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商標・著作権・特許・意匠・ドメインネームなど、知的財産権全般にわたる世界中の出来事を集約。
注目すべき主なニュースをわかりやすい記事にまとめ、リリースいたします。

2014.09.24IPEU:「パロディ」の定義明確に 他


EU:「パロディ」の定義明確に

多くの国の著作権法において、「パロディ」は明確な定義を有さず、広く「他の著作物を想起させ、想起させることが、何らかの意味をもっている作品」と捉えられることが多い。このたびEU司法裁判所は2014年09月03日付判決において「パロディ」に関して明確な定義を行った。

これはベルギーにおけるDeckmyn事件(C-201/13号)についての判決である。Deckmyn氏は右翼系の政治団体主催のイベントであるカレンダーを参加者に配布した。カレンダーはVandersteen氏のコミック“Suske en Wiske”のカバーから採られたイメージを含んでおり、実在の市長がコミックのキャラクターとして登場し、移民に金貨をばらまいているものだった。原作品の権利者及びその遺族は、配布に関する仮差止命令をベルギーの裁判所に申請し、これに対しDeckmyn氏がブリュッセル控訴院に上訴し、パロディに関する著作権の権利制限条項に該当すると主張していた。このため、ブリュッセル控訴院は本件をEU司法裁判所に移送し、見解を求めた。
同控訴院はパロディは、それ自体のオリジナルキャラクターを提示しなければならないか、そのため当然オリジナルの原作者のものではないと解せられるものでなければならないか、パロディの出典について言及していなければならないかについても問い合わせていたが、EU司法裁判所はまず、パロディの概念について、EU法の自律的概念(autonomous concept)であり、EU全域に渡って統一的に解釈されなければならないとした。更に、同裁判所はパロディについて以下のように定義されると言及している。

  1. 既存の作品とは明確に異なるが、当該作品を想起させるものであり、
  2. ユーモア又は揶揄(mockery)の表現を構成しているものでなければならない。

一方、情報社会指令(InfoSoc Directive)は著作権の権利制限について正当な権利者の利益と表現の自由の公正なバランスを保たなければならないとしており、EU司法裁判所は本件が権利制限規定に該当するかを検討した。その結果、同裁判所はパロディに差別的メッセージが含まれている場合、オリジナル作品の正当な権利者は「原則として作品がこのようなメッセージと関連しないと確認する正当な利益を有する」と判断した。


[出典:Herbert Smith Freehills LLP]


アルゼンチン:INPIに新しい登録簿の設置

アルゼンチン知的財産庁(INPI)は2014年06月19日付で規則第117/2014号を公布し、商標の譲渡と使用許諾を管理する新しい登録簿の設置を決定した。
これは許諾に係る法的行為を登録することにより、当該行為に特定の日付を確定し、第三者に対する効果を強化し、証拠としての価値を強化することを目的とする。


[出典:Obligado & Cia]


インド:使用宣誓は補正不可

インドにおいては商標出願時に使用に関する宣誓が求められる。多くの出願人は審査の過程で先行類似商標が引用されると、初めて正確な使用開始日を確認し、訂正を求めることが多いが、2014年7月の命令において、インド商標総局長官は出願時に申請した使用開始日の補正は認めないとの決定を下した。長官は当該命令において、もし本当に使用開始日が間違っていた場合、新規に商標出願を申請するよう勧めている。
従って、インドで商標出願をする場合は、予め正確な使用開始日を確認しておくことをお勧めする。


[出典:RK Dewan & Co.]


ヨルダン:高等裁判所に代わる行政裁判所の設置

ヨルダンでは行政裁判所法27/2014号が承認され、2014年08月17日付で公報に掲載され、その60日後、即ち2014年10月17日に発効される。同法は行政紛争について、二審制を設定するものである。
新法によれば、特許庁等の政府機関が発行する全ての行政決定についてアピールを請求する場合、今後は当該決定の発行日から60日以内に“行政裁判所”に提起することになる。
従来、高等裁判所の判決は最終審であり上訴できなかったが、行政裁判所が出した決定は、発行日から30日以内に“高等行政裁判所”へ上訴できる。新法第39条に基づき、現在高等裁判所で審理中の行政事件は、2014年10月17日時点で未解決の場合、行政裁判所へ移送される予定である。


[出典:Saba & Co.]


ナイジェリア:著作権のオンライン申請制度開始

ナイジェリアでは2014年07月25日から著作権のオンライン申請制度(NeCRS)が開始された。これはアフリカ初のシステムで、文書のデジタル化、オンライン決済の他、登録著作物の検索等が可能になる予定である。


[出典:Inventa]


アゼルバイジャン、エクアドル:オフィシャルフィー変更

アゼルバイジャンでは、2014年08月04日より、カラー商標の出願と審査に関するオフィシャルフィーがモノクロ商標のものと同一となった。従来、同国においてはカラー商標に関するオフィシャルフィーはモノクロ商標に比べ高かった。
これ以外のオフィシャルフィーの変更はない。

また、エクアドルにおいても、知的財産庁は規則003-2014 CD-IEPIを公布し、商標及び著作権に関する全てのオフィシャルフィーを2014年09月04日付で上昇した。


[出典:Mikhailyuk, Sorokolat & Partners]


シント・マールテン(旧アンティル):商標出願について

2010年10月5日号12月14日号2011年8月23日号でお伝えしたが、アンティル解体後、1年間はキュラソー特許庁がシント・マールテン特許庁を代行していたが、2015年01月01日より、同地への商標出願は全てベネルクス特許庁に行うことになる。ベネルクス特許庁はBES諸島の商標出願も管轄しており、全ての手続はオンラインで行われる。


[出典:Markenizer B.V.]


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