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2023.04.11IP中国:モバイルゲームの商標権侵害で3社が300万元の賠償


中国:モバイルゲームの商標権侵害で3社が300万元の賠償

モバイルゲーム「全民漂移3D」を開発・運営した3社の企業は、広東省高級人民裁判所(以下、広東高裁という。)により、文字と図形からなる商標「全民漂移」の権利人が有する登録商標専用権を侵害したと最終審で認定され、商標権者に経済的損失等計300万元を賠償する判決を受けた。

「全民漂移」は2014年11月1日に開発が完了し、リリースされたモバイルゲームであり、著作権者は無錫要玩娯楽網絡技術有限公司(以下、要玩公司)である。
同ゲームは複数チャネルでのプロモーションで一定の知名度を獲得した。

要玩公司は2014年6月に広州要玩娯楽網絡技術股分有限公司の全額出資で設立され、経営範囲にはコンピュータネットワークシステムエンジニアリングサービス、コンピュータ技術開発及び技術サービス、ゲームソフト開発などが含まれる。
2016年8月に要玩公司は文字と図形からなる商標第17229117号「全民漂移」(以下、係争商標という)を第9類コンピュータゲームソフトウェア、コンピュータプログラム(ダウンロード可能なソフトウェア)、電子出版物(ダウンロード可能)等の商品に登録した。

権利侵害で訴えられた3社はそれぞれ、北京楽否インタラクティブ網絡科技有限公司(以下、楽否公司)、北京巨量エンジン網絡技術有限公司、北京比特漫歩科技有限公司である。
楽否公司が裁判所に提出したコンピュータソフトウェア著作権登録証書によると、「全民漂移3Dゲームソフト」の開発完了時期は2018年11月17日であり、著作権者は楽否公司である。
他の2社は同ゲームの複数プラットフォームでの配信と運営を担当している。

「全民漂移3D」というゲームのタイトル、ゲームのダウンロード画面、ゲームプラットフォームの検索画面等で使用されている「全面漂移」、「全民漂移3D」、「全民漂移3D(ベータ版)」が係争商標と同一又は類似していると考えられ、係争登録商標専用権を侵害した疑いがあるため、要玩公司は上記3社を広東省東莞市中級人民裁判所(以下、東莞中裁)に提訴し、経済的損失等2000万元を主張した。
裁判において、要玩公司はまた「全民漂移」が一定の影響力を有するゲームタイトルであり、「全民漂移3D」が「全民漂移」の名称と同一の標識を無断で使用する行為は不正競争を構成する疑いがあると主張した。

要玩公司の訴えに対して、楽否公司ら3社は「全民漂移」は普遍的なドリフトを中心としたレーシングゲームであり、一般的な形容詞であり、顕著性を有しないと弁解した。

東莞中裁は審理を経て、オンラインゲームの名称はゲームの内容的性質を示すことができるほか、ゲーム提供者を特定する機能も有しており、開発会社、運営会社などと対応関係を形成し、ゲームの出所を識別する役割を有すると判断した。
「漂移(ドリフト)」はレース用語で車両の運転技術を指し、一部の初期のレーシングゲームの宣伝時に「全民漂移」という語が使用されたが、この語はレーシングカーに関するゲームを指す一般名称に該当すると判断するには不十分であった。

東莞中裁はまた、係争商標が第9類のみで登録されており、第41類のレクリエーション活動、レクリエーション施設の提供、(コンピュータネットワーク上での)オンラインゲームの提供等のサービスでの使用に登録されていないという楽否公司ら3社の主張は成立しないと認定した。
係争商標が登録された第9類商品であっても、第41類が提供する役務であっても、いずれもゲームを提供する機能を有しており、ゲーム商品又は役務の分類の判断に影響を及ぼさない。
比較してみると、「全民漂移3D」のゲーム名称及びゲームの画面に使用されている「全民漂移」、「全民漂移3D」等の標識は、係争商標の文字部分と同一であり、係争商標はメディアの宣伝及び競技でのプロモーションのため、レーシングカーに関するオンラインゲームにおいて一定の知名度を有しており、「全民漂移3D」は係争登録商標専用権を侵害している。
これにより、東莞中裁は第一審で楽否公司ら3社に対し、直ちに侵害を停止し、要玩公司の経済的損失など計300万元を共同で賠償するよう判決した。

一審判決が出た後、楽否公司ら3社はいずれも上訴した。
広東高裁による審理の結果、上訴は棄却された。
(中国知識産権紙のプレスリリースより引用編集)


[出典:SHANGHAI PATENT & TRADEMARK LAW OFFICE, LLC]


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