2023.06.13IP中国:他人の商号の使用に関する判例
中国:他人の商号の使用に関する判例
先日、上海知識産権裁判所(以下、「上海知財裁」という)は香港成功公司と成功科技公司、豊麗公司との著作権侵害及び不正競争紛争上訴事件について、上訴を拒絶し、原判決の第二審判決を維持した。
香港成功公司は第一審裁判所に以下のことを訴えた。
同社は1997年に香港地区で登記され、英語名はDAIICHI INTERNATIONAL(HOLDINGS)HK LTDである。
1998年から自社名義または複数の関連会社を通じて中国本土でカーテンウォールパネル製品を販売している。
同社が制作したパンフレットには、参加した国家大劇院、北京人民大会堂、水立方などのプロジェクトの写真が掲載されている。
香港成功公司は、成功科技公司がパンフレットにこれらの写真を使用し、豊麗公司と共同でウェブサイトを通じて事件にかかわる作品を公衆に提供しており、この行為は著作権侵害を構成すると考えている。
成功科技公司が「成功」を企業の商号として使用し、「DAIICHI」をドメイン名の主要部分として登録して使用、同社のプロジェクトを事例として宣伝する行為は不正競争を構成し、豊麗公司は共同侵害を構成する。
したがって、成功科技公司、豊麗公司に侵害行為及び不正競争行為を停止し、経済的損失及び合理的支出200万元を賠償するよう判決命令し、影響を除去する声明を掲載するよう法院に主張した。
第一審裁判所は審理を経て、現在の証拠に基づいて、香港成功公司が係争作品に対して著作権を有しており、成功科技公司が許諾を得ずに係争作品をパンフレットに印刷し、インターネット上に掲載する行為は権利侵害を構成すると判断した。
香港成功公司の「成功」商号はカーテンウォールパネル関連市場において一定の影響力を有しており、成功科技公司が「成功」を商号として登録し、使用する行為は不正競争を構成する。
成功科技公司の宣伝は需要者に誤解を生じさせやすく、虚偽宣伝を構成する。
豊麗公司が経営管理するウェブサイトに同一の権利侵害内容を掲載した場合、成功科技公司と共同で一部の権利侵害行為を実施し、成功科技公司の不正競争行為の実施に援助を提供したと認定すべきであり、これについて成功科技公司と連帯責任を負うべきである。
したがって、第一審裁判所は、成功科技公司、豊麗公司は著作権侵害行為、そして、「成功」商号の使用及び虚偽宣伝の不正競争行為を停止し、成功科技公司は香港成功公司に経済的損失と合理的支出として30万元を賠償し、豊麗公司はそのうちの10万元に対して連帯賠償責任を負う、成功科技公司及び豊麗公司は関連ウェブサイトのトップページに声明を掲載し影響を取り除く旨の判決を下した。
成功科技公司、豊麗公司は、登録商標「成功」、「DAIICHI」の専用権を譲受したことに基づき、第一審判決を不服として、上海知財裁に上訴した。
上海知財裁は審理を経て、香港成功公司が主張する170枚余りの画像について相応の証拠を提供しており、成功科技公司と豊麗公司とがパンフレット又はウェブサイトで係争画像を使用する行為は著作権侵害を構成すると判断した。
反不正競争法第6条第2項の規定に基づき、事業者は、他人が一定の影響力を有する企業名称(略称、商号などを含む)を無断で使用してはならず、他人の商品であると誤認させ、又は他人と特定のつながりがあると誤認させてはならない。
事件の証拠によると、成功科技公司が「成功」商号を登記した時点で、香港成功公司は既に中国本土の市場で「成功」商号を長年使用しており、当該商号は一定の顕著性を備えており、かつ長年の経営、宣伝を経て、異なる市場主体を区別する機能を備えている。
現時点の証拠は、香港成功公司の商号「成功」がカーテンウォールパネル関連市場において一定の影響力を有し、その合法的権益が法律の保護を受けることを十分に証明している。
成功科技公司はその後、商標「成功」を譲り受けたが、香港成功公司が「成功」について既存の合法的権益を有している状況において、成功科技公司が同一業界の経営において「成功」の商号を使用する行為は、客観的に、需要者による二者間の関係の混同を招きやすく、その行為は不正競争を構成する。
また、成功科技公司のパンフレット及び豊麗公司の相応のウェブサイトに掲載された関連宣伝内容は、関連公衆に成功科技公司の企業歴史、経営業績に対する誤認を生じさせやすいため、当該行為は虚偽宣伝を構成する。
以上から、上海知財裁は成功科技公司、豊麗公司の上訴請求を拒絶した。
商標と企業名称は異なるタイプの商業標識であり、権利の取得経路、権利の性質などでは異なる。
商標は異なる商品又は役務の出所を区別するためものであり、企業名称は異なる市場プレーヤーを区別するためのものである。
それぞれ異なる機関を通じて登録を取得し、異なる管理制度を有する。
したがって、ある標識について登録商標専用権を享有することは、当該標識を企業の商号として使用する権利を当然有することを意味するものではなく、その逆も同様である。
異なる主体が同一の標識を商業標識として使用して経営を行う場合、関連公衆にその主体の身分、商品又は役務の出所について混同又は混同の可能性を生じさせやすい場合、後の使用行為も不正競争を構成する可能性がある。
(上海知財裁のプレスリリースより引用編集)
[出典:SHANGHAI PATENT & TRADEMARK LAW OFFICE, LLC]