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2022.12.27IPベトナム:著作権保護を強化・近代化した改正知的財産法


ベトナム:著作権保護を強化・近代化した改正知的財産法

2023年1月1日、ベトナムにおいて改正された知的財産法が施行され、知的財産制度が国際基準に沿ったものになると、著作権の分野に顕著な影響が現れる。
改正知的財産法の重要な変更点を以下にまとめる。

[1] 複製(改正知的財産法第4条10、第20条1.c、第29条3.b、第30条1.a、第31条1.b)
複製(reproduction)とは、態様又は形態の如何を問わず、一定の著作物または録音・録画の一部または全部の複製物を作成すること(再製)をいう。
したがって、著作物の一部のみを再製することも複製行為とみなされ、制裁を受ける可能性がある。

[2] 頒布権(同法第20条1.d、第29条3.d、第30条1.b、第31条1.d)
頒布権(distribution rights)は有体物に限定されることが明記されている。
したがって、著作物、録音・録画、放送番組の固定をデジタル形式で利用可能にする行為(例えばインターネットを通じて)は、頒布行為とはみなされない。

[3] 著作権侵害の例外(同法第25条、第25a条)
改正知的財産法は、著作権侵害の例外の範囲を拡大している。
中でも、障害者に対する例外が追加された(第25a条)。
複製、実演、(当事者が原著作物または複製物に合法的にアクセスできる場合)利用可能な形式での著作物の伝達が認められる(第25a条第1項)。

また、政府が認定した非営利団体が関連分野で活動する場合は、例外(頒布権を含む)が追加されている(第25a条第2項)。
さらに、「芸術の著作物」や「収集・編集著作物」 が例外として認められていないことも注目している。

[4] 侵害に対する権利行使(28条および35条)
著作権および隣接権の侵害行為を特定するアプローチが大きく変わる。
具体的には、改正知的財産法では、可能性のある侵害行為をすべて列挙する代わりに、著作権または隣接権の制限・例外規定に該当しない人格権や財産権を侵害する行為が、著作権または隣接権の侵害となると述べている。
これは、現行の知的財産法のように、限定的なリストに含まれていないというだけで侵害行為が見逃されることが少なくなることを意味する。

加えて、知的財産法は、著作権および隣接権の権利者がこれらを保護するための技術手段や権利管理情報に関する回避行為を知的財産権に関する侵害行為として改正および導入している。

これら著作権および隣接権への侵害行為の追加は、これらの保護に使用される効果的な技術手段や権利管理情報の回避に対する法的保護および効果的な法的救済を提供する。

[5] 著作権使用料の決定と分配(44a条)
知的財産法には、著作権使用料を共同著作者と共同所有者の間で決定し分配する原則に関する条項が追加されている。
これは、著作物、実演、録音・録画、または放送番組への創作参加と資本貢献の相対的な割合を考慮し、(例えば、種類、形態、品質、数量または使用頻度に基づいて)使用形態に応じて、当事者間の相互合意を優先する。
合意できなければ、政府の規則が適用される。

[6] 自身による保護に対する権利(198条)
当該権利権は、権利者が以下のことができるように拡大されている。
1.知的財産権の侵害を防止し、技術の急激な変化に対応するため、権利管理情報の提示その他の技術手段の実施すること
2.電気通信ネットワークおよびインターネット上の侵害コンテンツの削除を侵害者に要求すること
本改正は、著作権者がデジタル環境において著作権を侵害しているコンテンツを、当局の命令なしに削除するよう積極的に要求できるようにする革新的なものである。
これは、権利者が著作権を侵害しているコンテンツの削除をサービスプロバイダー (ISP)に要求する根拠となる。

[7] 著作権および隣接権の推定(198a条)
著作権および隣接権の推定について、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)第18.72条を遵守するための規定が導入されている。したがって、反証がない限り、「著作者、実演家、録音・録画製作者、放送事業者、映画製作者、その名称を一般的な方法で表示された出版者」は著作者と推定される(198a条1)。

本規定は、(a) 権利者の立証責任、(b) エンフォースメント機関による著作物の所有者の検証、を容易化することで、著作権侵害訴訟を加速させるのに役立つ。改正知的財産法は、「名称の一般的な方法での表示」についてさらに明確にしている。

[8] サービスプロバイダー(ISP)の責任(198b条)
新たに導入されたISPの義務に関する第198b条は、現在の定義よりも広くISPを定義し、特定の種類のISPではなくその機能を列挙することによって、デジタル環境における著作権侵害に対処する効果的な方法をもたらす。
さらに重要な点として、改正知的財産法は著作権および隣接権を保護するためにISPが権利者と直接調整する責任を規定する条項を導入しており、これによりエンフォースメントがより容易になる。

また、セーフハーバー(safe harbor)条項を享受するための条件として、テイクダウンとサイトブロックの仕組みが必要としたISPに対するセーフハーバーが導入されている。
具体的には、ISPは次の場合にのみセーフハーバーを主張できる。
1.デジタル情報コンテンツが送信元で削除されたこと、または、送信元からデジタル情報コンテンツへのアクセスがキャンセルされたことを認識している場合、デジタル情報コンテンツを削除するか、そのようなコンテンツへのアクセスを拒否する場合
2.著作権や隣接権を侵害していることが判明した場合に、速やかに削除またはアクセス禁止措置を講じる場合

[9] 共同管理組織(56条)
共同管理団体については、著作権使用料の料率や支払方法を文化・スポーツ・観光省に提出して承認を受けるなどの義務が追加されている。


[出典:Tilleke & Gibbins]


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