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2022.11.22IPイギリス:英国を指定する国際登録における送達用住所登録について


イギリス:英国を指定する国際登録における送達用住所登録について

英国知的財産庁(UKIPO)に商標を直接出願する場合、手続き送達のための英国内の住所を指定する事が要件に含まれる。
対照的に英国を指定する国際登録に関しては、英国内の送達用住所を要求されない。
UKIPOが英国の送達先を必要とするのは、審査中の国際商標登録に関して異議または暫定的拒絶が通報された場合のみである。
しかしマルコポーロ事件(O/681/22)の判決により、このUKIPOの慣行に疑問が呈されるようになった。

概要
商標「MARCO POLO」の権利者であるNew Holland Ventures Pty 社はオーストラリアの企業である。
この商標は2020年に国際登録簿に登録され、その後2021年に指定国の英国で保護決定となった。
登録時に異議や拒絶を受けなかったため、UKIPOは権利者に送達用の英国住所の登録を求めていない。
UKIPOの記録では権利者と代理人の住所のみが確認できた。

Tradeix社は英国の商標「MARCO POLO」に対して登録の無効を申請した。
その通知はオーストラリアにある権利者の事務所に郵送された。
しかしオーストラリアではコロナによるロックダウンのため、商標権利者の事務所は閉鎖されており、通知は2ヶ月の応答期限内に受け取れず、対応もできなかった。
期限内に応答が無かったため、UKIPOは無効を宣言し、通知は権利者のオーストラリアの住所に再度郵送されたが受領されなかった。
無効の宣言は国際事務局にも通知され、国際事務局は商標権者の代理人に通知した。
その後、商標権者は英国の代理人を選任し、UKIPOの決定を不服として争う事になった。

決定内容
担当審査官は、UKIPOは管轄圏外に書簡を送達する権限は無く、よって登録無効の申請通知は適切に商標権利者に送達されていないと判断した。
UKIPOはオーストラリアの住所に書簡を送り、英国にある送達先を登録するための1カ月の期限を設定する権限しかないというのが理由である。
そのためこの決定はUKIPOに戻され、審理中である。

決定を受けて
本決定を受けて、UKIPOの運用がどのような影響を受けるのかは見守りたいと思う。
その決定が出るまでは、同様の案件に関し英国内の代理人を選任しておくのも一考である。
また国際登録に関しては、異議や拒絶を受けないで保護決定が付与され、当該国の国内代理人が登録されていない場合、直接権利者に何らかの通知が送られるケースがある。
その場合は直ぐに国内代理人に相談し、どのような応答が必要かを確認する事を勧める。


[出典:K&L Gates, Murgitroyd, HGF]


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