2020.12.08IP台湾:商品の類否判断に関する判例(Dr. Q蒟蒻ゼリー事件)
台湾:商品の類否判断に関する判例(Dr. Q蒟蒻ゼリー事件)
台湾特許庁(TIPO)が発行する「商品役務相互検索参考資料」にて同じ類似群が付けられた商品役務は、原則、審査において類似と認定される。
しかし、これはあくまで原則であり、実際の類否判断においては類似群に加え、実際の商品名称及び商標の態様並びに取引の状況などから総合的に判断される。
以下では商品の類否判断が争点となった最新の事例を紹介する。
事件の概要:X(被告)は指定商品を第29類の「ゼリー、仙草ゼリー、愛玉ゼリー、亀ゼリー、蒟蒻から作られたゼリー、食用ツバメの巣」等として商標「Dr.Q」(以下、「本件商標」という。)を出願し登録を受けた。
その後、Y(原告)は本件商標が自己の有する「Dr.Q」に関する登録商標2件(以下、「引用商標1、2」という。)と商標及び指定商品が類似するとし異議申立てを行ったが、維持決定が下された。
本件はこの維持決定に対する取消訴訟であるが、知的財産裁判所は以下のように述べ、本件商標と引用商標1、2の指定商品は類似しないと認定した。
・商品の性質、機能及び用途について:商品が類似するとは、2つの異なる商品が機能、材料、生産者又はその他の要素において共通又は関連する点を有することを指す。
商品の類否判断は、当該商品の各関連要素を総合し、一般社会通念及び市場の取引状況に基づいて行わなければならない。
しかし、社会や産業の細分化が進み、単に抽象的な概念だけで商品又は役務の類否を判断することができないため、各産業の性質及び個別具体的な事案に応じて判断をする必要がある。
・本件商標の指定商品「ゼリー、仙草ゼリー…等」は一般食材から作られた日用食料品であるが、これに対し引用商標1の指定商品「乳酸菌、カテキン…」は植物から抽出したアミノ酸、ビタミン等の栄養素で作られた商品で、引用商標2の指定商品「ヒト用薬品、栄養補助食品…」等は、医療において用いる薬品、薬剤、器材等に関する商品である。
つまり、本件商標の指定商品は一般消費者の日常生活における食の需要を満たすために提供されるものであるが、引用商標1、2の指定商品は特定消費者の身体機能向上又は医療などの特殊な需要に応じて提供されるものであり、両者の商品内容、消費者群及び販売目的はいずれも異なり重複するものでもない。
一般社会通念及び市場の取引状況によれば、両商標の指定商品は類似せず関連性を有する商品でもない。
・類似群について:原告は「本件商標の指定商品『食用ツバメの巣』には備考類似として第5類の0503も付されており、また引用商標1、2の指定商品『サプリメント』や『栄養補助食品』の類似群も0503であることから、これら指定商品は実質的に同一区分に属し、類似関係にある。」と主張するが、商品役務の区分は、あくまで特許庁の審査における便宜のためのもので、商品役務の類否はそれらの性質、機能、材料、生産者、流通経路及び販売場所等の要素を総合考慮し、一般社会通念及び市場の取引状況に基づいて判断しなければならないのであって、商品役務の区分の制限を受けるものではない(商標法第19条第6項)。
・商品の原料及び販売場所について:原告は「本件商標が付された商品『Dr.Q蒟蒻』と引用商標が付された商品『Dr.Q蜂王彈力Q波凍』を比較すると、主原料はいずれもゼラチン(液体を凝固させる添加物)、水及び果汁であること、小型容器に入れられたゼリー製品であること、販売経路はMOMOやYahoo等であることを共通とする。よって両製品は類似商品である。」と主張するが、食品に液体を凝固させる物質を添加し固体とすることは一般的なことである。
また引用商標が付された商品の価格は1個当たり48元と低価ではなく、主にケア機能といった保健用品の性質を有するもので、これは日用品といえる本件商標が付された商品とは性質が異なる。
次に販売場所について、MOMOやYahooは多様な商品を販売する総合販売サイトであることから、単にいずれもこれらサイトで販売されていることをもって、両者の販売場所・経路は同一類似すると認定できない。
消費者がこれらサイトで製品を閲覧した際に実際に両商品に触れたといった事情(例えば両商品が同一分類上に存在する等)を検討する必要がある。
原告は本件商標と引用商標の指定商品はいずれも健康食品であることや、販売場所・販売経路が同一であるという方向から商品類似の主張を試みたが、知的財産裁判所はその主張を退けている。
これは本件商標がゼリー関連商品において台湾以外の多数の国(シンガポール、香港、米国、中国、カナダ)で登録されていること、本件商標の権利者は台湾において本件商標が付された商品の宣伝広告費用に多額を投じていたこと等が総合考慮された結果と思われる。
なお判旨で同一のECサイトで販売されていることは、販売場所・経路が同一ではないと示されているように、ウェブ上における指定商品の販売場所・経路の関連性を主張する場合には両者が同一分類や同一ページに掲載されている事実を示すことが好ましい。
[出典:Wisdom International Patent & Law Office]