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2022.01.12IP韓国:著作権侵害掲示物に対するリンク行為に対し著作権侵害幇助犯を認めた大法院全員合議体判決


韓国:著作権侵害掲示物に対するリンク行為に対し著作権侵害幇助犯を認めた大法院全員合議体判決

最近大法院は、著作権者の利用許諾なく不法流通した映画やドラマなどの映像著作物をアップロードして掲示する海外動画共有サイトにアクセスできるリンクを本人が開設・運営する再視聴リンクサイトなどのインターネットサイトに数ヶ月間にわたり450回も掲示した行為が問題になった事件で、該当行為が著作権法違反の幇助罪に該当するという主旨の全員合議体判決を言い渡した(大法院2021.9.9.言渡し2017ド19025判決)。

本件の原審は、既存の大法院判決(大法院2015.3.12.言渡し2012ド13748)でのように著作財産権侵害掲示物に対するリンクを掲示する行為だけでは公衆送信権などの著作財産権侵害行為の実行自体を容易にするとは言えないため、その幇助行為には該当しないという理由で無罪を言渡したが、大法院は全員合議体判決を通して、本件のようなリンクを掲示する行為も公衆送信権侵害の幇助に該当し得ると判示し、既存の判決を変更して原審を破棄し、差戻した。

大法院の判断
大法院は、リンク掲示者が侵害掲示物を掲示した正犯が公衆送信権を侵害するという事実を十分に認識し、そのような侵害掲示物などにアクセスできるリンクをインターネットサイトに営利的・継続的に掲示するなどして公衆が個別的に選択した時間と場所で侵害掲示物に簡単にアクセスできるようにする程度のリンク掲示行為をした場合には、侵害掲示物を公衆の利用に提供する正犯の犯罪を容易にさせてしまうので公衆送信権侵害の幇助犯が成立すると判断した。

これは上記の再視聴リンクサイトで提供するリンクがなかった場合、正犯が掲示した著作財産権侵害掲示物を発見できなかった公衆まで該当リンクを通じて希望する時間と場所で簡単に侵害掲示物にアクセスすることができるようになるので、リンク掲示行為によって公衆がアクセスできるように侵害掲示物を利用に提供する正犯の実行行為が容易になり公衆送信権という法益の侵害が強化・増大するところ、リンク掲示行為と正犯の犯罪実現間の因果関係を認められるという点を根拠とした。

ただし、インターネットなどを利用する過程で日常的に成立するリンク行為に対してまで公衆送信権侵害の幇助を簡単に認めることはインターネット空間での表現の自由や一般的行動の自由を過度に萎縮させるおそれがあり望ましくないため、①検事はリンク掲示者がリンク対象掲示物の不法性を明確に認識できる程度に至ったという点を厳格に証明しなければならず、②リンク掲示行為が正犯の公衆送信権侵害と密接な関連がありその法益侵害を強化・増大するなどの現実的な寄与をしたと見にくい場合には公衆送信権侵害幇助行為だと断定してはならないと判示した。

判決の意味
著作財産権侵害掲示物に対するリンクを営利的・継続的にインターネットサイトに掲示した行為が著作権法違反行為の幇助罪に該当すると見た大法院の本判決は、侵害掲示物がアップロードされたサイトに対するリンクを継続的に提供してバナー広告を通じて収益を得る方式の再視聴リンクサイトおよびモバイルアプリケーションなどのサービスに対しても幇助責任を問うことができるようにすることにより、国境を超えて行われているインターネット上の著作権侵害行為に対しても著作財産権者を保護するための現実的な対応が可能になったという点で意義がある。

さらに、幇助犯成立のための故意と因果関係要件などに対する厳格な適用が必要だという点を宣言し、リンク掲示行為に対する幇助犯成立の限界を明確に設定することによって、著作財産権者の保護を強化しながらもインターネット空間での表現の自由の萎縮防止を共に図ったという点でも意味がある。


[出典:KIM & CHANG INTELLECTUAL PROPERTY]


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