2023.03.28IP中国:PUMA 対 Sweet Puma
中国:PUMA 対 Sweet Puma
PUMAスポーツブランドは、中国で広く使用され、販売されている。
しかしながら、第三者が類似する商標「sweet puma」(登録番号19051535)を第43類のケータリングサービス、バーサービス、レストランサービス及びそれに類する役務について登録した。
PUMA社は、(1)自社の一連の商標「PUMA」は中国で高い周知性と名声を得ており、「著名」商標として認識されるべきである、(2)当該商標はPUMAブランドの悪質な模倣である、(3)当該商標の登録と使用は混乱を引き起こし、社会的に悪影響を与えるとの根拠を以て無効審判請求を請求し、主張の根拠となる広範な証拠資料を提出した。
検討の末、PUMA社の先登録はスポーツ用品のみを対象としており、当該商標が対象とするレストランやバーのサービスとはかけ離れているため、国家知識産権局は商標「sweet puma」の登録を維持することを決定した。
提出された証拠は、係争商標をその指定役務に使用することが混乱を引き起こすと審査官を説得するものではなかった。
PUMA社は国家知識産権局の判決を不服として北京知的財産裁判所(The Beijing Intellectual Property Court.)に控訴した。
PUMA社は、商標「PUMA」は「著名」商標と認識されるべきであり、登録された商品役務を超えて保護されるべきであると述べた。
また、同社は、中国商標法第13条第3項により当該商標は、中国で登録されている他人の馳名商標を複製、模倣又は翻訳したものであって、公衆を誤認させ、当該馳名商標登録者の利益に損害を与え得る。
よってその商標の登録をするべきではないと主張した。
しかしながら、北京知的財産裁判所はPUMA社の訴えを退け、「sweet puma」の登録を維持する決定を行った。
両商標は異なる関係性のない事業分野で使用されており、結果として、一般大衆が第三者の商標をPUMA社及びその事業と関連付ける可能性は低いと判断した。
PUMA社は、北京人民高等裁判所(The Beijing People's high court)に上訴した。PUMA社は、商業パートナーとの事業が広範囲に及んでいることを示す追加証拠を提出した。
またPUMA社は当該商標の権利者が2021年9月3日に商標の登録を抹消している事実を提出した。
北京人民高等裁判所は判決で、(i) PUMA社の商標は「著名」商標として認められるべきである、(ii) 当該商標「sweet puma」はPUMA商標に類似している、(iii) 問題の登録が対象とするケータリング/レストランサービス等はPUMA社のスポーツ用品とは異なるが、宣伝・広告活動の結果、消費者が当該商標とPUMA社或いはその事業を関連付ける可能性があると判断した。
その為、北京人民高等裁判所は、国家知識産権局と北京知的財産裁判所の決定を覆した。
本事例は、中国における商標の非常に広範な使用と販売促進活動を証明する詳細な証拠が提出されれば、中国の裁判所が商標に「著名」の地位(及び、その結果として、より広範な保護)を与える可能性を示唆していると考えられるが、当該商標の権利者が訴訟の過程で登録を抹消したことも見逃せない事実であり、これが北京人民高等裁判所の決定に影響を与えた可能性も払拭はできない。
[出典:Marks & Clerk]