2025.12.23IP中国:商標使用管理の強化に関する通知
中国:商標使用管理の強化に関する通知
2025年11月21日、中国国家知識産権局(CNIPA)は、「商標使用管理の強化に関する通知(Notice on Strengthening Trademark Use Management)」を公表した。
本通知は、地方政府の知識産権局に向けた執行指針として発出されたものであり、違法または不適切な商標使用の規制を強化するとともに、社会全体に対して商標権を尊重し、適切な使用を促し、公正な競争環境の整備を行い、質の高い発展を推進することを目的としている。
本通知では、重点的に取り締まるべき執行分野が具体的に示されている。
特に問題視されているのは、未登録商標による虚偽表示や使用禁止の表現を含む商標の使用である。
具体的には、「専用」「特別」「高級」「国産」などの表示を含み、商品の供給ルートや品質について一般消費者に誤認を生じさせるおそれのある未登録商標、「セレン含有(selenium-rich)」「有機(organic)」「無添加」「100%」などの表現を含んでいるが、実際の商品特性がこれに合致しないことにより、主要原材料や成分について誤解を与えるおそれのある未登録商標、さらに、「地名」、「年号」、「手作り」「手打ち」などの用語を含み、商品の産地、製造時期または製造技法について誤認を招くおそれのある未登録商標が挙げられている。
また、登録商標の欺瞞的使用についても重点的な監督対象としている。
具体的には、登録商標を商品名称、広告宣伝用語、商品包装または装飾と組み合わせて使用することにより、商品の品質、産地または製造技法について一般消費者に誤解を与える行為、登録事項を無断で変更し、商品の特性や品質について誤認を生じさせる行為、あるいは他人の商標に意図的に関連付けた不正な使用などが対象となっている。
さらに、未登録商標を登録商標であるかのように表示する行為、法令により定められた登録商標の使用義務違反(特にたばこ、電子たばこ分野)、広告・商業活動における「馳名商標」の不適切な使用、品質基準を満たさない商品への団体商標・証明商標の不正使用、ならびに、悪意のある商標出願や不当な不使用取消請求を取り扱うなど、正当な権利者の利益を害する商標代理人の違法行為も、重要な取締対象として明示されている。
執行体制の面においては、通報ルートの円滑な運用、部門間の連携強化、日常的な監督および世論動向のモニタリングの充実が求められている。
また、食品・医薬品、子供向け玩具、家庭用電化製品など、国民生活と密接に関連する分野を重点領域と位置付け、違法または不正な使用の兆候を早期に発見し、適時に対処することの重要性が強調されている。
あわせて、誠実かつコンプライアンスを重視した商標使用に関する指導を強化し、商標権が尊重され、適正に行使される健全な社会的環境の醸成を図るべきであるとしている。
近年、CNIPAが商標審査において絶対的拒絶理由の適用を厳格化していることは周知のとおりであり、「欺瞞性」を理由とする拒絶査定は、過去と比較して明らかに増加している状況である。
これにより、欺瞞性を理由に拒絶された商標を実際に使用した場合の実務上のリスクについて、懸念が高まっているのが実情である。
もっとも、CNIPAはすでに、2023年5月8日付で公表された「悪意のある商標登録の体系的ガバナンスおよび質の高い発展促進に関する作業計画(2023~2025年)」において、禁止規定に基づき拒絶された商標出願について、その後の使用状況を継続的に監督し、当該商標を違法に使用する行為については厳格に調査・処罰する方針を明確に示している。
このように、欺瞞的な商標の使用を規制するCNIPAの姿勢は一貫しており、今回の通知の公表は、商標審査と市場における使用管理を一体的に運用する方針を改めて明確化したものと評価できる。
今後、本通知が実務上どのように執行されていくのかについては、引き続き慎重に注視する必要があるであろう。
[出典:Bird & Bird]