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2021.08.24IP中国・EU:地理的表示(GI)保護協定が発効


中国・EU:地理的表示(GI)保護協定が発効

2021年3月1日、中国と欧州連合(EU)の間で、中国および欧州の200品目の地理的表示を保護する新しい協定が発効しました。

『China Food News』紙によると、中国は農産物および食料品で世界有数の市場規模を誇り、毎年成長を続けています。
中国の中産階級の購買力が増加したことで、外国の飲食料品、新製品、および海外旅行に対する関心が高まっています。
中国の消費者の外国製品に対する興味の増加に加え、中国自体にも豊かな地理的表示の伝統があり、その多くは欧州の消費者にはほとんど知られていません。
この協定により、こうした中国の製品がより広く入手できるようになるでしょう。

海外での保護対象となる中国の地理的表示の例としては、お茶のプーアル茶(普洱茶)、蒸留酒のマオタイ酒(茅台酒)、お米の盤錦大米(盘锦大米)などがあり、欧州から中国については、チーズのモッツァレッラ・ディ・ブーファラ、蒸留酒のコニャック、ビールのチェコ・ブドヴァル(Českobudějovické pivo)などがあります。

中国とEU間の10年にわたる交渉の末、2012年に中間目標点として10品目の地理的表示の相互承認に至りました。
そして2020年9月14日に、より広範囲な品目を対象とする現在の協定に両者が署名しました。
最初の実施段階では、各契約当事者の100品目の原産地の地理的表示が保護され、2025年までに、さらに175品目の地理的表示が保護リストに追加される予定です。
これらの品目には、飲食料品業の製品だけでなく、スアン紙(宣纸)やシュウブロケード(蜀锦)など、他の中国製品も含まれます。

2020年に中国は、EUにとって農産物、食料品、飲料の輸出先では3番目、金額にして160億ユーロ(約190億米ドル)超の巨大市場となったという事実からも、この合意の重要性は際立ちます。
また、中国は、EUの地理的表示保護の対象となる農産物および食料品、ワイン、蒸留酒の輸出相手国としては、2番目に重要な市場でもあります。

地理的表示とは、生産者がその製品に対して使用できる、保護対象となる製品の説明および名前であり、各製品の地理的な原産地を示します。
保護の要件としては、少なくとも、製品の品質および特徴が、地理的な原産地、または原産地の自然要因または人的要因に十分に帰せられることが必要になります。
そのため、原産地の指定には、その製品と原産地の特別な近接性が要求されます。
また、一般的に、地理的表示製品は特定の地域で栽培または育成されたものが含まれ、原材料のすべてまたは一部が特定のエリアに由来するか、または独特の工程に従って特定の地域で生産される必要があります。

たとえ正しい原産地が表示されていても、翻訳または音訳された形態で使用されていたり、「種類」「型」または「風」などの追加語句によって別の名前が付けられていた場合にも、地理的表示は、名前の悪用または模倣に対して保護されます。

新しい中国-EU協定は、その技術仕様および各国の管轄区域におけるその他すべての地理的表示の要件を満たす製品に対して、地理的表示を使用する権利を与えます(相互承認された200品目の地理的表示リストより)。
これには、官庁が発行した正式な品質シールも含まれます。
例えば、は中国で保護されている地理的表示のための中国のシールであり、中国国家知識産権局が管理しています。
および は、欧州で保護されている地理的表示のための欧州のシールであり、欧州の消費者に広く認識されています。

一方、この協定では、消費者に誤解を与えるような地理的表示の使用は禁止されています。
例えば、特定の地理的表示に関する規定に従っていない製品であれば、「~イミテーション(模倣)」や「~風」などのラベルの使用であっても許可されません。
これは、地理的表示の翻訳および音訳についても当てはまります。

中国-EU協定ではさらに、中国とEUが、地理的表示の対象となる物品およびサービスに関連して、地理的表示または地理的表示の翻訳または音訳を含む商標を拒絶または無効とするための手続きを確立することも義務付けられています。
ただし、2021年3月1日より前に悪意なく取得された商標については、現地の商標登録簿からの取消対象にはなりません。

中国およびEUの各国官庁は、自発的に、または地理的表示権利に対して関心を示した者の要求に応じて、地理的表示の保護を実施することになります。
こうした実施措置には、地理的表示に関する規定に違反する製品の輸出入を停止できる税関当局が携わることが想定されます。
EUおよび中国は、この協定の実施を見守りかつ両国の連携を確実にするため、実施官庁同士の情報交換、能力育成、情報促進、および企業と消費者への地理的表示に関する情報の普及啓発などを行う合同委員会を設立する予定です。


[出典:Spruson & Ferguson]


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