2015.10.14IPアメリカ:指定商品・役務の自発補正に関するパイロット・プログラム実施 他
- アメリカ:指定商品・役務の自発補正に関するパイロット・プログラム実施
- カナダ:ニース国際分類表に基づく指定商品の商標出願受付開始
- 中国、パキスタン:知的財産権の定義明確化とオフィシャルフィー変更
- チュニジア:商標登録に関する手続の改正
- 台湾:ノベルティ商品に関して商標使用が認められた例
- ラトビア:知的財産権に関する組織と手続に関する法改正
- セルビア:税関での権利行使に関する新規則
- コソボ:商標法改正
- ロシア:知的財産権に関する3つの新規則採用
- タイ:名義変更に関する手続変更
- シント・マールテン(旧アンティル):知的財産局運営開始
- ウルグアイ:立体商標に関する規則の変更
アメリカ:指定商品・役務の自発補正に関するパイロット・プログラム実施
アメリカ商標特許庁(USPTO)は2015年09月01日より、急速な技術革新に対応するため、登録商標の所有者に登録済みの指定商品・役務リストでは保護されなくなった指定商品・役務の自発補正の機会を与えるパイロット・プログラムを開始した。
これは以下の基準を満たす登録商標に関して可能となる。
- 技術革新による態様又は媒体の変化によって、登録されている指定商品・役務の記述では実際に消費者に提供、販売されている商品・役務について登録商標の使用を立証できない場合
- 登録商標の所有者が技術革新を反映したその他の指定商品・役務を使用しており根本となる内容が変更していない場合
- 補正しなければ、登録商標の所有者が当該指定商品・役務を削除せざるを得ず、本来享受していた保護を失う場合
認められる補正の例としてUSPTOは以下の例を挙げている。
- phonograph records featuring music in class 9
=> musical sound recordings in class 9 - prerecorded video cassettes in the field of mathematics instruction
in class 9
=> video recordings featuring mathematics instruction in class 9 - floppy discs for computers for word processing in class 9
=> providing on-line non-downloadable software for word processing in class 42 - downloadable software for use in database management in class 9
=> software as a service (SAAS) services featuring software for use in database management in class 42 - printed books in the field of art history in class 16
=> downloadable electronic books in the field of art history in class 9 - telephone banking services in class 36
=> on-line banking services in class 36 - entertainment services, namely, an ongoing comedy series provided
through cable television in class 41
=> entertainment services, namely, an ongoing comedy series broadcast via the Internet in class 41
また、認められない補正例として以下が挙げられている。
- “video game tape cassettes and video game cartridges”
=> “video game discs and video game cartridges” - “phonograph records featuring music”
=> “streaming of audio material in the nature of music”
上記のように、認められるものと認められないものとの境は分かりにくいため、自発補正の申請は審査官によって以下の審査が行われる。
- 類似商標がないかの調査を行い、異議申立のため公告される。
- 補正された商標は不可争性(incontestability)を失い、5年後に新たに15条宣誓書の提出を行うことになる。
- 元の指定商品・役務を完全に削除する。
- 66条(a)(マドプロ経由)で登録した商標で登録5年以内のものは補正可能か否かについては基礎登録の保護範囲を鑑みて審査される。
パイロット・プログラムがいつまで実施されるかは未定であり、今後の自発補正申請の件数次第で決定される予定である。
[出典:Thompson Hine]
カナダ:ニース国際分類表に基づく指定商品の商標出願受付開始
カナダ知的所有権庁(CIPO)は、2015年09月28日よりニース分類に基づく指定商品の商標出願の受付を始めると発表した。これに合わせ、同日付で同庁における商標データベース、指定商品・役務マニュアル、公報、電子出願システムなどのオンラインツールもアップデートされている。
カナダは商標法改正が予定されているが、今回の国際分類導入は任意性であり、将来の法改正に合わせ出願人に便宜を図る目的で行われたものである。
[出典:INVENTA]
中国、パキスタン:知的財産権の定義明確化とオフィシャルフィー変更
中国では2015年10月15日より出願に関するオフィシャルフィーが下がり、従来の800RMBから600RMBへ変更された。これに合わせ、指定商品が10個を超えた場合の追加指定商品に係るオフィシャルフィーも値下げとなった。
パキスタンにおいてSindh Finance Act 2015が発効され、知的財産権について知的財産権とは著作権、集積回路、レイアウト、工業意匠を含むデザイン、特許、商標、人の思想から作られる無形財産、及び知的財産法第2条h及び2012年パキスタン知的財産組織に関する法律第2条gで定義される同様の無形財産に関する権利である(第54条A)。
また、Sindh Revenue Boardはパキスタンで提供される知的財産関連のサービスについて10%の税金を課す通知を出した。
[出典:NTD、Vellani & Vellani、Abu-Ghazaleh]
チュニジア:商標登録に関する手続の改正
チュニジアでは2015年06月09日、商標の登録に関する手続及び商品商標と役務商標の登録に関する異議申立に関する手続を定める政令2015-303号が発効し以下の改正が行われた。
- オンライン出願の導入
- マドプロ商標に関する登録手続を定める条項の設置
- 異議申立における意見書提出期間を異議申立通知日より45日から2か月に延長
- 異議申立における和解期間を意見書提出日から最大で8か月に設定
- 異議申立の根拠となる商標に関する使用証拠の提出期間を1か月から2か月に延長
- 譲渡、名義変更、名称・住所変更の登録に関する必要書類提出期間を2か月に設置
[出典:WIPO]
台湾:ノベルティ商品に関して商標使用が認められた例
台湾商標法第5条は商標の使用に関するもので以下の通りとなる。
「商標の使用とは、販売を目的として並びに次に掲げる各号のいずれかに該当し、関連する消費者にそれが商標であると認識させることができるものをいう。1.商標を商品又はその包装容器に用いる。2.前号の商品を所持、展示、販売、輸出又は輸入する。3.提供する役務と関連する物品に商標を用いる。4.商標を商品又は役務と関連する商業文書又は広告に用いる。前項各号の情況は、デジタルマルチメディア、電子メディア、インターネット又はその他媒介物の方式で行う場合も同様である」と規定され、また同法第57条第3項には「前項の規定により提出する使用に関する証拠は、商標が真実、使用されていることを証明でき、並びに商業取引の一般慣習に合致しなければならない。」当該条文は商標取消に関する第67条第2項に準用される。商標法第5条の規定により、商標の使用は「販売の目的」に限られ、過去の実務見解によれば、いわゆる「販売の目的」は有償の行為に限定され、無償行為は含まない。したがって、景品は通常、商標の使用と認定されない。
しかし、この度智慧財産局が知的財産裁判所その他各界の専門家及び学者を協議した結果、智慧財産局又は知的財産裁判所は特定の条件下での景品について、具体的な個別案において商標の使用と認定している。
知的財産裁判所の103年(西暦2014年)度行商訴字第140号行政判決は、VALENTINO商標商品の景品に関する商標登録取消事件において、VALENTINOの各種商品を一定額購入した消費者にVALENTINOの「香水」を景品として提供する行為について、「VALENTINOの香水類商品を景品として提供する行為は、香水類における商標使用を構成する」と判示した。また、知的財産裁判所の103年(西暦2014年)度行商訴字第128号行政判決も、VALENTINOの別のシリーズの商標に係る景品紛争について、同一の見解を採用している。
知的財産裁判所は、次のように指摘している。係争のVALENTINO商標を「香水」商品及びそのパッケージに用いて商品と結合することは、消費者に係争商標を認識させるに足るものであり、且つ、販売を促進するという商業取引プロセスを利用して、係争のVALENTINO商標を標示する香水商品を景品として提供し、マーケットにおける販売というメッセージを伝達し、商品出所表示という機能を果たしており、香水の景品を通じて係争商標を消費者に認識させ、商標法第5条にいう「商標の使用」に合致する。
智慧財産局又は知的財産裁判所は商標使用に関する見解を変更し、一部の条件付きの景品について商標の使用と認定しており、これは今後の類似案件の審理について、かなりの影響を及ぼす可能性がある。
[出典:Tsar & Tsai、Lee & Li]
ラトビア:知的財産権に関する組織と手続に関する法改正
2015年07月02日、ラトビアでは知的財産権に関する組織と手続に関する法改正が採択され、知的財産権の保護強化と紛争の迅速な解決を目指した以下の改正が行われた。同法に基づき、同国において今後知的財産権に関する不服審判部(Board of Appeals)が設立される。
不服審判における異議申立と不服申立に関する手続の変更には以下が挙げられる。
- 原則書面審査が必須となるが、不服審判部、当事者の一方、追加費用(金額は未定である)を支払う場合、口頭での審理も行われる。
- 異議申立に対する意見書提出期間が3か月から2か月となる。
- 不服審判部での決定に対する不服申立はVidzeme地区のリガ裁判所において民事訴訟手続に従って3か月以内に提起することになる(金額は未定である)。
改正法は2016年01月01日より施行される予定である。
[出典:METIDA]
セルビア:税関での権利行使に関する新規則
セルビアではEU規則第608/2013号をモデルとして新しい規則が2015年09月01日より発効された。これにより商標権者が差止時に提出する商標権者の責任に関する宣誓書(declaration of liability)が税関登録時に提出できるようになった。また、新規則は登録時に真正品に関する以下の情報提出を求めている。
- 真正品の技術的特徴(真贋鑑定方法等)
- 生産地
- 販売チャンネル(正規代理店、荷受人等)とその名称と連絡先
新規則はまた、10営業日以内(痛みやすい商品に関しては3営業日以内)に商標権者が侵害品であると認めた商品の廃棄を請求し、商品の所有者がこれに同意した場合、裁判所の命令なしに廃棄できる簡易手続についても定めている。この期限は知的財産権者が提訴しない限り延長することはできない。
3ユニット以下又は重さが2キロ以下の小口貨物に関する差止も規定されているが、税関当局も認めているように、このような小口貨物の検査には技術的な調整が必要であり、実際に施行される時期は遅れる見込みである。
[出典:SD PETOSEVIC]
コソボ:商標法改正
コソボではEU法との調和を目指し2015年09月08日より商標法が改正された。
基本的な内容はあまり変らないが商標の更新手続に関しては以下の変更がある。即ち、従来商標権者は更新をいくつか指定商品・役務について申請したい場合、更新申請とは別に指定商品・役務の縮減についても別途費用を払って請求しなければならなかった。改正法はこれについて申請と同時に請求できるようにした。
また、商標権侵害の救済措置について、従来は侵害品の削除、押収、廃棄を請求できたが、改正法ではこれに加え、侵害品の製造に使用された素材・装置についても削除、押収、廃棄を請求できるようにした。
[出典:SD PETOSEVIC]
ロシア:知的財産権に関する3つの新規則採用
ロシアでは最近知的財産権に関する以下3つの新規則が採用された。
- ロシア連邦知的財産及び無形財産に関する標準評価法(FSO第11号)
これは営業のれん、契約における権利と義務等、知的財産及び無形財産に関する評価の方法と手続を規定する。これは今後幾つかの旧規則が廃止された発効される予定である。 - 商品商標、役務商標及び団体商標の出願、審査に関する規則
2015年08月31日に発効され、14条で公告について、35条で識別性の立証に必要な証拠を、46条で同意書について規定している。 - 商品商標、役務商標及び団体商標の登録及び登録証と登録証明書の発行に関する知的財産局の行政規則
2015年09月12日に発効され、商標出願、審査、登録手続について規定する。同規定においてこれらの手続は18か月と2週間以内に終了しなければならないことが明記されており、25年ぶりにロシアで登録に関する機関が公式に設定されたことになる。
[出典:SD PETOSEVIC]
タイ:名義変更に関する手続変更
2015年10月01日よりタイにおいて名義変更を行う場合、以下の書類が必要となる。
- 譲渡契約書原本又は公証済の写
- 譲受人の委任状(要公証)
- 登録証原本
登録証原本がない場合、特許庁に登録証明書を発行してもらわなければならない。
[出典:Satyapon & Partners]
シント・マールテン(旧アンティル):知的財産局運営開始
2014年9月24日号でシント・マールテンへの商標手続は全てベネルクス特許庁が行うことをお知らせしたが、2015年10月01日よりシント・マールテン知的財産局(BIX SXM:The Bureau for Intellectual Property of Sint Maarten)が正式に運営を開始し、今後同地への商標手続は全て同局へ行うことになった。
同局はオンライン申請システムと電原簿を有し、同地で有効な商標権についてリアルタイムで情報を確認できる。
[出典:BOIP.INT]
ウルグアイ:立体商標に関する規則の変更
ウルグアイでは2015年08月14日付商標局規則第09/15号により、装飾要素、色彩又は文字と組み合わせた立体商標は今後結合商標と看做され、立体商標はそれ自体が識別性のある立体のみからなる商標を指すと決定された。
[出典:Cervieri Monsuarez & Asociados]