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2021.10.12IP中国:商標権侵害事件における「合法的出所の抗弁」の認定


中国:商標権侵害事件における「合法的出所の抗弁」の認定

商標権侵害事件において、被侵害者は損害賠償責任を回避するため通常「合法的出所の抗弁」を主張する。
この抗弁制度は権利侵害品を善意で販売した販売業者の賠償責任を免除し権利者の合法的な権利を保護するものである。

1.「合法的出所の抗弁」の立法状況

中国商標法第64条2項には「登録商標専用権の侵害商品であることを知らずに販売したときは、当該商品を合法的に取得したことを証明でき、かつ提供者について説明できる場合に限り、損害賠償の責任を負わない。」と定められており、この条文が「合法的出所の抗弁」を主張できる主な法的根拠となっている。

「最高人民法院による知的財産権に係る民事訴訟の証拠に関する若干の規定」(司法解釈(2020)12月号)の第4条では、立証責任がさらに明確にされている。

被疑権利侵害者が、専利法第七十条、商標法第六十四条第 2 項または著作権法第五十三条の規定に基づいて合法的な供給源を主張して抗弁する場合には、以下の事実を証明する証拠を提出しなければならない。

(一)被疑権利侵害商品、製品が知的財産権を侵害していることを知らなかったこと。
(二)被疑権利侵害商品、製品に合法的な供給源があること。

被疑権利侵害者が提供した被疑権利侵害商品、及び製品の供給源に係る証拠がその合理的な注意義務の程度に相当するものである場合、前項第一号、第二号の挙証が同時に完了されたと認定することができる。
被疑権利侵害者の経営規模、専門性程度や市場取引習慣等は、その合理的な注意義務を確定する証拠として使用することが可能である。

2.適用主体

中国商標法第64条2項の規定によれば「合法的出所の抗弁」の適用全体が商標の販売業者に限られていることは明らかであるが、それを拡大解釈してサービスの提供者まで含むか否かについては否定的である。
同条の文言を考慮すると、善意で販売した販売業者を保護するために販売者の注意義務に対する要求程度は商標の直接の使用者より低くすべきであるが、一方サービスの提供者はサービスを提供する過程において製品を販売する可能性があり、サービスの出所を示すためには通常商標を直接的に使用する必要があることからその注意次義務は販売業者より高くなっている。

3.適用要件

上記の法的規定によれば、合法的出所の抗弁を主張する場合、権利侵害品の販売業者は善意で販売しているという「主観的要件」と、権利侵害品の出所が合法的なものであるという「客観的要件」を同時に満たさなければならない。

1)主観的要件
自分自身が「知らなかった」と直接判断することは困難である。実務について裁判所は通常係争商標の知名度、販売価格、販売業者の判断能力、合理的かつ必要な審査注意義務を十分果たしたかどうかなどという客観的な要素を総合的に判断した上で、知らなかったかどうかを判断する。ある判例では、係争商標が高い知名度を有し販売業者が関連業界の経営者として当該ブランドを知っている又は知っているべきであるため、係争商標を使用する行為に主観的な過失がある、認定された。

ほかに、販売業者への警告状の送付や苦情申し立ての履歴、業者が同一又は類似の侵害行為を実施していたことで処分されたことがあること、商品販売時の宣伝情報における権利者の商標または商標への言及、または権利者商品と侵害品との比較をしたことがあるかなど、権利者は事件の具体的な状況に基づき業者が「知っているまたは知っているべきである」ことを立証することが考えられる。

2)客観的要件
この要件については、販売業者は仕入れ契約書、領収書、納品書、入庫伝票などを提出することで、実務的に容易に立証できる。
ある判例では、被疑侵害品の仕入れ書および部品の提供者を披露し、裁判所はこれらの証拠を、被疑侵害品の出所が合法的なものであると認定した。

4.結び

「合法的出所の抗弁」は市場取引を安定・浸透させ、権利者と社会講習の利益のバランスを図るための制度である。
法律や司法解釈に明確に規定されていても、司法実務において様々な状況があるため、原告と被告は立証と証拠調査の際に各種の要素を十分に考慮した上で自分自身の合法的な権益を保護することが必要であると考える。


[出典:LINDA LIU & PARTNERS]


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