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2023.07.11IPカンボジア:共存事例を示すことにより拒絶査定を克服した事例


カンボジア:共存事例を示すことにより拒絶査定を克服した事例

東南アジアへの外貨の投入が進む中、カンボジアは多くの企業にとって進出先の最有力候補地となっている。
しかし、カンボジア市場で商標を登録するのは決して容易なことではない。
同国では毎年膨大な数の商標登録出願が行われており、審査官から先行商標と類似していると判断される、もしくは出願商標が拒絶を受ける可能性があるためである。
そこで、知的財産法に関する豊富な経験と知識を有する知的財産弁護士が、カンボジアでの権利化のための争いに勝つための効果的な戦略を紹介する。
当所は、約20年にわたる知的財産ソリューションの専門家として、世界的に有名なミルクティーブランド「DING TEA」のカンボジア当局の拒絶査定を解消することに成功した。
今回は、カンボジアでの商標登録取得の複雑さを掘り下げ、商標が拒絶査定に直面した場合のポイントを紹介する。

■背景
台湾のミルクティーブランド「DING TEA」は、世界中のミルクティーファンの間で絶大な人気を誇っている。
アジアで350店舗以上、世界で650店舗を展開する「DING TEA」は、飲料業界では有名なブランドとなっており、台湾、日本、中国、香港、インドネシア、シンガポール、ベトナム、ミャンマー、ブルネイなど、数カ国に渡ってブランドの地位を確立している。
しかしながら、カンボジアで出願された同ブランドの商標「 」(出願人:CHU YU HSIANG CO., LTD/区分:第43類)については下記先行商標と混同される可能性があるとの理由でカンボジア知的財産局により登録を拒絶された。

商標: (Din Tai Fung/中国語)
区分:第43類(レストラン、カフェ、など飲食物の提供に係る役務)
出願番号:第31844号
出願日:2008年9月1日
登録番号:第31281号
所有者:DIN TAI FUNG CO.,LTD
住所:No.194, Sec. 2, Shin-yi Rd. Taipei
ステータス:2028年まで有効

カンボジアで商標拒絶査定を克服するためには
カンボジア知的財産局(以下「DIP」)の拒絶査定によると、審査官は「DING TEA」という単語は「DIN TAI」と称呼が類似しており、役務の出所について需要者の混乱を招く可能性があると判断していることが理解できる。
たしかに「DING TEA」と「DIN TAI」という商標は、類似点があるものの、混乱が生じるほどではないと思われたため、当所は、DIPによる拒絶査定を不服として控訴した。
控訴審では、登録商標と引用商標の構成、観念、称呼、市場における印象の相違を徹底的に分析した。
その結果、類似点は認められるものの、両商標の間には大きな相違点があり、消費者が混同する可能性は低いことが示された。

当所は、両商標の非類似性を証明する論拠や分析を提示するとともに、両商標の独自性を示す証拠を提示した。
例えば、「DING TEA」と「Din Tai Fung」の2商標は、オーストラリア、ブルネイ、カナダ、EU、日本、韓国、マレーシア、米国などの複数の国で保護されている。
これは、両者が多くの国で独立した特徴を持ち、共存していることの明確な証拠である。
この証拠により、両者の識別性に関する議論や分析が大幅に補強された。

我々が提示した有力な分析、論拠、証拠を検討した結果、DIPは、拒絶査定を覆し、カンボジアにおいて「DING TEA」ブランドの保護を認めた。
この決定により、カンボジアにおける「DING TEA」ブランドの安全かつ合法的なビジネス展開の新たな扉が開かれ、「パゴダランド」と呼ばれるこの地域でのブランド展開に明るい未来が開かれた。


[出典:Kenfox IP & Law Office]


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