2024.08.27IP台湾:商標出願の加速審査制度の実施について
台湾:商標出願の加速審査制度の実施について
2023年5月に成立した商標改正が2024年5月1日に施行されました。
本改正で特に出願人にとって影響があると思われるのは、加速審査制度の導入であり、「すぐに権利を取得する必要がある」場合には、登録までの期間を大幅に短縮できる可能性があります。
そこで、2024年4月30日に公告された「商標出願の加速審査作業に関する手続」の内容を踏まえて、本制度の概要を紹介します。
一、適用される案件の類型
(一)類型一:指定商品・役務の「全て」について、実際に使用し、又は使用の準備を相当程度進めている場合。
「実際の使用」とは、我が国の領域内で商標法第5条を満たす方法で商標を使用することをいいます。
また、実際には商標を使用していない場合でも、出願人が「使用の準備を相当程度行っている」場合、加速審査適用の要件を満たします。
後者の場合、出願人は、使用を準備している商標について、準備の時期、商品・役務、マーケティングチャネル、場所等を具体的に示す必要があります。
例えば、商品又は役務のサンプル、広告物、宣伝印刷物の注文書、広告契約、ビジネスプランなどを証拠とすることができます。
(二)類型二:指定商品・役務の「一部」について、実際に使用し又は使用の準備を相当程度進めており、かつ商業上権利を取得する必要性及び急迫性がある場合。
「権利を取得する必要性及び急迫性」には、以下の場合が含まれます。
1.当該商標を第三者が同意を得ずに使用し又は使用の準備を相当程度行っている場合。
2.当該出願商標の使用により、第三者から商標権侵害の警告を受けた場合。
3.第三者から当該出願商標について使用許諾を求められた場合。
4.当該出願商標の市場での使用が計画されており、かつ提携企業との間で、販売又は代理販売等に関する契約を締結した場合。
5.当該出願商標の展示会への出展を計画しており、かつ出展者との関連契約を締結した場合。
6.その他商業上、権利を取得する必要性及び急迫性があると認めるに足る場合。
実際に商標を使用していることの証拠を提出する際には、出願している商標の図案と「完全に同一」である必要があります。
大文字・小文字、改行の有無、色又は他のテキスト/図形との組み合わせなどが商標の表示態様と異なる場合は、加速審査制度の対象となる商標使用に該当しません。
また、実際に商標を使用していることを証明する証拠は、指定商品又は役務の表記と合致している必要があります。
実際に使用している商品又は役務が指定商品又は役務と表記が異なる場合でも、実質的に同一概念の商品又は役務であれば、加速審査の要件を満たすと認められます。
二、申請手続
(一)出願人は、商標を出願してから知的財産局(以下、「知財局」といいます)から最初の審査通知が発せられるまでの期間中に、出願番号ごとに主張したい類型に応じた証拠を添付し、それぞれ加速審査を申請する必要があります。
(二)伝統的商標及び非伝統的商標はどちらも加速審査を申請できますが、証明標章、団体標章及び団体商標の出願には適用されません。
(三)各区分ごとに6,000新台湾ドルを納付する必要があります。
三、審査スケジュール
(一)証明書類に不備がある場合、知財局より申請受付後10営業日以内(紙出願の場合は約15営業日以内)に是正通知が送付されます。
(二)加速審査の要件を満たす出願については、原則として2ヶ月以内に商標局から最初の審査通知(例:登録査定又は手続補正指令、拒絶理由通知)を受け取ることができます。
(三)出願人が補正又は意見を提出し、かつ当該出願について他に補正すべき事項がない場合、書面受領後15営業日以内に査定が出されます。
以下のいずれかに該当する場合、加速審査の要件を満たしていても、知財局が短期間で審査を行うことができない可能性があります。
1.指定商品又は役務の意味が広範又は不明確であり、実際に使用し、又は使用の準備が相当程度進んでいる商品又は役務と対照できない場合。
2.出願商標の態様が、立体、色、匂い、音又は連続図形などの非伝統的商標であり、商標の識別性を証明するための資料を提出する必要がある場合。
3.商標の登録を認めるか否かを判断するにあたり、他の紛争案件の結果を待つ必要がある場合。
[出典:理律法律事務所]