2023.07.25IP台湾:商品虚偽表示の刑事罰リスク
台湾:商品虚偽表示の刑事罰リスク
一、はじめに
商品に不当表示又は虚偽表示がある場合、例えば、原産地、製造者、製造日、保存期限、商品許可証番号又は検査番号などに関する不当な表示行為は、農工商妨害の虚偽表示罪、さらには詐欺罪などの刑事犯罪に関わる可能性がある。
多くの業者がこのような刑事責任のリスクをおそらく知らないか、明確に意識していないかもしれないが、このような刑事事件は、裁判実務では頻繁に発生している。
当所では、長年にわたり、商品の虚偽表示に関する刑事事件に関与してきた実績があるため、そのような事件について簡単に分析する。
二、関連する実務見解および事件の観察
(一)関連法規
刑法「農工商妨害罪の章」第255条第1項に「他人を欺瞞する意図をもって、商品の原産国又は品質について、虚偽の記載又はその他の表示をした者は、1年以下の有期懲役、拘留又は台湾ドル3万元以下の罰金に処する。」と規定されており、同条第2項には「前項の商品であることを明らかに知りながら販売し、又は販売の意図をもって陳列し、若しくは外国から輸入した場合も同様とする。」と規定されている。
刑法第339条第1項には「自己又は第三者の不法な所有を意図して、詐術をもって他人に本人又は第三者に属する財産を自己に交付させた者は、5年以下の有期懲役、拘留若しくは台湾ドル50万元以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」と規定されている。
(二)裁判実務の見解
刑法第255条違反の事件の態様には様々なものがあり、例えば、①関連主務官庁に検査届を出すべき商品で、手落ちがあり出さなかったにもかかわらず、商品上に関連する検査番号が印刷されている場合、②商品に表示されている原産地が実際の原産地と一致しない場合、③商品には許可証番号が印刷されているが、当該商品が許可証番号に基づく許可商品と一致しない場合は、いずれも刑事罰リスクが大きいものである。
また、関連する実務見解では、刑法第255条に該当する事件が詐欺罪にも該当するかどうかについて、賛否両論がある。
1つの行為が同時に上記2つの罪に該当するとする判決もあり、刑法第255条の罪は罪質上、詐欺の性質があり、詐欺罪の特則であるため、優先的に適用されるべきで、詐欺罪の刑事責任を問うべきではないとする判決もある。
また、被告が積極的に「模倣品を真正品と偽って」「粗悪品を高級品と偽って」真正品に相当する価格で商品を消費者に販売して著しく不相当な利益を得るのではない場合には、別途詐欺罪に問われるべきではないとする判決もある。
(三)刑事事件に関する観察
商品表示が刑法第255条に違反するおそれがある場合、地方検察署に事件が送検され、検察官による捜査が行われることがある。
通常、企業の責任者が被告となり、責任者は警察、捜査局、地方検察署の取調べにおいて、事件の説明などの協力が求められる。
そのため、実際に当該商品の詳細を把握していない企業責任者にとっては、刑事手続で焦りや不安が生じる可能性がある。
当該商品表示が従業員の個人的ミスによるものであっても、捜査された場合、通常、企業責任者は刑事手続の全過程に協力して事件の状況を説明する必要があることに注意が必要である。
また、企業が販売する商品が関連行政主務官庁による定期的な抜き取り検査の対象である場合、関連行政主務官庁が抜き取り検査で不適切な表示を発見した場合、当該行政主務官庁の内部規程で、元の関連行政調査事件を検察・捜査機関に告発して捜査に委ねることになっている場合があるので、注意が必要である
しかし、一般的には、商品の不適切な表示は単発的なものであれば、刑法第255条第1項の「他人を欺瞞する意図」の要件に該当する可能性は比較的低いと考えられる。
企業は、商品の販売や輸入のプロセスはいずれも合法的でコンプライアンス(法令遵守)を徹底しており、不適切な表示は、漏れや書類作成ミスに起因する単一の事件にすぎないことを説明するために関連証拠を提出することができる。
また、被告とされた企業の責任者が、表示の状況を知らなかったり、商品表示の実際の担当者でなかった場合、当該業務が企業内部の階層的な権限により専門担当者に委ねられていたことを説明するために証拠を提出することもできる。
したがって、責任者には刑法第255条第1項の「虚偽の記載又はその他の表示」の故意はなかったことが明らかである。
さらに、単一の表示ミスの個別事件の商品が極めて低額であったり、単なるノベルティであったりする場合にも、被告は故意に表示ミスする動機がないことを説明することができる。
企業の内部調査の結果、商品の虚偽表示の状況が存在し、法的評価を経て刑法第255条に該当するリスクが高い場合であっても、企業は積極的に捜査に協力し、良好な態度を示すことで、検察官に積極的に起訴猶予処分を求めるか、証拠に基づき特定のスタッフに対して不起訴処分を勝ち取ることができる。
商品の虚偽表示により、企業の責任者が被告とされ、刑事捜査に協力することが求められる可能性が高い。
関連する刑事通知を突然受け取ることで、企業の責任者や法務チームが不意打ちをされるように感じることもある。
しかし、企業の商品表示は非常に複雑で面倒な作業であり、コストの観点から、企業は商品の表示をすべて法務チームに確認するよう要求することはまずないと思われる。
以上のことから、経営リスクを大幅に低減させるため、企業は弁護士チームに依頼して定期的な法教育や訓練を実施し、このような刑事リスクを企業のマーケティング又は貿易の担当者に注意させ、また内部監査基準を確立することをお勧めする。
三、まとめ
以上をまとめると、商品の虚偽表示は、刑法第255条の農工商妨害の虚偽記載罪や刑法第339条第1項の詐欺罪の刑事責任を問われる可能性があり、裁判実務上、注意すべき点が多くある。
企業が関連商品表示の監査を怠ったり、従業員の教育や訓練も定期的に行わなかったりすると、企業責任者は関連刑事事件にうっかり巻き込まれる可能性が高い。
特に、これらの企業経営の潜在的リスクは、刑事責任を伴う可能性があるため、企業は慎重に対応しなければならない。
刑事罰リスクを回避し、企業の健全な発展を維持するために、企業は定期的に弁護士に依頼して企業の取締役、監督者、従業員に対して法教育や訓練を行うことをお勧めする。
[出典:理律法律事務所]