バロンドロール賞を６回受賞し歴代単独最多の受賞歴を有するサッカー選手のリオネル・アンドレス・メッシ・クッシッティーニは、2011年8月に欧州連合知的財産庁(EUIPO)に図形商標の出願を行った（出願番号010181154）。
指定した商品には運動用・体操用の衣服、履物、器類などが含まれていた。
この出願に対してスペインの自転車会社である登録商標“MASSI”（登録番号003436607、000414086）(指定区分は第9、25、28類、指定商品は衣類、履物、サイクリング用ヘルメット、防護服および手袋を含む形で登録)の所有者が異議を申し立てた。
EUIPOおよび審判部は混同の可能性があるとして異議申立を認め、メッシが出願した商標を拒絶した。
これを受けメッシは一般裁判所に上訴し、2018年4月26日にEUIPOの先の決定を覆し、本件サッカー選手の名声・評判は両商標間における外観的、称呼的類似性を弱め、混同の可能性は生じないとする判断を得た。
その後欧州司法裁判所(ECJ)はEUIPOおよび補助参加人“MASSI”による上訴を再度棄却し、9年に渡る係争に幕を閉じた。
ECJは判決において、自己の名前を登録しようとする者の名声・評判は、先行商標のそれと同様に、商標間の類似性に勝ると判断した。
そしてECJは、MASSIはイタリア語で「石」という意味を持つ言葉である一方、MESSIはかかる観念的意味を有しない言葉であることから、関連する公衆は両商標を観念的に異なるものとして認識するとしている。