2025.11.26IPEU:EUIPO AI搭載の商標出願スクリーニングツールを公開
EU:EUIPO AI搭載の商標出願スクリーニングツールを公開
欧州連合知的財産庁(EUIPO)は、出願を予定している商標に潜在的な問題がないかを事前に把握できるよう支援する、新たな独立型事前評価ツール「Early TM Screening(事前商標スクリーニング)」の提供を開始した。
この革新的なオンラインツールは、商標が拒絶される可能性のある問題を早期に検出することで、出願プロセスをより円滑、簡便、かつ誤りの少ないものとし、ユーザーが行う財務的投資の保護を支援するものである。
従来、多くの事前評価チェックはEUIPOのe-filingフォーム内で利用可能であったが、Early TM Screeningはこれらを1つの専用ツールに集約し、商標出願前に活用できるようにした。
この新しいアプローチにより、企業、起業家、法務専門家は、より自信を持って効率的にEU商標の出願準備を行うことができる。
よりスマートな商標出願前の準備が可能に
Early TM Screeningは、ユーザーがEUで商標を出願する前に、数ステップの操作で商標を評価できるように設計されている。
商標の詳細と商品・役務区分を入力することで、以下を含むさまざまな潜在的問題を即座に分析することができる。
・既存のEU商標、ドメイン名、会社名など、先行権との潜在的な抵触
・絶対的拒絶理由に基づく登録性の問題(識別力欠如、記述的表示、誤認のおそれ、公序良俗上の懸念など)
・植物品種、地理的表示(GI)、伝統的特産品保証(TSG)、伝統的ワイン用語(TTW)等、他の知的財産権との抵触
チェック後には、結果をまとめた詳細なPDFレポートをダウンロードでき、そのままEUTM filingまたはEUTM Easy Filingのページから電子出願に進むことができる。
なお、Early TM Screeningの結果はあくまで参考情報であり、網羅性を保証するものではない。また、検出された問題がない場合でも、出願後の登録を保証するものではない。
AIを活用したチェックによる精度向上
Early TM Screeningの一部機能は人工知能(AI)によって強化されており、事前評価プロセスの精度と速度を向上させている。
具体的には次のとおりである。
・EUIPOの主力ツールTMviewを活用した、先行商標との潜在的抵触関係の検出
・識別力欠如や記述的表示のチェック
・過去のEUIPO判断に基づく絶対的拒絶理由の特定
EUIPOは、事前評価ツールにAIを慎重に実装することで、信頼性と透明性を確保している。
実装前には専門家によるシミュレーションや、ユーザー団体と協力したパイロットテストを実施し、すべてのチェック項目について厳格な検証が行われている。
EUIPOがどのように人間中心のアプローチでAIを活用し、人間による判断を確保しながらサービス向上を図っているかについては、以下のページで確認できる。
https://www.euipo.europa.eu/en/about-us/the-office/what-we-do/ai-at-the-euipo
識別力欠如・記述的表示に関する新チェック
Early TM Screeningには、識別力欠如や記述的表示に関する最新の評価チェックが追加された。
このチェックは、商標が識別力欠如または記述的表示によりEUIPOから異論を唱えられる可能性を確認するもので、誰もが使用すべき語句に対して不当な独占権が与えられないようにすることを目的としている。
EU商標出願において拒絶を受ける大半が識別力欠如または記述性に基づくことから、きわめて重要な機能である。
このチェックはEUTM filingおよびEUTM Easy Filingにも追加され、現在ベータ版として提供されている。
これによりEUIPOは、継続的にパフォーマンスを監視し、ユーザーのニーズに応じた改善に役立つフィードバックを収集することができる。
ガイダンスと革新的ツールによるユーザー支援
出願検討段階のユーザーを支援するため、専用のランディングページ(https://www.euipo.europa.eu/en/help-centre/searches/early-tm-screening)が開設された。
このページでは、EU商標の一般的な絶対的拒絶理由を具体例や対応策とともに紹介し、各種チェックの説明やツールの活用方法に関するチュートリアルを提供している。
このツールの提供開始は、戦略計画SP2030(https://www.euipo.europa.eu/en/about-us/governance/strategic-plan)における重要なマイルストーンであり、EUIPOが審査官と同様のツールをユーザーにも提供し、潜在的問題をユーザー自身が早期に特定できるようにする取り組みを強化するものである。
これは、革新的な知財サービスを通じて顧客体験を向上させる「トータルエクスペリエンスモデル」の理念を支える取り組みでもある。
さらに、AI技術をEUIPOシステムに責任ある形で統合するモデルを示し、一貫性があり、法的確実性が高く、予測可能で高品質な知財権の提供に貢献するものである。
[出典:EUIPO]