2025.10.21IPインドネシア:不使用取消の法的根拠や証拠の変更点
インドネシア:不使用取消の法的根拠や証拠の変更点
インドネシアにおいて、商標に対する不使用取消は、未使用の登録商標を排除し、商標の不正占有者に対抗を試みる当事者にとって依然として重要な救済手段である。
2024年から2025年にかけての規制上および手続上の最近の展開は、不使用取消に関する戦略および証拠に関する要件の双方に影響を及ぼしており、慎重な準備が不可欠となっている。
■法的根拠と主要な変更点
• 不使用取消の根拠:インドネシア商標法第74条に基づき、登録商標は、登録からまたは最後の使用から5年間連続して取引において使用されていない場合、取消の対象となる。
• 不使用期間の最近の延長:注目すべきは、2024年7月より、憲法裁判所判決 No.144/PUU-XXI/2023 に従い、必要な不使用期間が3年から5年に延長された点である。 (関連IPニュース記事>>https://trademark.jp/ip/detail/2292)
• 例外:不使用の正当な理由には、輸入制限、政府による禁止、または経済危機やパンデミックといった不可抗力事由が含まれる。
■手順と実務上の指針
1.原告(=請求人)の適格
• 利害関係人の要件:原告は正当な利害関係を示さなければならない。
一般的に、同一商標についての出願が係属中であることにより利害関係が裏付けられる。
2.立証責任
• 市場調査データ:原告側が立証責任を負う。徹底的な市場調査が不可欠であり、以下を満たすデータが求められる:
(A)測定可能かつ明確なデータであり、信頼できる機関による調査であること。
(B)ジャカルタ、ランプン、バリクパパン、スラバヤ、マカッサル、デンパサールといった主要なインドネシアの都市を含むような、インドネシア全土を網羅する調査対象であること。
• 形式的使用の回避:裁判所は「形式的使用(Token Use)」(=登録維持のための最小限または形式的な使用)を認めない傾向があるが、判決の一貫性はまだ発展途上である。
原告は、権利者による形式的使用を阻止するような証拠を積極的に収集すべきである。
3.特定商品の要件
• 医薬品、食品、通信機器といった規制対象製品に関する商標に異議を唱える場合、政府による登録や許可がないことは主張の補強材料にはなるが、不使用を示す直接的な証拠がなければ決定的な証拠にはならない。
• 例:医薬品の場合、BPOM(インドネシア国家医薬品食品監督庁)の販売許可の欠如は主張の補強材料にはなるが、それだけでは不十分であり、市場調査データを伴う必要がある。
4.手続形式上の注意点
• 訴訟は法的形式に厳格に従わなければならない。過去には、訴状の不備、代理権の瑕疵、過大な救済請求により却下された事例がある。
• 原告は市場調査報告書が調査機関によって正式に署名・押印されていること確認すべきである。
これが欠けて却下に至った事例が繰り返し起きている。
5.戦略的考慮事項
• コストと複雑さ:インドネシアは地理的に多様で市場も大きいため、徹底的な調査を行うには、コスト面・実務面の双方で多くの困難が伴うことが少なくない。
• 代替的解決策:和解による解決や悪意性を根拠とした無効審判が代替案として検討できる。不使用取消請求に比べて比較的成功率が高く、証拠負担が軽く済む場合がある。
■最近の審決の統計データ
• 最近公表された審決の統計データは以下のとおりである:
(A)11件が手続上の理由で却下
(B)4件が本案審理で棄却
(C)10件が登録取消に成功
■結論
不使用取消訴訟に臨む際には、緻密な準備と法的かつ実務的要件の確実な理解が不可欠である。
市場調査は包括的であるべきであり、手続遵守は厳格である。
また可能であれば代替的な紛争解決案を考慮すべきである。
不使用期間が5年に延長されたため、証拠の基準はより厳格になった。
これにより証拠管理と定期的な商標ポートフォリオの見直しが一層重要になっている。
[出典:RH Partners]