出願人は単一の国際出願を通じてジャージー島における工業意匠保護を確保できるようになる。
これは、議会提出文書番号48/2024に基づく登録意匠制度の近代化(1957年制度の刷新)と整合するものである。
英国のハーグ協定加盟の効力がジャージー島に拡張された後は、ハーグ制度を通じて英国を指定した意匠は、ジャージー島においても自動的に登録されたものとして扱われることとなる。
なお、英国知的財産庁(UKIPO)に直接出願された意匠は、本制度変更による自動拡張の対象外である。
ジャージー島がハーグ協定の枠組みに加わることにより、意匠保護は単一の国際ポートフォリオの中でジャージー島を包含することが可能となり、国際的な保護戦略の構築がより容易となるものである。
商標:ニース協定と国際分類の採用
ニース協定の拡張により、ジャージー島は商標登録において国際標準化された商品および役務の分類を採用することになる。
この調和は、新設されたプライマリー登録制度を支えるものであり、ジャージー島の商標登録制度を主要国の制度と合致させ、審査および管理の効率化を促進するものである。
マドリッド議定書:国際登録制度とジャージー島の新制度
■ セカンダリー登録制度の廃止
現行制度の下では、英国商標をまず登録し、その後ジャージー島において再登録する必要がある。
一方、英国を指定した国際登録は、再登録なしで自動的にジャージー島に拡張される。
この現行制度はジャージー島での現地審査を伴わず、現代の商標法体系との整合性に欠けるものであった。
■ 新たなプライマリー登録制度
協議の結果、セカンダリー登録制度を廃止し、独立したプライマリー登録制度を導入することについて、一般市民および産業界から強い支持が得られた。
政府はこの改革を、マドリッド議定書の要件を満たすために不可欠な措置と位置付けている。
これにより、ジャージー島を国際登録で直接指定することが可能となり、ジャージー島が本国官庁として機能することができるようになる。
経過措置により、マドリッド制度において英国を指定することでジャージー島にも効力が及ぶ現行の自動拡張制度を段階的に終了させ、完全に独立したジャージー島登録制度へ移行する予定である。
■ マドリッド議定書拡張の効果
マドリッド議定書がジャージー島に拡張され、新商標法が施行された後は、
• ジャージー国外の商標権利者は、マドリッド出願においてジャージー島を直接指定できるようになり、
• ジャージー島拠点の出願人は、これまで利用できなかったマドリッド制度を通じて国際登録の手続きを行うことが可能となる。
プライマリー登録制度とマドリッド議定書拡張の組み合わせにより、ジャージー島は世界の国際的水準を備えた知的財産庁と同等の機能を備えることになる。
これらの改革は、ジャージー島の知的財産制度を現代化するとともに、国際制度との整合性を高め、企業、創作者及び発明者にとって、より利用しやすい国際的な保護環境を整備するものである。
新法は2026年後半に施行される予定である。
これから取るべき対応
• 商標権者は、自らのポートフォリオを見直し、ジャージー島での保護が必要なブランド及び最適な取得手段を精査すべきである。
• 特許権者および意匠権者は、本改正により自動的に拡張される権利範囲について認識しておく必要がある。
[出典:LYSAGHT]